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最新版「パニック障害解説」 後編

最新版「パニック障害解説」

貝谷久宣  医療法人和楽会 赤坂クリニック

パニック障害発症のきっかけ

パニック発作が初めて生じる時の状況は色々です。非常に多いのは深酒をして二日酔いの時です。また、風邪を引いたり、徹夜で仕事をした後であったり、体調の悪い時に起こりやすいです。発症の季節は暑くなり始める6月と7月に多いという統計結果が出ています。温度と湿度が高いことがパニック発作発症に関係するようです。パニック発作は種々な物質によっても誘発されます。タバコは最もよくないです。ニコチンは吸った瞬間は抗不安的に作用しますが、すぐその反動が来ます。コーヒーも人によっては発作の誘発原因となります。人口の3-4割の人はカフェインに過敏性を持っており、このような人は過剰なカフェイン摂取でパニック発作を起こします。気管支拡張作用のある喘息の薬も発作を起こしやすい作用を持っています。炭酸ガスの吸入もパニック発作発症の引き金となります。昔は炭火にあたっていて発作を起こした人をよく見かけました。乳酸飲料は全く問題ありません。

精神的なストレスもパニック発作の誘因となります。これは決して原因ではありませんから、ストレスが去ったからと言ってパニック障害が治ってしまうというわけではありません。精神的ストレスの最も多いのは人間関係です。人に気を使いすぎたり、非難されたりはだれでも精神的に大きなストレスですが、パニック障害患者は元来過敏な人が多いのでさほど厳しい状況でなくとも精神的にはこたえてしまう人が多いようです。若い女性では友人同僚との関係、結婚した人では嫁姑関係、若い男性では上司との関係が影響することが多いようです。また、結婚生活を続けている女性で夫の言葉の暴力または無言の精神的圧迫が発症の原因となっていることもしばしば見受けます。男性も女性もビジネスに携わっている人は仕事の締め切りに追われる状況もパニック発作を発症しやすいです。また、別離も大きな誘因となります。学生では郷里から離れて単身生活をして半年か1年したところが最も危険な時期です。家族の死に遭遇することも有力な誘因です。この場合、たとえば、家族が心臓病で亡くなっていると、パニック発作も心臓の症状が優位にみられることがあります。

パニック障害の土壌

<パニック障害になりやすい性格>

神経質な人、言葉を変えていえば不安体質な人が多いです。もっと具体的に言えば怖がりとこだわりの強い人です。たとえば、初めての幼稚園の時にお母さんから離れるときに大泣きをすることは良くありますが、これが1週間以上続いた人はパニック障害になる素質が強いと考えられます。パニック障害を発症した人の98%までがすでに何らかの不安の病を持っています(図4)。ここで示されるパニック障害以外の不安障害について以下に簡単に説明します。

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図4 不安障害の好発年齢と広場恐怖を伴うパニック障害における他の不安障害の合併

分離不安:主に養育され慣れ親しんできた親から離れた時に激しい不安症状を呈する

特定の恐怖症:高所、暗所、ヘビ、嘔吐物、乗り物などを理由なく激しく恐れる。生来的な対象と獲得的な対象とがある。

社交不安障害:他人からの自分の能力や容貌を批判されることを極度に恐れ、社交的な場面を恐れ避ける。いわゆる対人恐怖症。

全般性不安障害:現実味のないことを深く悩み頭から離れない。それに伴い、不眠、頭痛などの身体疾患を伴う慢性病。

<育ちはどのように関係するか>

15歳以前に親と死別または離別した人には明らかにパニック障害が多く発症しています。また、幼少時に虐待を受けた人もパニック障害を発症することが多いことが明らかにされています。筆者は以前パニック障害と養育歴の関係を調査しました。その結果、パニック障害患者全体の9%に虐待があったことが分かりました。また、両親からの拒絶が強く、母との温かい感情的交流が少なかったひとが広場恐怖を伴うパニック障害に多くみられました。一方、広場恐怖を伴わないパニック障害は両親、特に父親の過保護と関係していました。

<生まれはどのように関係するか>

著者らの調査によれば、パニック障害患者の両親、兄弟および子ども(これを遺伝学的一親等と呼びます)におけるパニック障害、うつ病、および、アルコール中毒のいずれかが10人に1人の割合でみつかりました。パニック障害だけに限ると20人に1人の割合でありました。双生児の研究で一方がパニック障害の時、他方のパニック障害発症率はすべての遺伝子が同じ一卵性では34%、遺伝子の半分が同じである二卵性では8%でした。このように遺伝子が全く同じ双生児でもパニック障害が発症する一致率は半分にも満たないのです。すなわち、パニック障害は家族性の発症をしますが、パニック障害を発症させるただ一つの遺伝子はありません。パニック障害はいくつかの遺伝子の組み合わせでパニック障害が起こりやすい状態があり、それに環境的要因が加わり発症するものと考えられています。最近の研究では、遺伝的要因と環境的要因の比率は大まかに3:7であると言われています。

パニック障害への対処

<パニック障害にならないために>

温かい家庭 - 両親の仲の良い家、一家団欒の食事のある家、家族の誕生日、母の日、父の日、結婚記念日などお互いに祝い喜び合える家庭
相手を傷つけることなく自分の希望や主張を述べられる人になる
自尊心をもち、そして他人も大切にできる心を養う
目標達成だけを目指すのではなく、それに進む過程を大切に思える人
一日に一度静かに自分の心を見返す時間を持つ

<パニック障害になってしまったら>

本人は以下のことを確認する

(1) パニック障害という内科的に異常がなく、神経が身体に誤警報を発する病がある。
(2) この病気で死ぬことはない。
(3) パニック発作は薬で十分にコントロールできる。

家族や周囲の人は以下を確認する:

(1) わざとやっている病気ではない。
(2) 大変つらい病気で、甘えているのではない。
(3) 患者さんを非難したり責めたりしない

本人及び家族が確認すること

(1) この病気になったのはだれの責任でもない。運が悪かっただけである。
(2) あせらない。適切な対応をすれば時とともに必ず良くなる。
(3) 良い治療者をみつけて、長い付き合いをする

<専門的治療>

薬物療法
使用される主な薬物は不安を直接和らげる抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)と不安体質をゆっくり直していく選択的セロトニン再吸収阻害薬(SSRI)があります。また、予期不安やうつ状態に対しては非定型抗精神病薬が少量追加されることもあります。パニック障害の患者さんは過敏な人が多いので少量から薬は投与されます。そして、病的症状が完全になくなるまで薬は増量されます。少し良くなったからと言って薬を止めてはいけません。症状が全くない状態が半年以上続いたらやっと薬の量をわずかに減らして様子を見ます。このような繰り返しで少しずつ薬から離脱していくのです。急ぎすぎて薬を中止するとまたまもなく再発します。完全に良くなってからも薬を服用するのは再発予防の維持療法です。中等度以上のパニック障害では最低数年間は服薬を続けるのがよいです。薬物療法の要点は医師と協働して自分の病気を治していくという姿勢が大切です。自分で勝手に薬を取捨選択したり中止したりしないで、なんでも医師に相談して治療を進めることです。

心理療法
パニック障害の心理療法としては認知行動療法が最も一般的です。まずはじめに、患者教育を受け、病気の理解と対処法を十分に身につけます。認知行動療法は患者さんが病気を治したいという強い前向きな心がないと効果が出てきません。薬物療法が他力本願の治療だとすると、認知行動療法は自力本願の治療です。また、治療者との相性も大切です。最近マインドフルネスによる心身の安定活性化を得る方法が日本でも始められるようになりました。これはヨーガと瞑想を主にした過去未来に心を奪われず「今に生きる」心を育む養生法です。

 

治療経過

パニック障害は心身相関の病ですから薬物療法も心理療法も、両方ともに取り入れた方がよいでしょう。図5にパニック障害の治療経過を示します。パニック障害の模範的治療病期を大きく3つに分けています。治療開始3ヶ月でパニック発作をはじめとする病的な症状が大幅に消失し、患者は日常生活で大きな不安を感じなくなります。1年目には、広場恐怖もほとんど消失し、病的状態はなく、寛解状態に達します。3年すると、感情過敏は軽減し、ほぼ通常の状態になるのが理想です。

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図5 パニック障害の治療経過

おわりに

パニック障害は不安障害の中でも比較的後年に発症し、全体的には重症であり、見た目よりも根が深い病気です。長年著者がパニック障害を見てきて感じたことを箇条書きします。

① 家族性発症が多くみられます

② 多くの患者には発症の誘因となるストレスが認められます

③ そのストレスが去ってもひとたび発症すると病気は残存し、一定の経過をたどります

④ 他の精神障害・人格障害の合併の有無、恐怖・強迫性の程度が重篤度と慢性化に関係します

⑤ 軽快はしているがなお残遺症状を持つ患者が多いです

⑥ うつ病を併発しやすく、併発すると性格変化が生じ、疲労しやすくなり、社会的障害を助長しやすいです。

⑦ 慢性の病で、再燃、再発が多く、長期治療が望ましいです。

⑧ 発症早期から適切な対応をすれば必ず良くなる病気です。以上のことを理解して病気に対応することが重要です。

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