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テレビに出る(ケセラセラvol.79)

医療法人 和楽会 なごやメンタルクリニック院長 原井 宏明

伯父がテレビに出て喜ぶ姪っ子
2014年はテレビでの露出が多い年でした。4月に「ニュース・エブリィー」で、6月に「ニュース・ゼロ」、そして、9月に情報バラエティー番組の「あのニュースで得する人損する
人」に出演しました。すべて、強迫性障害の患者さんに対する行動療法についてです。
普通の人にはテレビを見る習慣があるでしょう。子どものころには「自分もいつかはテレビに出たい」と思ったことがある方も多いはずです。そして、知り合いがテレビに映っていたら、録画したり、人に知らせたりしたくなるはずです。私の姪っ子、小学5年生がそうです。お盆に里帰りしたとき、近くのプールに連れて行きました。人なつっこい子で、プー
ルで初めて会った同じ年頃の小学生とその親に自分から声をかけ、一緒にビーチボール遊びを始めました。しばらくしてから、姪っ子曰く「ねぇねぇ、このおじさん(私の事)は、ママのお兄さんなんだけど、テレビに出たんだよ、お医者さんなんだ、凄いでしょう!」
他所の小学生とその親も「へー」と感心して、私に注目してくれます。私も「まあ、たいしたことでも」と謙遜します。でも、本当は、こっちは気が気ではありません。プールで何かあったとき、「お医者さんおられますか?」とアナウンスがあったりしたら?私に医師免許はありますが、人工呼吸・心臓マッサージは10年以上やっていません。
一方で、自分のおじさんのことを自慢したいという姪っ子の気持ちもよく分かります。小学生にとっては「テレビに出る人イコール偉い人」でしょう。「おじさんは偉い人なんだよ、エヘン」と思うのは、姪っ子にとって自然なことだし、そんな気持ちは私にとっても嬉しいことです。


テレビに出るまで
「ニュース・エブリィー」のきっかけは、1月に日本テレビの報道部門のディレクターから送られてきたメールでした。強迫性障害についての報道を企画している、強迫性障害に悩む患者と家族の自助グループである「東京OCDの会」を取材したら、原井のことを教えられたということでした。患者さんと原井へのインタビューの他に、集団治療の治療の様子も取材したいとおっしゃいます。集団治療とは、強迫性障害に悩む患者さんたち、10人程度に集まっていただき、治療者と一緒に行動療法を行うプログラムのことです。なごやメンタルクリニックで月1回、3日間連続で行っています。この治療で良くなった方の話を聞き、取材したいということでした。
取材に応じてくれそうな患者さんに声をかけ、また集団治療に参加される予定の方にはテレビ取材のことを伝えるようにしました。2月の集団治療の患者さんのOKを得て、その中で個人的な取材に応じてくれる患者さんの候補も何人か見つかりました。
2月の集団治療の時にディレクターがこられて、治療場面を撮影、そのあとに、私がインタビューに応じました。このときの様子が4月と6月の放送になったわけです。
「あのニュースで得する人損する人」の場合は、8月はじめに「極東電視台」という会社から連絡がありました。会社名が怪しい。そして、エンタメ番組というのが私にとっても初めてでした。強迫性障害をエンタメにして良いのだろうか、と気になってしまいます。放送された番組を見たあと、こちらの印象を伝えると、先方の返事は「担当する会社によって番組の色がガラッと変わるのが当番組の特徴でもあります」。
8月お盆明けに東京で極東電視台の担当者にお会いし、取材に協力してくれる患者さんを紹介、8月末に担当者が名古屋まで来て、私のインタビュー場面を撮影という進み方でした。立て込んだスケジュールでしたが、報道の場合と違って、放送の日取りも決まっているからでした。そして、テロップなどに流れる文章を作るとき、こちらの意見を聞いてくれました。実際には、私が最初に思っていたより、強迫性障害とその治療をきちんと扱っていただいた啓発的な番組になりました。

 

良くある質問
ギャラは出るのか?
テレビに出れば出演料がでる?と思う方があるでしょう。今までの私の経験ではもらったことがありません。ニュースのような報道番組では、取材対象にお金を出すことはないよ
うです。
取材にはどんな人が来るのか?
全国ネットのテレビ放送といえば構えた立派なチームが来ると思われるかもしれません。実際に来る人を見れば落差に驚きます。ジーンズ姿のカメラマンとディレクターを兼任
した人が一人で来るだけです。その様子を見るだけでテレビの制作予算には余裕がなく、経費節約がなによりも優先していることがわかります。一度来られると時間無制限。8月にインタビューを受けたときには夕方から始まり、終わったのは日付が変わったときでした。テレビ局で働く人たちは24時間体制で働くのが普通で、時間を気にしていないようでした。
放送内容に取材対象の意見は反映されるのか
話すのは取材対象の私ですが、2、3時間ずっと話しつづけても、放送されるのはそのごく一部です。その一部を選ぶのはテレビ制作側です。取捨選択にはこちらの意見は通りません。私やディレクター、制作会社側が「これを伝えたい」と思っても、それがテレビ局の編成上層部がOKしなれば、電波には乗りません。上層部がどう考えて、どう取捨選択するのか私には分かりませんし、そしてディレクターも推測するしかないようでした。
私の考えとテレビを作る側の考え
私の側からすると、強迫性障害は不潔恐怖だけではありません。「自分が人を傷つけるのではないか」「悪口を言うのではないか」と考え、人の中に入ることを怖れる加害恐怖もあります。毛髪が薄くなった男性を通りで見かけただけで、「禿げと相手に言ってしまったのではないか」と考えて、自宅に引きこもってしまう方があります。「ふとそう思っただけなのに、自分が悪口を言ってしまったのではないか」と気になるのは、強迫性障害の症状なのですが、しばしば妄想のように受け取られて、統合失調症と診断されてしまう方があるのは、とても残念なことです。このような不潔恐怖以外の強迫性障害の方を取り上げ欲しいとお願いしたら、テレビを見る人は飽きるとすぐにチャンネルを変えてしまう。異様な手洗いをしている様子なら、テレビを見ている人がその場面に釘づけになってくれるが、じっと立ち止まって電気のスイッチを目で確認をしているような場面は、普通の人が見たら飽きる。従って、確認の患者さんを取り上げるのはNG
なるほど。「テレビに出れば、注目を浴びる」と取材される側は簡単に考えていますが、テレビの側は視聴者の注目を集めるための絵作りに必死なのでした。考え込んでじっと立ち止まっているだけの加害恐怖に、人の注目を集めるためにはまた別の工夫が必要だと思い知らされました。
テレビは役に立っているのか
日本テレビの方には申し訳ないのですが、今回の放送があるまで私は「ニュース・エブリー」「ニュース・ゼロ」「あのニュースで得する人損する人」のいずれも見たことがなく、そういう番組があること自体を知りませんでした。一方、診察に来られた患者さんからのお話を伺うと、1/3ぐらいの方はご覧になったようすでした。今、改めて録画を見なおすと、ごくごく一般の方に強迫性障害を分かってもらうためにはよくできています。その中で行動療法、集団治療を紹介できたことはありがたいことでした。
加害恐怖以外にも、身体醜形障害や収集癖、皮膚摘み取り症など強迫関連の病気でまだ知られていない病気もたくさんあります。もし、一般への啓発を願うならば、私のほうももっと工夫が必要でしょう。
最後になりましたが、テレビの取材に応じて下さった患者さんにはとても感謝しています。

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