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「パニック障害症例集」 貝谷久宣/不安・抑うつ臨床研究会【編】 日本の精神医学は感情障害、とりわけうつ病については数多くの業績を残してきました。しかし、不安障害の研究に従事する人はそれほど多くありません。不安障害は日本の精神医学ではオーファンであったといっても過言ではありません。それは不安障害が精神障害のなかでは軽症であるという認識をする人が多かったせいであったかもしれません。しかし、不安障害、とりわけパニック障害の患者は、その不安のために一般医療も救急医療の使用も高く、また、雇用されていない割合も高いことが報告されています(Leon, et a1,: Br J Psychiatry Suppl, 1995,27,19)。また、実際にパニック障害の個人的苦悩はうつ病に勝るとも劣らないと考えられます。DSM-Wの診断基準を見る限りでは、パニック障害はパニック発作があって予期不安が強く、多くの人では広場恐怖が発展するのだなくらいの無味乾燥な感覚しか得られませんが、パニック障害は慢性病であり、少しずつ人格変化もきたしますし、生活がどんどん侵されていきます。見た目よりずっとたいへんな障害をもった患者が多い病気です。本書は、診断基準からはうかがい知ることのできない、このような患者の赤裸な状態についての理解を深める役割を担っています。 平成11年以来、SSRI(フルボキサミン、パロキセチン)が発売され、本邦でも第四世代の抗うつ薬が使用可能になり、治療の選択肢が増えたことはまことに喜ばしいことです。筆者は、昨年発売された本邦初のSNRI(ミルナシプラン)も大うつ病だけでなくパニック障害に対しても効果があることを経験しました。パニック発作が去ってから波動的に出現する理由のない不安(内因性不安)や外出前の予期不安(二次性不安)に対して奏効するケースがあります。もちろん、パニック性不安うつ病にもミルナシプランは強力な武器となっています。今後、第四世代のそれぞれの抗うつ薬がパニック障害のどのような症例に適しているかを検討することも大切な仕事だと考えます。このような治療戦略に対して、このパニック障害症例検討集はその基礎的な資料として利用されることが望まれます。 この書は、平成12年7月22〜23日の2日間にわたり行われたパニック障害症例検討会の発表・質疑の記録から主に構成されています。参加者の多くは、パニック障害を専ら扱う東京と名古屋のクリニックで定期的に診療する研究者ですが、そのほかにもパニック障害に関心をもつ専門医が数名招かれました。この会は蓼科高原三井の森の山荘で参加者全員が泊まり込み、親睦をはかりながら行われました。ですから、報告された症例も内容豊富で貴重なものですが、質疑討論がより深く踏み込んだものであり、充実していたと自負できるものです。本書が読者のパニック障害についての理解を深め、数多くの悩める患者の苦痛を少しでも早く多くとることのできる治療に役立つならば、編著者にとって望外の幸せです。 最後に、この会に出席いただき、司会、報告、質疑の労をとっていただいた参加者全員に心より感謝の意を表します。また、日本で初めてSNRIを市場に出された旭化成株式会社にはこの会の運営にご助力をいただきました。記して謝意を表します。
パニック障害とEMDR 不安・抑うつ臨床研究会 不安症(不安障害)の患者さんは多いのですが、社会におけるこれらの障害への理解はなお不十分で、患者さんはどこに助力を求めたらよいか迷っているのが現状です。不安・抑うつ臨床研究会は、不安障害と感情障害についての臨床研究を行ない、治療を提供する人々と治療を受ける人々に最新の情報を提供し、この分野の医療水準を高めることを目的として、精神神経科、心療内科の専門医、および臨床心理士の有志によって設立されました(代表:貝谷久宣)。研究会の事務局は、心療内科・神経科赤坂クリニック(東京都港区赤板3−9−18 B.I.C.赤坂ビル6階 phone03-5575-8198:fax03-3584-3433)にあります。 |