書評 産経新聞 平成16年2月24日

『 日々是好日 』

 精神科医で、パニック障害の第一人者である著者のエッセー集だ。診療にまつわる思わずクスっと笑ってしまうエピソードや、長男が難病の筋ジストロフィーであることからかかわるようになった筋ジス協会での活動などが、つづられている。
 筋ジストロフィーに関する遺伝子治療研究が飛躍的に進んでいるが、著者は示唆に富んだ指摘を行っている。「病気を起こす遺伝子は悪玉とみなされるが、善玉である可能性もあるのではないのか」ということだ。脊髄(せきずい)性筋萎縮(いしゅく)症の患者は総じて知能が非常に高いという。著者は地球上の環境が変わったとき、筋ジスの原因になる遺伝子が有益な特徴を持っていることもあるから変異遺伝子は遺伝子バンクに保存しておく必要があるとし、遺伝病を起こす遺伝子すべてを悪玉として、遺伝子治療で抹殺することには疑問を呈する。
 「ノーマライゼーション」。筋ジスの大部分が遺伝子の変異により生ずるという。たまたま健康な人とたまたま患者である障害者の共存が大事と説く。

貝谷久宣著。日本評論社。1800円。