
睡眠障害
出版日:2004年10月15日
樋口輝彦/不安・抑うつ臨床研究会編
発行所:日本評論社
定価:1700円+税
はじめに
睡眠は人間をはじめ動物にとって必須の生理現象です。普段、正常の睡眠がとれているときには、私たちはほとんど睡眠を意識することはありません。お腹が空いたらご飯を食べるのと変わりがありません。ところが、明日何か重要な出来事があると、その前日眠れないという経験は誰もが持っていることです。睡眠はこのように普段は当たり前でありながら、ちょっとしたストレスで影響を受ける繊細な生理現象といえるものです。いかに快適な睡眠を確保するか、そのためにはどのような環境が必要であるか?これはQOLの観点からも重要な課題であり、そのための研究も進んでいます。本書では、この観点からは、眠る環境に焦点をあてた「眠りの生活科学」と「香と眠り」「睡眠の問題と私たちの生活」の三章を設けました。
睡眠の障害は大きく二つに分けられます。そのひとつは睡眠自体の障害であり、他のひとつは何らかの身体疾患があるために二次的に生じる睡眠障害です。前者に関しては、さらに大きくは@不眠症、A過眠症、B睡眠・覚醒リズム障害、C睡眠随伴症に分類されます。
@に関しては睡眠不足症候群と精神生理性不眠症をとりあげました。Aについては今日、社会的にも関心を集めている睡眠時無呼吸症候群を取り上げるとともに、頻度は少ないもののわが国で研究が最も進んでいるナルコレプシーの治療と研究の進歩および特発性過眠症をとりあげました。Bについては睡眠覚醒リズム障害全般についての総説に加えて、最近めざましい進歩を遂げている睡眠覚醒リズムを刻む体内時計遺伝子研究についてもとりあげました。また、睡眠覚醒リズム障害の代表である睡眠相後退症候群の治療について執筆してもらいました。Cについては、レム睡眠行動障害をとりあげています。
一方、身体疾患あるいは精神疾患に伴う二次的な睡眠障害の場合、睡眠障害が病初期に出現するので、早期診断、早期治療に役立つ指標となること、睡眠障害の治療が身体、精神障害自体の回復に重要な役割を果たすことになります。ここでは、「アルツハイマー病予防と睡眠」と「パニック障害と睡眠障害」をとりあげました。
終わりに、睡眠研究の第一人者に患者さんのことあるいはご自身の睡眠法など含蓄のあるエッセイをお寄せいただきました。この場を借りて深謝申し上げます。
睡眠の問題は単に個人レベルの問題にとどまりません。山陽新幹線運転士の居眠り運転、飛行機操縦士の居眠り操縦などは耳新しい事件ですが、これに類する睡眠が関係する事件は数多くあります。個人のQOLから社会的セーフティにいたるまで睡眠に関する問題は人間にとって基本的で重要なものばかりです。
本書によって読者の睡眠とその障害の理解が深まることを心から願っています。
樋口輝彦
目 次
睡眠の問題と私たちの生活
内山 真
アルツハイマー病予防と睡眠
朝田 隆
睡眠時無呼吸症候群
井上雄一・ハ重樫弘信
睡眠覚醒リズム障害
大川匡子
眠りの生活科学
三輪恵美子
香りと眠り
刈田貴久
高齢者の睡眠障害
三島和夫
遺伝子からみた睡眠障害
海老澤 尚
ナルコレプシー
粥川裕平・北島剛司
パニック障害と睡眠障害
貝谷久宣
睡眠障害の薬物療法
樋口輝彦
睡眠障害の治療法:さまざまな症例から
睡眠相後退症候群
田ケ谷浩邦
睡眠不足症候群
向井淳子・井上雄一
精神生理性不眠症
林田健一
レム睡眠行動障害
宮本智之
特発性過眠症
本多 真
essay
夢の不可思議
大熊輝雄
忘れえぬ患者さん
高橋清久
“寝る”は法楽
大森健一
私の睡眠法詰め碁を考える
竹内龍雄
編著者紹介
樋口輝彦(ひぐち・てるひこ)1945年生まれ。東京大学医学部卒。昭和大学藤が丘病院精神神経医学教授、国立精神・神経センター国府台病院院長などを経て、現在、国立精神・神経センター武蔵病院院長。編著書:『臨床精神薬理ハンドブック』(医学書院)、「うつ病の亜型分類』(日本評論社)など。
執筆者紹介(執筆順)
内山真(うちやま・まこと)東北大学医学部卒。東京医科歯科大学神経精神医学、東京都多摩老人医療センターを経て、現在、国立精神・神経センター精神保健研究所精神生理部長。
朝田隆(あさだ・たかし)東京医科歯科大学医学部卒。東京医科歯科大学神経科、山梨医科大学精神科講師、国立精神・神経センター武蔵病院部長を経て、現在、筑波大学臨床医学系精神医学教授。
井上雄一(いのうえ・ゆういち)東京医科大学卒。鳥取大学医学部精神科講師、順天堂大学医学部精神科講師を経て、現在、神経研究所附属睡眠学センター研究部部長。
八重樫弘信(やえがし・ひろのぶ)信州大学医学部卒。現在、松本協立病院睡眠センター長。
大川匡子(おおかわ・まさこ)群馬大学医学部卒。東京都立府中療育センター医長、秋田大学保健管理センター講師、国立精神・神経センター精神保健研究所部長などを経て、現在、滋賀医科大学精神医学教授。
三輪恵美子(みわ・えみこ)実践女子大学大学院修了。現在、西川産業株式会社・日本睡眠科学研究所主席研究員。実践女子大学講師。アメニティプランナー(生理人類士1級)。
刈田貴久(かりた・たかひさ)ネイチャーテクノロジー株式会社代表取締役社長。北海道空知支庁花クラスター検討委員会委員。北海道大学大学院工学研究科非常勤講師。NPO薔薇香る癒しのまち岩見沢副理事。
三島和夫(みしま・かずお)秋田大学医学部卒。国立精神・神経センター流動研究員。米国バージニア大学時間生物学研究センター、スタンフォード大学医学部客員助教授(睡眠研究センター)を経て、現在、秋田大学医学部神経運動器学講座精神科学分野助教授。
海老澤尚(えびさわ・たかし)東京大学医学部卒。東京都神経科学総合研究所流動研究員、ハーバード大学医学部ポストドリトーラルフェローなどを経て、現在、埼玉医科大学神経精神医学講師、同ゲノム医学研究センター研究員(兼務)。
粥川裕平(かゆかわ・ゆうへい)名古屋大学医学部卒。愛知県立城山病院デイケアセンター所長、名古屋大学附属病院病棟医長などを経て、現在、名古屋工業大学大学院教授。同安全・保健センター長。岡田クリニック睡眠障害研究室で診療。
北島剛司(きたじま・つよし)名古屋大学医学部卒。現在、藤田保健衛生大学医学部精神科講師。
貝谷久宣(かいや・ひさのぶ)名古屋市立大学医学部卒。岐阜大学医学部助教授などを経て、現在、医療法人和楽会(なごやメンタルクリニック、心療内科・神経科赤坂クリニック、横浜クリニック)理事長。
田ヶ谷浩邦(たがや・ひろくに)東京医科歯科大学医学部卒。マックス・プランク臨床精神医学研究所外国人研究員、東京都多摩老人医療センター精神科医長などを経て、現在、国立精神・神経センター精神保健研究所精神機能研究室長。
向井淳子(むかい・じゅんこ)東京医科歯科大学大学院卒。現在、滋賀医科大学睡眠学講座助手。
林田健一(はやしだ・けんいち)東京慈恵会医科大学卒。現在、同大学附属青戸病院および代々木睡眠クリニックにて診療。
宮本智之(みやもと・ともゆき)濁協医科大学医学部卒。現在、猫協医科大学神経内科講師。
本多真(ほんだ・まこと)東京大学医学部卒。同附属病院、東京都立松沢病院勤務のあと、スタンフォード大学睡眠研究所研究員。現在、東京都精神医学総合研究所睡眠障害研究部門長。
essay執筆者紹介(執筆順)
大熊輝雄(おおくま・てるお)東京大学医学部卒。鳥取大学教授、東北大学教授、国立精神・神経センター武蔵病院院長、国立精神・神経センター総長などを経て、現在、大熊クリニック院長。
高橋清久(たかはし・きよひさ)東京大学医学部卒。滋賀医科大学精神科助教授、国立精神・神経センタi院長、総長を経て、現在、藍野大学学長。
大森健一(おおもり・けんいち)東京医科歯科大学医学部卒。濁協学園理事長・猫協医科大学学長などを経て、現在、濁協医科大学名誉教授。
竹内龍雄(たけうち・たつお)千葉大学医学部卒。国立精神衛生研究所、筑波大学臨床医学系(精神医学)講師などを経て、現在、帝京大学市原病院精神神経科教授。
 
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