子どもの不安症

〜小児の不安障害と心身症の医学〜

出版日:2005年2月15日

久保木富房/不安・抑うつ臨床研究会編

発行所:日本評論社

 定価:1600円+税

はじめに

 時代の急激な変動に伴って子どもたちにも多くのストレスが影響しています。人間の場合、通常、ストレス反応としては、頭痛や発熱などの身体症状で反応する〈身体化〉と、不安やうつなどの精神症状で反応する〈心理化〉、さらに行動上の変化として反応する〈行動化〉の三つに大別されます。子どもの場合はこの三つに分化しないことも多いのですが、通常は身体症状として表現されることが多いことが知られています。不登校の子どもをみても、初期には腹痛や頭痛、発熱などの身体症状ではじまることが多く、しばらくしてから心理化や行動化が経験されます。

 子どもの不安障害や心身症を考えるとき、その子どもの成長段階や発育度などの要素のほかに、家族状況や養育者、保護者、あるいは保育園や学校などの環境要素も重要なものとなります。

 また、ストレス因子が強烈であると、子どもの場合はストレス対策やスキルが十分でないこともあって、その影響が大きくなりやすいといえます。さらに、生命を危うくするような出来事や強い恐怖体験は成人の場合よりも外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)をきたしやすいといわれています。

 さて、筆者と貝谷久宣氏、樋口輝彦氏、竹内龍雄氏、野村忍氏、坂野雄二氏の六名を中心に活動している不安抑うつ臨床研究会は、早稲田大学国際会議場で、「子どもの不安症−小児の不安障害と心身症の医学」と題して都民講演会を開催しました(2005年2月6日)。

 講演をお願いしたのは、筑波大学の宮本信也氏(小児科医の立場から)、国立精神・神経センターの齊藤万比古氏(精神科医の立場から)、高柳病院の木下敏子氏(子どもと家族関係について)、大阪医科大学の田中英高氏(起立性調節障害(OD)を中心に)、新潟大学の神村栄一氏(子どもの認知行動療法)の五名の先生方でした。

 そして、この講演会を催すのを機会に「子どもの不安症」というテーマで一般の方々を対象とした本の出版を企画することとなりました。総論は前述の五名の講演者に依頼し、さらに、この分野の専門家に各論をお願いしたのが本書です。

 各論では、症例を中心として、ADHD(注意欠陥/多動性障害)、摂食障害(拒食症、過食症)、不登校、ひきこもり、喘息、社会不安障害、パニック障害、強迫性障害などをとりあげ、わかりやすいものに書きあげていただくようお願いしました。

 各論は、東京医科大の星加明徳氏、もりおかこども病院の赤坂徹氏、あべのクリニック心療内科の生野照子氏、JR健康推進センターの村山隆志氏、JR東京総合病院の山根知英子氏、横浜相原病院の矢吹弘子氏、寺下医学事務所の寺下謙三氏、広島大学の岡本百合氏、早稲田医療学園人間総合科学大学の大谷純氏、西神戸医療センターの高宮静男氏、赤坂クリニックの貝谷久宣氏、心理カウンセラーの砂田和孝氏などの先生方に執筆をお願いしました。

 本書から、子どもさん本人、そしてご家族や学校の先生方にも子どもの不安症や心身症についての最新の知識を得ていただけるものと確信しております。また、知識だけでなく専門家よりなにがしかのメッセージやスキルを得ていただければと希望しています。

東京大学大学院ストレス防御・心身医学教授

久保木富房

目 次


子どもの不安と心身の問題

宮本信也

精神科医の立場からみた子どもの不安症

齊籐万比古

認知行動療法からみた子どもの不安症

神村栄一

子どもの不安症と家族関係

木下敏子

子どもの不安さまざまな症状と意昧

村山隆志

起立性調節障害とは何か

田中英高

ADHDの特徴とその治療

星加明徳・中嶋光博・飯山道郎

小中学生にとっての不安

山根知英子

「不登校」を通して成長する

矢吹弘子

ひきこもりの意味を読む

大谷 純

子どもの強迫性障害

高宮静男

子どもの摂食障害

生野照子

外が怖い!

岡本百合

子どもの.ハニック障害

貝谷久宣・村岡理子

喘息児の治療と家族への対応

赤坂 徹

青年期境界型の心の病理を探る

寺下謙三

ぼく、どうして安心できないの

砂田和孝

編者紹介

久保木富房(くぼき・とみふさ)東京大学大学院医学系研究科ストレス防御・心身医学(心療内科)教授。1969年東京大学医学部保健学科卒。1973年東京大学医学部卒。1996年東京大学教授(医学部附属病院心療内科)。日本産業精神保健学会理事、『日本行動医学』編集委員。著書:『不安症の時代』(日本評論社)、『抗不安薬の選び方と使い方』(新興医学出版社)、『Bulimiaの臨床』(三輪書店)、『拒食症の病態生理と診断・治療』(振興交易医書出版部)、『心療内科』(星和書店)ほか。
執筆者紹介(五十音順)

赤坂徹(あかさか・とおる)弘前大学医学部卒。現在、社会福祉法人岩手愛児会もりおかこども病院附属子育てセンター、センター長。埼玉医科大学客員教授。

飯山道郎(いいやま・みちろう)東京医科大学卒。現在、東京医科大学小児科。

生野照子(いくの・てるこ)大阪市立医学部卒。現在、神戸女学院大学人間科学部教授。あべのクリニッタ心療内科医師。

大谷純(おおたに・じゅん)岡山大学医学部卒。現在、早稲田医療学園人間総合科学大学人間科学部T群(行動科学・心身科学)教授。

岡本百合(おかもと・ゆり)関西医科大学卒。広島県立総合精神保健福祉センター等を経て、現在、広島大学保健管理センター助教授。

貝谷久宣(かいや・ひさのぶ)名古屋市立大学医学部卒。岐阜大学医学部助教授などを経て、現在、医療法人和楽会(なごやメンタルクリニック、心療内科・神経科赤坂クリニック、横浜クリニック)理事長。

神村栄一(かみむら・えいいち)筑波大学第二学群人間学類卒。早稲田大学人間科学部助手、筑波大学学校教育部文部技官・助手を経て、新潟大学教育人間科学部助教授。臨床心理士、専門行動療法士。

木下敏子(きのした・としこ)千葉大学医学部卒。現在、高柳病院院長。NPO日本子育てアドバイザー協会理事長。

齊藤万比古(さいとう・かずひこ)千葉大学医学部卒。同仁会木更津病院、国立国府台病院心理指導部長を経て、現在、国立精神・神経センター精神保健研究所児童・思春期精神保健部長。

砂田和孝(すなだ・かずたか)旧制専門学校卒。県内中学校勤務・大阪教育大学東山研究室、高等学校巡回カウンセラー、教育心理相談室カウンセラー。

高宮静男(たかみや・しずお)神戸大学医学部卒。現在、西神戸医療センター神経科。

田中英高(たなか・ひでたか)大阪医科大学大学院卒。スウェーデンリンショピン大学医学部研究員を経て、現在、大阪医科大学助教授(小児科)。

寺下謙三(てらした・けんぞう)東京大学医学部卒。現在、寺下医学事務所・所長、同附属クリニック院長。慶鷹義塾大学医学部薬理学教諭。

中嶋光博(なかじま・みつひろ)東京医科大学卒業。現在、東京医科大学小児科。

星加明徳(ほしか・あきのり)東京医科大学卒業。現在、東京医科大学小児科教授。

宮本信也(みやもと・しんや)金沢大学医学部卒。小児科医。現在、筑波大学大学院人間総合科学研究科教授。

村岡理子(むらおか・みちこ)早稲田大学大学院人間科学研究科卒。臨床心理士。心療内科・神経科赤坂クリニック。

村山隆志(むらやま・たかし)北海道大学医学部医学科卒。現在、JR健康推進センター所長、東京女子医科大学小児科非常勤講師、北海道大学医学部非常勤講師。

矢吹弘子(やぶき・ひろこ)東邦大学医学部卒。現在、横浜相原病院心療内科勤務。日本心身医学会認定医、同認定指導医。

山根知英子(やまね・ちえこ)鳥取大学医学部卒。現在、JR東京総合病院小児科部長。