社会不安障害のすべてがわかる本

出版日:2006年3月10日

監修:貝谷 久宣

発行所:講談社

 定価:1200円+税

まえがき

 人前での言動や、社交的な場での対人交流に、また、ときには人前にただいることだけにさえも強い緊張と苦痛を感じ、こうした機会を回避し続ける結果、社会的に孤立してしまうそれが「社会不安障害」という病気の実態です。

 社会不安障害という病名は、まだ一般にはあまり浸透していないかもしれません。いつの時代にも、社会不安障害をかかえる人々は存在してきましたが、「だれにでもある日常的な不安の一部」「不安を強く感じるのは性格的な間題」と切り捨てられてきてしまった感があります。さらに、患者さん自身、苦痛をひとりでかかえ込む傾向が強く、助けを求める声が上がりにくかったという面もあります。

 しかし、近年、この社会不安障害が大きく注目され、「治療すべき疾患」という認識が高まりつつあります。というのも、社会不安障害は放っておけばよくなるというものではなく、むしろ不安や恐怖を感じる場面が広がっていき、うつ病やパニック障害、アルコール依存症などを併発するおそれがあること、潜在的な患者数も非常に多いことが、徐々にわかってきたからです。また、最近、社会間題化している「二ート」や「ひきこもり」と、社会不安障害の関連を指摘する声もあります。

★★★

 この本に興味をひかれ、手にした方は、まず「こんな悩み、相談しても仕方がないのではないか」という思い込みを捨ててください。社会不安障害は治療可能な病気です。「強い気持ちをもて1」といった、気合い一本槍の精神論だけで、どうにかなる状態ではありません。

 現在では、薬物療法をはじめ、認知行動療法など有効な治療法が存在します。社会不安障害を克服することで、あなたの人生は大きく変わる可能性があります。じっと耐え続ける、あるいは逃げ続ける人生で満足ですか?「このままではイヤだ」という気持ちを、治療のスタートに結びつけるために、この本がお役に立てば幸いです。

医療法人和楽会理事長

貝谷 久宣

目 次

@ 人前に出るのが怖い……症状と経過

人前でのスピーチ、オフィスの電話、上司との対話、PTAの集まり、同僚やクラスメイトとの雑談など……。ほかの人にとってはなんでもないことが、どうして自分はこんなにも苫手なんだろう。ああ、もう逃げてしまいたい!そんな思いでいっぱいのあなた。もしかしたら「社会不安障害」といえる状態かもしれません。

A どうして、うまくいかないのだろう……社会不安障害とはなにか

不安や恐怖は、だれもがもつ本能的な感情であり、決して恥ずかしいものではありません。しかし、不安や恐怖は、ときに社会生活の維持を拒むほどにふくらんでいくことがあります。それが「社会不安障害」という病気。なぜ、それほどまでに激しい不安や恐怖がわき起こるのか――そのしくみを探っていきましょう。

B 性格だと、あきらめていたけれど……正しい診断力薩台療への第一歩

「こんなことぐらいで病院に行く人はいないだろう」「性格だから治せるわけがない」――そんな思い込みは不要です。まずは、正しい診断を受けるために医療機関へ。症状が似ているだけで違う病気であったり、ほかの病気を併発している可能性も否定できません。正しい診断を受けることで、本当に効果的な治療を始めることができるのです。

C 不安がすーっと軽くなった……薬物療法の最前線

社会不安障害の治療の柱になるのは薬物療法です。回避行動を生むもとになっている不安や恐怖を軽減するのが、その目的です。どんな薬を、どんなふうに使っていくのか、ここで詳しくみていくことにしましょう。「心の状態を薬でコントロールするなんて……」という心配も、きっと解消するはずです。

D 私は私を変えてみたい……認知行動療法で克服する

薬で不安や恐怖をやわらげても、実際にどのように行動していくかは、あなたしだい。薬物療法に並ぶ社会不安障害の治療法、認知行動療法は、不安がわき起こりそうな状況で、どんなふうに考え、行動していけばよいか、実際の行動を通じて身につけていく方法です。そのエッセンスを、ここで紹介していきましょう。