情報化時代のストレスマネジメント

出版日:2006年7月15日

野村 忍=著

不安・抑うつ臨床研究会=編

発行所:日本評論社

 定価:1800円+税


プロローグ

 二一世紀は「心の時代」あるいは「ストレスの時代」ともいわれています。高度に発達した文明の中でいろいろな弊害が噴出しており、だれしも「人間らしく生きる」ことの重要性を、そして「心を科学する」ことの必要性を感じているからでしょう。特に情報化社会の花形ともいうべき情報産業で働く人たちの心身の健康問題にいかに対処するかは、今日的な大きな社会問題の一つであるといっても過言ではありません。コンピュータの導入は、産業社会構造を大きく変えてしまいました。そして、社会構造だけではなく人間の精神構造までも変えてしまう、そんな危険性をはらんだコンピュータとつきあっているという認識をもって臨む必要があります。

 一九九X年正月のことでした。宴会で夜遅く帰宅した時、ファミコンにスーパーマリオのカセットが差し込んだままになっていました。なにげなくゲームを始めたところ、興に乗ってそのまま朝を迎えてしまいました。それから一週間くらいは不眠との戦いが続きました。「これは、えらいものができた!」というのが正直な感想でした。その後、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーなどの爆発的な人気ゲームが登場し、世の中は、大人も子どももバーチャルリアリティー(仮想現実)のブームの中に飲み込まれていったようにみえます。特に、成長期にある子どもの場合は、そんな仮想現実の中で精神構造が構築され、どのような人間になっていくのかという危惧を、多くの人が感じたのではないでしょうか。

 IT革命の主役は、インターネットと携帯電話といってもよいでしょう。インターネットを使ってあらゆる情報が手に入り、日常的な買い物や各種のチケットが購入でき、ネット大学、ネット銀行あるいはネット病院などの新事業も登場する時代となりました。また、あちらこちらで携帯電話を片手に人々が横行する街の風景は、一時代前には考えられなかったものです。こういう情報過多の最中で、情報の真偽を見極め、人間性豊かで健康な生活を送るためにはなにが必要かを考えてみましょう。

 本書は、健康の考え方、ストレスとその影響、現代人のかかりやすい病気、テクノストレス、そしてストレスマネジメントの方法論などを中心にまとめてみました。情報化時代に生きる人たちに、ほんの少しでも役に立つ情報を提供できれば幸甚です。

目 次

 プロローグ

第1章 健康の考え方
 1.健康観とはなにか
 2.「健康」の語源
 3.快食、快眠、快便
 4.健康目標と健康努力

第2章 ストレスとはなにか
 1.快ストレスと不快ストレス
 2.ストレス反応のあらわれ方
 3.ストレスとライフスタイル
 4.ストレスの評価法

第3章 現代人のかかりやすい心の病気あれこれ
 1.ストレス潰瘍
 2.過敏性腸症候群
 3.タイプA行動パターンと心筋梗塞
 4.怒りと高血圧
 5.ストレスと頭痛
 6.不眠症
 7.パニック障害
 8.社会恐怖・社会不安障害−人が怖い
 9.強迫性障害−わかっちゃいるけどやめられない
 10.適応障害−社会に上手に適応できない
 11.うつ病

第4章 最近のトピックス
 1.テクノストレス
 2.過労死
 3.自殺

第5章 職場のメンタルヘルス
 1.職場のストレス要因
 2.職場の健康づくりの指針
 3.職場のメンタルヘルスの進め方
 4.EAPの現状と課題
 5.心の健康診断(ストレスチェック)
 6.問題事例への対処
 7.職場復帰プログラム

第6章 ストレスマネジメント
 1.いろいろなストレス解消法
 2.人を理解する方法
 3.スランプからの脱出法
 4.日常生活の中での認知行動療法

終章
 五感に働きかける医学
 おわりに
 (付録1)ストレス解消体操
 (付録2)自律訓練法

 コラム
 1.病は気から
 2.ストレス負荷試験とは
 3.白衣高血圧とは
 4.仮面うつ病とは
 5.SSRIは魔法の薬?

 野村忍(のむら・しのぶ)

早稲田大学人間科学学術院教授。医学博士。
専門分野:心身医学、行動医学、臨床心理学。
1977年神戸大学医学部卒業、東京大学医学部心療内科助教授を経て、2000年より現職。日本心理医療諸学会連合副理事長、日本行動医学会理事、ほか役職多数。