書評

マインドフルネス・瞑想・座禅の脳科学と精神療法

貝谷久宣、熊野宏昭編

新興医学出版社、 A5判144頁、 2,700円、 2007年11月刊

(福島県立医大名誉教授) 熊代 永

 この本は、第6回日本認知療法学会(2006年)のシンポジウム「観照・瞑想・座禅のブレインサイエンスと精神療法」で発表された内容に、3つの依頼論文を加えて編者らがまとめたものであり、瞑想を精神療法の中に位置付けた、画期的なものである。筆者は、驚きの連続であった。哲学用語の「弁証法」、「ブッダのヴィパッサナー瞑想」、「ヨーガの瞑想」等が、米国で20年も前から、精神療法として用いられていたことを知らされた。本書は、10章からなっている。
第1章は、依頼論文で、福井大学の村田哲人准教授による「禅瞑想課題中の特殊な意識状態と、その精神生理学的メカニズム」で、「マインドフルネス瞑想」中の脳波変化とセロトニン神経活動との関連性を示唆している。
第2章は、ハーバード大学卒後教育の「精神療法における瞑想」参加記で、ダグラス・イームス院長(東京サイバークリニック)によるもの、ジョン・カバットジン等の講演のテーマを列記している。
第3章は、「パニック障害と瞑想」、「東洋的統合認知行動療法」として、山田和夫院長(横浜クリニック)が、パニック障害を統合認知行動療法によって治す瞑想法の4ステップを紹介している。
第4章は、「瞑想の画像研究のレビュー」として、東京大学の熊野宏昭准教授が、仏教の「止(サマタ)瞑想」と、「観(ヴィパッサナー)瞑想」を解説し、これらの前後における脳の画像研究を示し、前者では血流低下、後者では前頭前野の皮質厚増加を認め、また抗加齢効果も示唆している。
第5章は、「変性意識状態の精神病理と精神療法」として、北海道大学の大宮司信教授が、憑依状態、トランス、観照、瞑想、座禅などを解説している。
第6章では、「在家座禅者のこころ」として、東京大学の大井玄名誉教授が、禅の悟りをわかりやすく解説している。
第7章では、「弁証法的行動療法」として、サウス・カロライナ州立大学の石井朝子教授が、米国のマインドフルネス・スキルを紹介している。
第8章では、「座禅により軽快した非定型うつ病の一例」を、貝谷久宣和楽会理事長が、「座禅による気付き」を患者の言葉で紹介している。また、「マインドフルネス瞑想に基づいたストレス緩和法」を解説している。
第9章は、依頼論文で、「寂静と念の方向性」として、武蔵野大学の中野東禅講師が、「寂静の智」や「念の方向」について解説している。
第10章も依頼論文で、「精神療法としての瞑想」、「その発展と近年の潮流」として、花園大学の安藤治教授が、瞑想研究を精神療法に絞って記している。
以上のように本書は、精神療法の新しい時代の先駆けを示してくれる貴重な書として、精神科医、臨床心理士等にとって必読の書であると推薦したい。

出典:精神療法2008年8月 第34巻 第4号 P88-89