書籍紹介

発行所
主婦と生活社

定価1100円+税

出版日
2003年2月3日


新編 痴呆症はここまで治る

【監修】
横浜市立大学医学部精神医学教室教授
小阪 憲司

 

  はじめに ―この本を読まれる方へ―

 高齢社会のもとで痴呆症のお年寄りの数は年ごとに増えています。そして、その介護の大変さから「痴呆はこわい」「痴呆になったらおしまい」と考える人が少なくありません。

 しかし、痴呆の症状のなかには、よく調べると、治せる病気が原因となっているものが少なくありません。いたずらに恐れて手をこまねくよりは、正しい理解のもとで可能な手だてをこうじていくことが大切です。そうすることで治せる症状は治し、防げる症状は予防し、痴呆の進行を遅らせていくことが可能になってきました。

 最近では、痴呆症の前段階になることがある軽度認知障害に対する対策や、軽度の痴呆症に対する薬の開発なども進んでいます。痴呆症の介護についても、さまざまな試みがなされ、対応のしかたによっては、痴呆症に伴いがちな神経症状や徘徊などの行動の異常を防いだり、やわらげることができることもずいぶんあります。

 本書は、1998年に発刊した“痴呆症はここまで治る”を増補改定し、新編としたものです。第三の痴呆症ともいわれるレビー小体型痴呆、近年試みられている軽度認知障害や軽度の痴呆の進行を遅らせる方法、新薬などを紹介するとともに、成年後見制度など痴呆症の高齢者をサポートする制度、痴呆と介護に関する情報の入手先、相談先などの新しい情報を盛り込みました。この本が、痴呆症の介護に悩んでおられる方がたの一助になれば幸いです。

主婦と生活社


  目次

@痴呆症を誤解していませんか? ―痴呆症の正しい知識

痴呆は病気で、老化によるぼけとは異なる
年齢に伴う“物忘れ”と痴呆の
“物忘れ”の違い
異常な言動は痴呆の中心症状ではない
知的能力が低下するとはどういうこと?
痴呆の症状はどのように進行するか?

A治る痴呆、防げる痴呆 ―痴呆症の診断と治療

痴呆症の原因はさまざまで治るものもある
アルツハイマー型などの変性性痴呆が多い
三つの痴呆症の特徴は?
アルツハイマー型痴呆でも打つ手はある
アルツハイマー型などの痴呆は予防できる例もある!?
脳血管性痴呆は予防ができ、悪化も防げる
脳の病気が原因の痴呆でも治せるものもある
内臓の病気、薬の飲みすぎでも痴呆症に!?
うつ病で仮性痴呆が起こることがある
痴呆症を早く見つける方法は?
診察はどこで、どのように受けたらよいか?
病院で行われる検査の予備知識と準備
リハビリやデイサービスも治療に役立つ
痴呆症に使われる薬と服用の注意

B介護にあたってこれだけは心得ておこう ―痴呆症の介護の原則と心がまえ

介護者は聖人君子である必要はない
介護者の健康管理、周囲の協力も欠かせない
高齢とともに訪れる心の変化は明日のわが身
異常な言動には本人なりの理由がある
わからなくなっても感情やプライドは残る
窮地に追い込まず、できることを見つけよう
混乱や不安を引き起こさない接し方のコツ

Cこんな症状も対処のしかたで軽くなる ―異常な言動の予防と対処法

同じことばかり話す、同じことを何度も聞く
食事をしたのに「食べていない」という
火の消し忘れ、からだき、たばこの火の不始末
うそをつく、作り話をする(作話)
道に迷う、あてもなく歩き回る(徘徊)
家に帰りたがる(夕方症候群など)
人を取り違える、相手が誰だかわからない
入浴を嫌がる、入浴したら出たがらない
眠れない(不眠)、昼と夜を取り違える(昼夜逆転)
奇妙な言動(せん妄)、夜間に興奮する(夜間せん妄)
盗まれたと騒ぐ、浮気をしたと思い込む(妄想)
存在しない物が見えたり聞こえたりする(幻覚・錯覚)
何でも買い込む、他人の物を盗る
おもらしをする(失禁)
トイレを汚す、便をいじる(不潔行為)
何でも口にする(異食)、いくらでも食べる(過食)
何でもかまわず集める(収集癖)
まとまりのない作業・いたずらをする(仮性作業)
おびえる、不調を訴える、乱暴する
ひわいなことをいう

D病気や事故はこうして防ぐ ―日常の健康管理と環境の整備
急変しやすい体調をこうしてチェック
脱水、便秘にはとくに注意が必要
口・歯の清潔、視力・聴力の低下に注意
食事の介助と食べないときのくふう
事故を防ぐためのくふう
寝たきりを防ぐ生活のしかた

E介護は家族で抱え込まない ―公的援助の利用法と相談先

相談ルートを開拓して相談上手になろう
介護保険のサービスはこうして受ける
介護保険には在宅サービスと施設サービスがある
成年後見制度で財産や暮らしをサポート
地域福祉権利擁護事業で金銭管理などを委託
全国の精神保健福祉センター
「呆け老人をかかえる家族の会」
都道府県高齢者総合相談センター/痴呆と介護に関するホームページ


  監修者紹介

小阪 憲司(こさか けんじ)

医学博士
横浜市立大学医学部精神医学教室教授

1939年三重県伊勢市に生まれる。金沢大学医学部卒業。1991年、横浜市立大学医学部精神医学教室教授に就任し、現在に至る。1995〜1997年、同大学医学部付属浦舟病院長。現在、同大学付属市民総合医療センター精神医療センター長を兼務。
医学博士。日本神経精神医学会理事長。日本痴呆学会・日本神経病理学会・日本老年精神医学会・日本アルコール精神医学会・日本精神科救急学会理事。
Neuropathology・Dementia・精神医学・最新精神医学編集委員。「老化性痴呆の臨床」「老化性痴呆と抗痴呆薬」「ウエルニッケ・コルサコフ脳症」など著書・論文多数。
1960年代後半より痴呆性疾患の臨床や脳病理の研究に携わり、第一線の痴呆症の臨床医・研究者として高い評価を得ている。