うつ病(感情障害)Depression

  うつ病はたいへんポピュラーな病気です

 アメリカの国立精神衛生研究所の研究によれば、感情障害の男女比は1:2とされ、女性にうつ病が多い一方、アルコール中毒はその男女比は5:1と男性に圧倒的に多いとされていました。ところが、最近の研究によれば、調査時点でうつ病であったり、またはうつ病の既往歴のある人は100人に男性5.7人、女性5.6人と男女差がないことが明らかにされました。うつ病の年間発病率は1、000人に対し男性では2.1人女性では2.5人という結果でした。まとめてみますと、男女を問わず20人に1人は現在うつ病かまたはその経験者なのです。

  うつ病の症状は?

 次にあげる症状が4つ以上がかなり持続的に認められれば『うつ状態』または『うつ病』が強く疑われます。

ほとんど一日中気分が落ち込んでいる
何に対しても興味も喜びも持てない
食欲がない
三日以上続く不眠
頭の回転が鈍い
理由もなくいらいらする
疲れ易く活力が出ない
やる気が起こらない
些細なことに申し訳ないと悩む
自分は価値のない劣等な人間だと思う
根気がない
簡単なことが決断できない
特に朝方に憂うつ
いつもより二時間早く目覚める
生きていても仕方ないと思う

  うつ病の治療は

 『うつ病』や『うつ状態』の治療にまず必要なのは休養です。休養は身体を休めることではなく心を休めることです。すなわち、気を使わないことです。数週間頭を使わずボーとしているだけで軽いうつは治ってしまいます。次に大切なのは薬物療法です。うつ病の薬は二十種類以上あり、それぞれ作用機序が少しずつ異なっています。ですから、各くすりの臨床的な持ち味が微妙に違っており、副作用もいろいろあります。このようなことから、薬の使い方には正確な知識と経験がものを言います。ベテランのうつ病専門医を見つけましょう。うつ病の症状の多くは治療開始後三ヶ月ぐらいでなくなります。しかし、中等度以上のうつ病であれば症状がなくなってからさらに三ヶ月以上は再発予防のための維持療法が必要です。

  うつ病の原因は?

 うつ病は“脳ミソの風邪”と考えるのがいちばん理解し易いと思います。脳内の“生きる中枢部”の一時的な機能障害です。ですから気分が低下するとともにヒトの四つの本能ー食欲、睡眠、性欲、社会的活動欲ーの機能が正常に働かないのです。このような機能障害は体質とストレスの相互間系で生じます。うつ病体質のヒトはストレスが小さくてもうつ病になります。うつ病体質のヒトでなくても過大なストレスが加わればうつ病を発症します。

  うつ病患者の心得

現在の自分の状態は“病気”であり、なまけではないことを理解する
いつかは必ず治る病気であると確信し、あせらないこと
医師の指示に従い休養をとり、きちんと服薬すること

  うつ病患者の家族の心得

できる限り普通の人と同じようにつきあう
批判したり非難せず、誤った否定的な考えを指摘する
うつは病気であり苦痛の大きいことを教える
微笑んで患者の真面目な努力を讃える
親切な言葉をかけほめる
好意を示す
うつ患者に関心を示し、尊敬し、大切にしている態度を示す
時には、うつ患者を忙しく活動的な場所においておくことも必要です。うつはますますうつを招く傾向にあります。

  うつ病患者家族の禁止事項

うつ患者の状態を非難する
批評する、不愉快な話をする、やりこめる、また非難を口にする
自信を失うようなことを言ったり、したりする

 以上のようなことを注意し実行すればうつ病はコントロールできる病気です。

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医療法人 和楽会
理事長 貝谷久宣