
うつ病治療の基本 認知行動療法
客観的な意見が、自分自身への気付きに
東京・赤坂クリニック「集団認知行動療法」の現場から
うつ病の患者が職場に復帰するためには、対人関係や仕事への対処法を実践的に身に付けることが力になる。人の集まりである職場を意識し、グループで行う「集団認知行動療法」が注目を集めている。
取材.文=熊谷わこ.写真=藤川望
※写真は治療の様子を再規したものです
AERA LIFE 職場のうつ 治療編
p30-31
平日の午前中、赤坂クリニックの一室では、男女4人が熱心に話し合いを続けていた。傍らで聞いていた心理士の鈴木伸一さんが時折口を挟みなから、内容を整理する。20代の女性が意見を述べると一斉にみんなが頷き、それを見た発言者のほおが緩んだ。
これは、復職を希望するうつ病患者を対象にした集団認知行動療法の1コマだ。治療者(医師や心理士)と患者が1対1でカウンセリングをする一般的な認知行動療法とは異なり、患者4〜6名がグループを作る。
講義、個人ワーク、ホームワーク、ディスカッションなどグループだからこそできるさまざまなスタイルで、うつ病患者に多い「考え方のクセ(認知のゆがみ)」を修正していく。この治療に参加している30代の男性はいう。
「参加者全員がうつ病なので、安心して話ができます。それに他の人の意見を聞いていると、だんだんと発言者の考え方が前向きになっていくのが分かる。自分も快方に向かっているような気がして、力が湧いてくるんです」

お互い顔が見える位置で意見を出し合う。
回を重ねるごとに発言が増えていく。
互いをサポートし良い面を見つけ合う
赤坂クリニックでは、2010年に集団認知行動療法をスタートさせた。個人向けもグループの治療も「柔軟で多様な考え方や対処行動を身に付けることで、症状や生活をセルフコントロールしていこう」という認知行動療法のプロセスや目標はほぼ同じ。個入向けは、個々の患者さんの性格や背景、回復状況に合わぜて進められるオーダーメイドの良さがあるが、グループの治療は、同じ病を抱える仲間と学び合い、励まし合いながら取り組むことができる。
そのためプログラムには、他のメンバーの考えやこれまで経験してきたことを聞く機会をたくさん盛り込んでいるという。「他のメンバーのコメントを聞くことで、自分では思いつかないような柔軟な考えを学ぶこともあります。逆に自分の考えや気持ちを話し、他のメンバーからよい部分を認めてもらうことで自信につながります」(前出の男性)
その結果、新たなことに積極的に取り組めるようになるという。ただし、プログラムに参加していれば良くなるというものではない。ワークシートに書き込む作業のほか、宿題もあり、積極的に参加する姿勢が求められる。
「学んだことがプログラムの中だけで終わってしまわないように、少しすつ生活の中に取り人れていくことも大切です」(鈴木さん)

他のメンバーに対するアドバイス
を聞くことも学びになる。
スタート時期に注意 急ぎすぎは逆効果
なお、集団認知行動療法は、早く始めればいいというものではない。自分で作業をするタイプの精神療法なので、急性期は避け、ある程度思考力が戻ってから始めたほうが効果は高い。具体的には睡
眠や食事、外出といった生活リズムがある程度整った頃というのが、日安になる。
ところが、休職中は早く復職したいとあせり、薬物療法で少し体が楽になるとすぐに始めたがる人も多い。鈴木さんはこう指摘する。「スタートを急ぎすぎると、思うように治療効果は上がりません。効果を期待して始めた人ほど失望感が強く、逆にうつを一時的に悪化させてしまうこともあります」
なお、赤坂クリニックでは、集団認知行動療法を終えた入を対象に、復職支援プログラムを4回(週1回)実施。復職を見据えた実践的な内容を盛り込み、職場復帰につなげている。鈴木さんはこうアドバイスする。
「復職をゴールと考えず、職場での新たなリハビリのスタートと考えてください。仕事や生活は、調子のいいときも悪いときも7割、張りきりすぎす、がっかりしすぎないような生活を送るようにしましょう」

 
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