FYTTE No.223 2007.12 p120-121

過去・未来ではなく 今をしっかり生きる

 たとえば、友だちとの関係がうまくいかないとき、過去に言われて傷ついた言葉を何度も思い出すことはありませんか?

 「プチうつになる人は、過去にあったことを思い出して、クヨクヨ悩んだり、将来どうなるのかという不安をいつも抱えている傾向があります。つまり、"今"ではなく、過去や将采のことで頭がいっぱいになってしまうのです。プチうつにならないためには、"今"に集中して、やるべきことをしっかりこなしたり、楽しんだりすることがいちばん。目の前のことになかなか集中できないという人は、具体的な目標を立てるといいですよ」(貝谷先生)

 日常生活では、夜更かしせずに規則正しく過ごし、昼間はなるべく体を動かしたり、太陽にあたるようにしましょう。

前向きになれる考え方

過去は終わってしまったことだし、未来がどうなるかなんて誰にもわからないもの。だからクヨクヨと悩んだり考え込まず、現在やるべきことだけを考え、集中することが大切。

五感を磨いて脳を活性化

 うつ状態になると、脳にも変化が現れます。

 「人がクヨクヨと悩んだり、マイナス方向に考え込んでしまうのは、大脳の働きが空回りしていると考えることができます。それは感情の中枢である扁桃体や海馬から、大脳へ向かってマイナスイメージの情報が入っていくことが原因です。大脳が空回りしないようにするには、扁桃体や海馬に、心地のよい五感の刺激を送る必要があるのです」(貝谷先生)

 テレビ、インターネット、メール、ゲーム…。私たち現代人の周りには情報があふれていますが、その多くは視覚から入ってきます。このため、視覚以外の五感(聴覚、嗅覚、触覚、味覚)をフルに使うことはめったにありません。どうすれば、心地よい五感の刺激をえられるのでしょう。

 「意識して五感を使えば、そんなに難しいことではありません。美しいものを見たり、すばらしい音楽を聴き、おいしい料理を味わったりすれば、海馬や扁桃体を喜ばすことができます。そして、過去のことや将来のことは深く考え込まずに、今、目の前にある現実の五感を十分に認知し、楽しむことが大切です」

整えるべきは脳のバランス

プチうつ状態になると、脳の高等な部分ばかりが発達し、バランスの悪い状態に。





情動や記憶をつかさどる海馬や扁桃体を活性化することで、脳のバランスが改善されるようになります。

今すぐできる!プチうつセルフ予防テク

誰にでもカンタンにできるプチうつ予防法をご紹介。落ち込んだり、イライラしたら試してみて!

その@ 香りを楽しもう!
嗅覚を刺激し、海馬や自律神経に働きかけてくれるのが、よい香り。アロマポットを使ったり、浴槽にアロマオイルをたらして、リラックスタイムを楽しみましょう。イライラしたときは、心をしずめる香りを選んで。


――― 心をしずめる香り ―――

ゼラニウム
バラのように上品で、すがすがしい香り。ストレスなどによる緊張をやわらげる効果があるそう。
カモミール
アールグレイ紅茶の香りづけとしても使われています。心をしずめるとともに高揚させるので、落ち込んだときにも。
ラベンダー
甘くてさわやかな香り。高ぶった神経を落ち着かせてくれるので、就寝前に使うのがおすすめ。

 

その2 思いっきり体を動かそう!
家でゴロゴロしているだけでは、心身の疲れを解消することはできません。心の疲れを感じているときこそ、部屋から出て、好きなスポーツで思いっきり汗を流しましょう。早起きして、散歩やジョギングをするのもおすすめ。

 

その3 部屋を掃除する
気分が落ち込むと何もする気が起こらなくなり、部屋が散らかってまた落ち込むという悪循環に陥ってしまいます。そうならないよう、毎日掃除をしましょう。掃除をすることで適度に体を動かすこともできます。

 

その4 料理をつくってみる
ただ黙々と食事をするのではなく、よく噛み、味わって食べることは、嗅覚や味覚を磨くことにつながります。さらに、献立や手順を考え、手先を動かしながら料理をつくることは、脳のさまざまな部分を活性化することに。

 

その5 音楽を楽しむ
音楽は耳から入って脳に働きかけ、心身をリラックスさせてくれます。基本的には自分の好きな曲を選び、集中して聴くのがいちばん。ただし、聴いた後、落ち込むようなことがあれば、別の曲に変えてみて。