親子の体と心を守る健康情報
「灯台」2003年8月号
第三文明社 P90-91

パニック障害

医療法人 和楽会 なごやメンタルクリニック
心療内科・神経科 赤坂クリニック

理事長 貝谷久宣

学校にどうしてもいけない---こんな不登校の背景には「不安の病気」が原因になっていることもあります。代表的な不安の病気、パニック障害の基礎知識を知っておきましょう。 構成・取材・文/山本勇希 イラスト/大前結子

どんな病気なの?

突然、激しい自律神経失調症状に襲われ、強い不安を感じる病気です
パニック障害は、理由もなく、「体全体がドキンドキンといっている」「息の吸い方、はき方がわからない」「フアフアとめまいがする」といった症状を伴う〈パニック発作〉が不意に突然起こり、激しい不安を感じる病気です。発作自体は数十分以内で収まるのですが、また発作が起きてしまうのではないかという予期不安にかられ、発作が起こった場所を避けたり、家から出られなくなるなど、やがて日常生活に支障をきたすことがあります。学生の場合、パニック発作や予期不安は、閉鎖空間である教室で起きることが多くあります。

なぜ起きるの?

ストレスが長く続くことが心身の負担になります
パニック障害は、他人にどう思われるかが気になって言いたいことが言えない、変な人間だとに思われたくないなど、周囲に過剰に合わせる人に起きやすい傾向があります。気を遣いすぎると、結果的に自分を押し殺すことになり、いつもストレスにさらされている状態になることが、パニック発作が起きる原因の一つです。ありのままの自分でいる練習が予防の意味でも大切。また、パニック発作が起きているときは、自律神経機能に異常が表れるために、心身のバランスが乱れ、さまざまな症状が見られます。

長引かせないためには?

早期発見、早期治療をして無理を重ねないことが原則!
パニック発作が起きると、びっくりして何をしたらよいのか分からなくなりますが、多くは十分〜数十分以内に収まるので、あわてずに冷静に対応することが大切です。発作中は前屈みかうつ伏せになり、静かに呼吸をしていると自然に腹式呼吸となり、気持ちが落ち着いて、心身が安定して症状が落ち着いてきます。パニック発作は、薬や精神療法(認知療法)で治療することができます。症状が収まったら、心療内科か精神科を受診して、再発を予防しましょう。

Doctor's message

まずは病気を知ることから
「パニック障害は、1980年に米国精神医学会で認められた新しい病気です。約100人に1〜3人の割合で見られ、誰にでも起きる可能性がある病気なのですが、検査を行なっても器質的な異常が見つからないために、「病気」であるとの認識がなされにくいのが問題です。しかし、本人の苦痛と日常生活への支障はとても強いものです。ある日、不意に、理由なく起きますが、やはり、心の奥底に不安があって起こることが多い病気であることを知っておくことが大切でしよう」(貝谷久宣)