坐禅、ウォーキング、自立訓練、シミュレーション

パニック障害の治療は薬によってパニック発作を抑えたり、うつ症状を軽減するのが基本ですが、不安や恐怖を頭の中で想像しないようにトレーニングする方法もあります。

頭の中を無にして不安や恐怖を想像しない訓練法

 薬による治療でパニック発作を抑えるとともに、貝谷医師が取り入れている治療法が「マインドフルネス・認知療法」です。これについて貝谷医師は、「パニック障害の患者さんは、予期不安や広場恐怖など、頭の中でいろいろ想像することで不安を募らせてしまう傾向があります。またうつ病の患者さんは過去のできごとを思い出して自分を責めたりすることで症状が悪化します。そこで、過去や未来を考えずに、常に『今』を意識する訓練がマインドフルネス・認知療法です」と説明します。

脳の機能とパニック障害

■エクスボージャー
不安を感じる場面から逃げずに、不安が自然に落ち着くのを体験します(シミュレーション)

■認知療法
気持ちや考え方が不安と関連していることに気づき、不適応な考え方を修正します(カウンセリング)

■応用リラグゼーション
リラックス状態をつくって、体の変化・ストレスを緩和します(自律訓練法・坐禅・ウォーキング・ヨガ)

腹式呼吸、ヨガ、坐禅、自律訓練法などで自分をコントロールする

 そのひとつが腹式呼吸で呼吸に意識を集中し、余計なことを考えないようにする方法。ヨガで呼吸と体の動きに集中する方法もあります。また坐禅を組んで何も考えない「無」の状態にする方法もあります。さらに自律訓練法という「右手が温かい」「右手が重い」などと、自分の意思で動かせる体の機能をコントロールする経験をもとに、自分ではコントロールできない自律神経に働きかけて、間接的にコントロールできるようにする方法です。体から心に働きかけることで、自分をコントロールすることができるようになり、心身の緊張や不安を和らげて、動悸や過呼吸などを抑えることも可能です。

患者さんと皇居ウォーキング

 さらに不安や恐怖を感じる場面に慣れるエクスポージャーの訓練で、医師と一緒に地下鉄に乗ったり、人ごみを歩いたりすることもあります。また貝谷医師は定期的に患者さんと皇居をウォーキングしています。「体を動かすことで成長ホルモンも分泌され、前向きになれるし、汗をかくことでストレス解消にもなります。不安や恐怖を頭の中で想像するよりも、今の自分と向き合って汗を流し、心地よい疲労感を味わうことで、生きていることを実感してもらおうと続けています」と貝谷医師は笑顔で答えてくれました。