聞くのが8割、助言は2割

 パニック障害や不安障害の患者さんに毎日お会いしていると、家族が病気のことを理解してくれない、話をちゃんと聞いてくれない、両親や夫が冷たいなどといった訴えを聞くことがよくあります。周りから見ると、普段は案外元気にしているように見えてしまい、本当に具合が悪いの?と思えてしまうところがあって、どうしても、周りから誤解されがちなのが、この病気の一つの特徴かもしれません。

 そのような時は,主治医からご家族に対して、病気の説明を致しまして、患者さんの話をよく聞いてあげて下さいといった助言をさせてもらっています。

 今回は、この話を聞くということについて少しお話をしたいと思います。

 基本は、「まずは本人の話をじっくりと聞いて、本人のつらさを十分にわかった上で、どうしていったら良いのかを一緒になって考えていく」ということです。つらい気持ちを十分に理解しないで、ああしなさい、こうしなさい、気のせいだから気にするな、などと言われても、理解してもらえなかったという気持ちが残るだけです。

 それでは、しっかりと聞くためのコツは、どういったことかといいますと、それが、今回の表題にしました「聞くのが8割、助言は2割」ということです。本当は、「聞くのが10割、助言はなし」でもいいのです。助言するのは、助言を求められた時だけにします。それも言葉は少なめに…。相談された方は、どうしても批判的になってあれやこれやと口数多く助言をしてしまうものなのですが、それでは逆効果です。

 悩みのある人は、まず、自分の気持ちを聞いてもらいたいという思いがあります。それで、家族に相談するわけですが、そうすると、どうなるか?こうしないからだ、ああしないからだと自分の問題点を指摘され、苦言やら批判やらが返ってくることになります。そうすると、相談したほうは、がっくり来てしまいます。本当は、話を聞いてもらえるだけでよかったのです。批判されたり非難されたりすることなく、しっかり話を聞いてもらえれば、それだけでも気持ちは随分と楽になるものなのです。ここが大事なのですが、話を聞くほうは、相手のことを非難するような気持ちは決してもたないことが大切です。

 また、人というものは、人からああしなさい、こうしなさいと指示されたことは実行する気にならないものです。自分からこうしてみようと思わないと、結局は実行できない。ですから、「それを実現するためには、どうしたらいい?」と、本人の考えを引き出すようにします。改善策を決めて実行するのは、結局は本人だということです。じっくり本人と一緒になって解決策を考えていき、どうしても、意見が出てこない場合に、「私は、こうしてみたらどうかと思うが…。」「ああしてみたらどうかな?」と、少し、提案してみることです。その際、上からの指示にはならないようにしましょう。

 しっかりと聞くということには、もうひとつ利点があります。それは、まわりの人に批判されることなくちゃんと聞いてもらえたら、患者さん本人が自分のことをしっかりと話すことができるということです。自分のことをしっかりと話すということは、実は、自分でも自分の話す言葉を聞いていることになるのです。人は自分の気持ちを人にしゃべることによって、物事の問題点が見えてきて、どうしたらいいのかがわかってくるということがあります。自分の気持ちをしっかりと言語化することで、今まで気がつかなかったことに自分で気付くということもあるのです。

 十分に相手のことを理解した上であれば、時には、厳しい言葉も意味があるかもしれません。相手のつらさを理解しないで、頭ごなしに厳しい言葉をかけることは百害あって一利なしです。

医療法人和楽会 心療内科・神経科 赤坂クリニック院長

吉田 栄治


ケ セラ セラ<こころの季刊誌>
VOL.39 2005 WINTER