焦らないということ

 いろいろと焦ってしまい、イライラしてしまうという患者さんが、しばしばおられます。そういう時はどうしたらいいのですか?と、聞かれます。

 急いでいる時こそ、焦ってしまっている時こそ、むしろペースを落として、ゆっくりとあわてず失敗のないように、じっくりと腰を据えたいものです。その意識が大事かと思います。「急がば回れ」ですね。

 とはいうものの、気持ちにゆとりがない時は、ついつい焦ってしまいがちです。そんなとき私は、昔のとあるCMソングを思い出し、「のーんびり、ゆこおーよぉ♪」とそのフレーズを心の中で少し口ずさんで、焦る気持ちを落ち着けることがあります。

 その歌は、1970年代のモービル石油のCMソングで、次のような歌詞です。

 インターネットの YouTubeで「気楽に行こうよ」で検索するとヒットしますので、興味のある方は、どうぞ聞いてみてください。ゆったり、のんびりした気分に多少なれるのではないかと思います。

 昔、日本が高度経済成長の真っただ中で、世の中がせわしく動いていたころ、こんな標語もはやりました。

 この標語のパロディで 「狭い日本、急げばそれだけ早く着く」 などというキャッチフレーズもありましたが、まあ、狭い日本で急いでも、短縮できる時間はたかが知れています。それよりも、5分、10分の余裕をもって行動すれば、あまり急ぐ必要もなくなるというものでしよう。

 私は、昔、自衛隊の病院に勤務する自衛官だったのですが、自衛隊では「5分前の精神」ということをよく言われました。集合時間の5分前には全員整列して集合完了しているべしというわけです。そうなると、整列が遅くならないように10分前には集合場所に行くことになります。長年のその習い性か、今でも、講演会や研究会などの会合がある時は、20分〜30分ほど前には、会場に行く癖があります。そしてゆっくりと会が始まるのを待ちます。また、当時の仲間と待ち合わせなどをすると、お互いに約束の時間のだいぶ前に待ち合わせ場所に来るものですから、お互いに「早いなあ」と声を掛け合うのが挨拶のようになっています。

 さて、焦ってイライラしないようにするためのコツです。まずは、十分時間に余裕をもって行動し、あわてないようにしましょう。時間がぎりぎりになってしまった時は、多少は遅れてもしょうがないぐらいにおおように構えましょう。時間がもったいなく感じて焦ってしまうような時は、「気楽に行こうよ」を口ずさんだり、先の「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」を思い出して、ゆったりと構えるようにしてみましょう。

医療法人和楽会 心療内科・神経科 赤坂クリニック院長

吉田 栄治

ケ セラ セラ<こころの季刊誌>
VOL.61 2010 SUMMER