心療内科・神経科 鎌倉山クリニック 
安心堂(あんじんどう)の由来

  人の生活に不安はつきものです。不安なしに生きる人はいないでしょう。しかし、不安を持っても、多くの人の不安は、一時的であり、その程度はそれほど強くなく何とかやり過ごしています。それがひとたび不安症となってしまうと、大変辛く、常に不安につきまとわれることになります。
  この病的な不安が主な症状である不安症を私はこの15年間専門に診療してきました。実際の診療における私の専門は臨床精神薬理学です。私はこの30数年間、患者を診察してこの症状にはこの薬が良く効く、または効かない、それどころか副作用が大変だ、などといった経験の積み重ねで毎日過ごしてきました。最近では、診察室に入ったときの表情だけでその日の処方が決まることさえあります。薬を上手に使えば不安症は怖くありません。何とかなるものです。しかし、本当に不安症を治しきるのは薬だけでは難しいのです。その大きな治療法のひとつが認知行動療法です。もちろん薬物療法も認知行動療法をスムーズに進めるのには重要です。抗不安薬で不安を和らげ行動療法がやりやすくなります。抗うつ薬でやる気を出させ、マイナス思考をプラス思考にして認知療法の効果を高めます。認知行動療法には強い意志と忍耐力が必要です。ですから、不安症の治療に最終的に必要不可欠なことは患者が自分で治そうとする精神力です。この精神力なくしては不安の病気は治りません。他力本願ではなく自力本願で治す病気です。不安症で見られる病的な不安も、正常な不安、言葉を変えればストレスが積もり重なり生じたものであると考えることが出来ます。ですから、不安の病気を退治するにはストレスに強くなること、正常な不安に打ち勝つ力をつけることになります。
  心療内科・神経科 鎌倉山クリニック 安心堂の安心(あんじん)は「安心立命」(あんじんりゅうみょう)『天目高峰禅師示衆』という禅語からいただきました。三省堂「大辞林」をみますと安心は、(1)教えを聞いたり、修行を積むことで、心の動くことのなくなった境地、(2)浄土宗で、阿弥陀仏の救いを信じて疑わず、浄土往生を願う心をいう、と出ています。要するに、文字の如く「心を安んじる」ということで、不安のない心です。このクリニックに来ていただいた人に不安のない心に一刻も早くなっていただきたいというメッセージをこめてこのクリニックの名にしました。なお、立命というのは命を立てる、すなわち命を生かすことです。心を安らかにして、毎日精一杯一生懸命に生き、充実した人生を送るという意味です。このクリニックを訪問された患者さんが一刻も早く不安症から立ち直り、すばらしい人生を送られることを切に祈って診療いたします。
  安心堂において、私は、診療の合間にストレスに打ち勝つ精神力を養うために坐禅を患者さんと一緒に行うことを計画しています。まず、手始めに5分間だけでも私と一緒に正坐黙想しませんか。日本古来の坐禅は、最近形を変えて心療内科領域でマインドフルネス(観照)として注目されています。坐禅やヨガなどの瞑想に関して、最近のいくつかの脳研究は脳に良い影響を確実に及ぼしていることを報告しています。

医療法人 和楽会 理事長 貝谷 久宣