パニック障害患者の脳機能障害

 ワシが中学生の頃、ギャバという脳内物質は頭をよくすると言われていた。ワシはクラスで一番の成績を取りたいために勉強しないで、その前駆物質のギャボブという市販薬をこっそり飲んでいたことがある。その試みは結局失敗に終わったのジャが、ギャバが最近注目されている。
 パニック障害の治療薬である抗不安薬は、ベンゾジアゼピンという化学物質である。脳内の神経細胞にはベンゾジアゼピン受容体を持つものがあり、抗不安薬がここに作用するとギャバの働きがよくなる。
 パニック障害患者を SPECT という画像診断の器械で検査して、このベンゾジアゼピン受容体が少ないということがこの10年間しばしば報告されてきた。要するに、パニック障害患者は抗不安薬が作用する部分が少なくなっていて、ギャバの働きが十分ではない可能性があるということジャ。 最近、脳内の状態を調べる技術がさらに進歩して、MRSという器械を使うと強い浸襲を加えることなく人間の脳内のギャバ量を測定できるようになった。最新の研究は、パニック障害患者の後頭部でギャバが減少していることを報告している。ギャバは脳内に広く分布する抑制性の神経伝達物質である。 誤解を招かないようにことわっておくが、ギャバが少ないと学業成績が悪いという証拠は全くない。このようなギャバの研究から、パニック障害の新しい治療法が生まれる可能性がある。ワシはそれを楽しみにしている。

Que Sera Sera VOL.25 2001 SUMMER