見ず聞かず言わざる三つのさるよりも
思わざるこそまさるなりけり(良源)

「見ざる、言わざる、聞かざる」は日光東照宮・神厩舎にある彫刻が有名ですが、この三猿の話はもともと、天台宗の中興の祖と言われている良源の処世術から生まれたものです。

他人のいやなこと、不安なことに対して見ざる聞かざる言わざるが不安症の患者さんには最も大切です。さらに、それ以上に、いかり【忿(ふん)】、うらみ【恨(こん)】、ごまかし【覆(ふく)】、なやみ・なやませること【悩(のう)】、ねたみ【嫉(しつ)】、ものおしみ【慳(けん)】だますこと【誑(おう)】、へつらい【諂(てん)】、傷付けること【害(がい)】、おごり【驕(きょう)】といった悪い心を持たない、「思わざる」ことが最も大切であると良源は言ったのです。「思わざること」は難しいことではありません。悪い心が寄ってきたら、自分の心でそっと隠すのです。そのためには、「わが道」を行けばよいのです。

(中野東禅著 人生の問題がすっと解決する名僧の一言 三笠書房 より)

Que Sera Sera VOL.54 2008 AUTUMN