生ぜしもひとりなり。死するも独りなり(一遍)

 この言葉は「生まれた時も一人、死ぬ時も一人である」という意味で『一遍上人語録』に収められている言葉です。他の人と協力関係を持って暮らしていても一人である。なぜなら、死ぬまでそいとげられる人はいないからである。たとえ、夫婦として一緒に暮らしていても別々の人間ですし、一緒には死ねません。“命は銘々持ち”ということです。「孤独を大切にして生きよう」という積極的な意味合いなのです。人間は孤独であり、裸一貫であるということを心にとめて、人とのふれあいを見直してみると、いつもの夫婦、親子、友だちなどとの関係に新たな発見があるかもしれません。

(中野東禅著 人生の問題がすっと解決する名僧の一言 三笠書房 より)

Que Sera Sera VOL.55 2009 WINTER