一人で外出できないのは病気でしょうか?

 外出恐怖症・乗り物恐怖症は不安障害と呼ばれる病気です

 外出恐怖症・乗り物恐怖症はパニック発作に引き続いて起こる。パニック発作を一度経験すると、発作がまた起こるのではないかという不安(予期不安)のため、逃れることが困難な場所やすぐさま助けが求められないような状況にいることに強い恐怖感をもち、そのような場所を避けるようになる。

パニック発作の症状は

 ある限定した時間内に激しい恐怖感や不安感とともに次に示すような症状が突然出現し、10分以内にピ−クに達する。

心臓がドキドキする
息苦しい
めまい、ふらつき
息が詰まる
胸痛または不快感
身体や手足の震え
しびれやうずき感
吐き気、腹部不快感
汗をかく
死の恐怖
寒気または、ほてり
非現実感
常軌を逸する心配

パニック発作の特徴は?

発作は誘因なく突然はじまり、繰り返す
また発作が来るという不安(予期不安)
発作を説明できる臨床検査所見がない

PTAに出席できるようになった外出恐怖症の主婦

 Cさんは2人お子供を持つ38歳の主婦です。6年前、夕食後テレビを見ていて動悸で始まるパニック発作を発症してから生活がまるで変化しました。発作を繰り返す毎に行動範囲が狭まり、ついに一人で家にいることもできなくなり、自分の実家のすぐ近くに引っ越しました。それから外出恐怖は少しずつ改善し、家の近くには買い物に出かけることは出来るようになりました。しかし、一人で乗り物に乗ることは絶対に出来ませんでした。Cさんの最大の悩みは、PTAの集いに出られないことです。たくさんの父兄の前で発作が起き恥ずかしい思いをしたらという恐れが強くてとても参加できません。なごやメンタルクリニックでCさんはまずきちんと服薬する事を約束しました。そうしたら発作や身体の不調は完全に消えました。丁度その頃、長男の学校で個別懇談が開かれることになり、主治医の強い勧めで出席することを決心しました。学校へ出かける朝、Cさんは指示通り定期薬の他に頓服を飲み、”大丈夫、大丈夫、発作は絶対起きない”と腹の中で十回唱えました。授業参観は頓服のためかボッ−としている中にすんでしまいました。そして肝心の個人懇談の予定時間が迫ってきますと、少し胸がドキドキしてきました。Cさんはまた腹の中であの呪文を唱えました。そして、先生の前に座ってみると以外に落ちついている自分に気がつきました。これなら大丈夫と安心し先生と落ちついて話が出来ました。母親としての役割が果たせ人生が少し開けてきたという期待で、Cさんはウキウキして学校から帰りました。これを契機にCさんは少しずつ”冒険”をするようになりました。バスに乗って友人の家に遊びに行きました。少し不安があればすぐ次の停留所で降りてしまうこともありましたが大きな進歩です。

外出恐怖症・乗り物恐怖症の治療法

 まずパニック障害の専門医を見つけること

 パニック発作を薬物治療で完全におさめる

 Cさんのように、元気のよい人は発作がなくなるだけで平気になって外出できるようになるが、しかし、多くの人は発作の恐ろしさを忘れることができず、行動療法が必要になる。

 行動療法では、まず、自律訓練法や音楽療法などによりまず心身のリラクゼ−ションができるようにする。リラックスした状態でまず恐怖感が比較的軽い状況をイマジネ−ションしたり、実際にそのような場所に臨み何も恐怖はないことを学習していく(恐怖の消去)。次に、さらに恐怖感の強い状況に対してこのようなことを繰り返し、恐怖感をどんどん克服していく。普通、3ヶ月から半年ぐらいの治療期間を必要とする。

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文責

医療法人 和楽会
理事長 貝谷久宣