リエの日記より
(あるパニック障害患者の若い女性)

 1997年2月21日

 .......昨日感じた恐怖感は全く新しいものかもしれない。とにかく耐えらるものではない。昨日は無事にみんなと食事をして帰って来たが、ピーターの家の前に着く前にまたおかしな状態になってしまった。いつものように心臓がドキドキしてきて手に汗がじわっとにじんでくるのがわかった。全てが(私の)バラバラに壊れていくような感じと、とても残酷な(へんな)空気に包まれて自分が別のものに変わってしまいそうな感じがした。足は地に着いていないような感じで、歯が浮くような、いてもたってもいられないすぐに逃げ出したい気がした。

 昨日は胃の調子が風邪で悪かったせいもあるので吐き気がしてきた。とにかくこれではみんなと食事をするなんて無理だなと思って電話をかけたのだが、つながらなくてもう一度家の前までいってノックした。ピーターとケンゾ−さんに風邪で気分が悪いので行けないというとお茶を飲ませてくれた。2人が「リエは夏風邪だからなかなかよくならないんだ」とか、「状況がこれから変わるから緊張しているんじゃないか」とか言っているのを聴いていたら少し落ち着いてきた。

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 私はそれでもまだ自分が別の何かに変わってしまう恐怖を感じていたが(これから恐ろしいことが起こってしまうような)、先刻より楽なので、それに私が正常なときこの家ではとても居心地がよかったので 大丈夫かなという気がしてきた。そして、ケンゾ−さんが「食べなくてもいいから一緒においで」と言ってくれたので「そうします」とそのときは自信を持って連いて行った。

 数分後、家について中に入ったとき、また最初の気持ちに戻ってしまった。そこに居たタツのことはよく知っているのに「困ったなあ」と思い外へ出たくなってしまった。そのとき丁度「二人先に行ってて」と言われケンゾ−さんと二人で外を歩き始めた。レストランに着くまでには私は正常になった。

 ケンゾ−さんが「食べなくてもいいんだからね」ともう一度言ってくれた。2人が加わっても大丈夫だった。私はだんだんリラックスして思ったより食べれた。途中でタツが「気分悪いの?大丈夫?」と言ってくれたのでタツに対する恐怖心が消えた。それでも途中で2回小さい恐怖感が襲ってきた。

 3人がうらやましかった。自分の注文したものを味見しあって、あれこれ話し、大声で笑っている3人をみて健康でいいなと思った。また、3人のつながりもとてもうらやましかった。魚がきたとき、おいしそうだなと思って食べてみようかなと思ったとき、ケンゾ−さんが「こんなの食べちゃダメ! 胃がおかしくなっちゃうよ」と言った。それが私を本当に安心させた。家に帰る頃私は完全に正常だった。