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パニック障害は不安の病である。理由のない不安や、理由があってもその程度に見合わないほど強い不安が生じる病気である。その病的不安の直接的で具体的な原因や理由は表面的には認められない。しかし、患者さんの生活史を垣間見るうちに、“ああこの患者さんはこんな大変な状況で長いこと苦しんできたのだ”となんとなく納得できる。このように多くの事例を観察していると、パニック障害の発症にはストレスが大きな役割を果たしていることが実感される。しかし、なかにはさほどストレスが有った様には思われない事例にも時に遭遇する。このことは、病気は外因と内因との相互作用で発症すると言う精神医学の旧来からの考え方で説明される(図参照)。外因が強ければ内因はさほどなくとも発病し、反対に内因が非常に強ければ外因なしでも発病すると言う相互関係であります。外因とは一般的には、環境的な要因とか外傷や身体的病気を言い、内因は体質または遺伝的素因と考えられる。外因は言葉を変えて言えばストレスであります。ストレスと一口に言っても、心理的・精神的ストレスも有れば気温・気圧・湿度といった天候や疲労・空腹といったより身体的なものもあります。この図から言えることは、家族にパニック障害があるような人は外因、すなわちストレスがさほど強くなくとも体質的にパニック障害を起こしやすい人です。ここでストレスの影響を強く受けて発病したと考えられる事例を紹介しましょう。
![]() 前にも述べましたようにはっきりしたストレスなしで発病する人達はどのように考えたらよいでしょうか。ひとつは本人がストレスを意識していなくてもその患者さんの生体にとって大変なストレスが加わっていたということがあります。もう一つは、体質的にパニック障害になり易い人です。これは家族性、または遺伝性と言うこともできます。わたしのクリニックの調査では、パニック障害の患者さん5人に一人は親、同胞、または子供にパニック障害の人がいます。パニック障害は非常に家族性の高い病気です。現在までの研究ではパニック障害そのものの病気の遺伝子は見つかっていません。わかっていることはパニック障害になり易いことに遺伝子が関与しているらしいということだけです。生来的に過敏な性格で普通の人ならそれほど苦痛に感じないような人間関係にも強く反応してしまい悩み苦しむ人がいます。その結果ストレスが増大し、パニック障害を発症してしまいます。このような病前性格は、小さいときの環境により作られることもありますし、生来的に、言葉を換えて言えば、素質的、遺伝的に過敏なたちの人もいます。すなわち、環境と遺伝子は密接な相互関係をしているのです。 わたしたちのクリニックでは、この辺りのことを明らかにするために、専門家が集まり大掛かりな調査を進める準備をしています。性格検査を受け、自分の遺伝子をこの調査のために提供してくださるボランティアの患者さんをクリニックでは募集しています。 ![]() 医療法人 和楽会 理事長 貝谷 久宣
![]() ケ セラ セラ<こころの季刊誌> VOL.33 2003 SUMMER
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