フクロウblog | 貝谷 久宣医師の不安のない生活

医療法人和楽会の「フクロウblog」です。治療や講演会などの様々な情報をお届けします。

マインドフルネスの臨床効果と脳科学 ⑥マインドフルネスは痛みを和らげるか(ケセラセラvol.97夏)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

 

マインドフルネスストレス低減法の創始者カバット― ジン博士は90人の慢性疼痛患者に10週間のマインドフルネス・プログラムを行いました(1985)。その結果、訓練時の痛み、ボディイメージ、痛みによる活動性、病的症状、不快気分、不安・抑うつ、鎮痛剤の服用量、自己肯定感といった項目ですべて有意な効果があったと報告しています。多くの患者はその後も瞑想を続け、これらの効果は15か月後も持続していたということです。この論文で、マインドフルネスが臨床医学で脚光を浴びる大きなきっかけとなっています。しかし、現代医学でも慢性疼痛の治療はそれほど容易なものではありません。

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マインドフルネスの臨床効果と脳科学 ⑤ストレスとマインドフルネス(ケセラセラvol.96春)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

 

ストレスとは一体何?

ストレスとはプレッシャーに対する身体的および心理的な反応です。ストレッサーは内的なもの(例:痛み)もあれば外的なもの(例:超過勤務)もあります。ストレッサーに対する耐性は個人差が非常に大きく、適度なストレスはむしろ健康にとって好ましいのです(図1)。

図1
たとえば、人前で発表する時には適度な緊張感があったほうがパフォーマンスは良くなります。プレッシャーがある一線を越えてしまうと、逆効果になり、パフォーマンスが悪化します。

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マインドフルネスの臨床効果と脳科学 ③ マインドフルネスを続けると長生きしますか – その2(ケセラセラvol.95 冬)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

 

前回に引き続き瞑想により寿命が延びるかどうか検討しましょう。

スペインには曹洞宗寺院がバレンシアとセビリアにあり、本格的に坐禅をする人がかなり多数いると思われます。研究対象となった人達は、1日平均90分前後、10年以上坐禅をしている20人、両群とも男性14名で平均年齢48歳でした。テロメア長は白血球から分離したDNAで検査されました。坐禅群でのテロメア長は10・82±0・23kb、対照群では9・94±0・19kbで坐禅群のほうが統計学的有意にテロメアは長いことが明らかにされました(p<0・001)。また、テロメアが短い白血球の数は有意に少ないことが明らかになりました(p<0・005)。このように坐禅を続けた人はテロメアが長いだけでなく、セルフ・コンパッション尺度が高得点であり、さらに、体験回避の程度が低いことが明らかになりました。 続きを読む


マインドフルネスの臨床効果と脳科学 ③ マインドフルネスを続けると長生きしますか – その1(ケセラセラvol.94 秋)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

 

まず、話の順序として長生き遺伝子といわれているテロメアについて簡単に説明しましょう。人間のDNAの末端にはテロメアと呼ばれる特定の塩基の繰り返し配列があります(図1)。このテロメアは細胞分裂をするたびに短くなっていきます。テロメアには遺伝情報は含まれていませんが、テロメアがあることにより意味のある遺伝子配列が失われないようになっています。細胞分裂を繰り返しテロメアが短くなりすぎるとそれ以上細胞分裂ができなくなってしまいます。それが老化です。

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マインドフルネスの臨床効果と脳科学 ②すこし思いやりの気持ちが持てるようになりました(ケセラセラvol.93 夏)

医療法人和楽会 理事長 貝谷 久宣

 

東京マインドフルネスセンターではヨーガの後に瞑想を25分しています。最後の5分は慈愛の瞑想(Loving-Kindness Meditation)です。慈愛と慈悲(Compassion)は少し意味が異なります。慈愛は、自分や他人が幸せになることを望む祈りです。慈愛はパーリ語でMettaと表現され、「無条件の親しみ」や「博愛」と訳されることもあります。自分や他人に対する善意を培う際に、私たちはいつでも慈愛を体験することが出来ます。一方、慈悲とは自分や他人が苦しみから解放されることを望むことです。苦しみに気が付いた時、それを願望や行動として和らげたいと思う時に、慈悲の心が生じます。実際には、慈悲の瞑想は慈愛の瞑想の一部であると考えている人もいます。

では、慈愛の瞑想はどのようにするのでしょうか。瞑想中に次のように心の中でつぶやきます:私が幸せでありますように! 私の悩み苦しみがなくなりますように! 自分に対する慈愛の瞑想が終わったら次には、自分に最も身近な人、親しい人、または好きな人に対して、その次には好きでも嫌いでもないその時にふっと顔が浮かんだ人に、その次に嫌いな人に、その次には生きとし生けるものに、最後にもう一度自分に対して行います。この時、嫌いな人を思い出すだけで心が乱れそうならパスします。

慈愛の瞑想中に参加者の様子を眺めていますと、皆さんの真剣な様子が伝わってきます。中には顔をしかめたり、涙を流す人もいます。慈愛の瞑想を真剣にすると瞑想がより深まります。

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