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不安のない生活(29)呼吸について(2)(ケセラセラvol.85)

医療法人和楽会 理事長 貝谷 久宣

 

以前本誌に「香道 文学散歩」を連載執筆していただいていた香道お家流の熊坂久美子家元から前回の筆者の原稿「呼吸について」の感想を頂いた。香道では香炉を両手で持て息を短く吐いて香炉に乗っかっている香木を鼻に近づけゆっくり息を吸うのが常道である。前回の原稿の中の“吐く息が長いのは長生きの証拠である”に関して、「私、長生きできないわね」と古希を過ぎた筆者より何歳も年長の久美子女史が申された。いや、違うんです。お香を長年嗜まれている方は概して長生きで活発だと私は思っています。嗅覚のような原始感覚を研ぎ澄ますことは生物本来のエネルギーを高め保寿につながると私は思っています。アルツハイマー病の初期症状は嗅覚低下です。香道で香りを聞くとき多くの香人は片側の鼻を主に使用します。たぶんこれは注意を集中するためでしょう。しかし、NHKの人気番組「ためしてガッテン」で知ったのですが、実は私たちの呼吸は鼻腔を左右交互に使用しているらしいのです。これは疲労を避けるためであると解釈されています。そうなるとお香で片鼻を使うのは活動中で敏感な鼻を使っているとも考えられます。

 

昔の禅僧やヨーガ行者は片方の鼻腔から水を吸い他方の鼻腔から出して鼻腔粘膜を浄めると言われています。これは健康のために大変有効な方法のようです。鼻腔の奥の粘膜を冷たい水で刺激することは冷水摩擦にも似て体を鍛えることになるらしい。喘息は私の50年余の宿痾です。最近、鼻腔洗浄により画期的に軽快しています。ハナクリーンというポンプ式の器具に生理的食塩水と抗アレルギー薬を入れて1日2回洗浄しています。鼻がいつもカサカサに乾燥するようになり、低気圧が来ない限り胸の圧迫感はなくなりました。喘息の3割は鼻アレルギーを治すことにより改善するといわれていますが、私はその3割に入っているようです。私の喘息は坐禅の進歩をずいぶん妨げてきましたのでこれからが本番と思っています。「結局は呼吸だ!」という禅僧もいるほどですから。

本誌26巻(2001年秋号)で「わたしの富士登山」を記しました。その時喘息持ちの私には携帯用酸素ボンベが大いに役立ちました。私は富士登山で精神が高揚したことを覚えています。高地の低酸素状態で宗教的雰囲気が高まるように思います。昔から行者が高山で修行するのはそれなりの理由があるようです。低酸素状態または低酸素から通常の酸素濃度状態に戻ると気持ちが高まるのではないかと思います。低酸素状態に対し身体が何らかの危機を感じ脳幹網様体のような脳部位が刺激を受け覚醒状態に入る可能性が推定されます。

オリンピックのメダリスト北島は低酸素トレーニングを受けたと言います。この設備は標高1500~3500m程度に相当する低酸素環境下で、宿泊とトレーニングの両方が可能だそうです。低酸素トレーニングでペダリングパワーは10%以上も増加したと記されています。このような訓練で精神的により強くなれる人とそうではなく反対にダウンしやすい人がいるようです。

筆者もこれに似た経験があります。自衛隊中央病院にいる時にジェット戦闘機の体験飛行をしました。戦闘機に乗る前に20人前後の訓練生と共に酸素がどんどん薄くなっていく大きな部屋に入れられました。その部屋にすわり戦闘機のパイロット用の酸素マスクをいつでも使用できるように肩にかけ、100から逆順に与えられたボードに数字を書いていきます。酸素がどんどん減るわけですから頭がボーッとして数字が書けなくなる人もいます。私の隣に座っていた人は突然首をうなだれてしまい作業ができなくなりました。別室からそれを見ている教官が「15番、酸素マスクをつけなさい」と拡声器で命じます。私はしかし最後のゼロまで数字を書き続けることができました。低酸素に対する耐性は個人差が強いようです。私は喘息にも拘らず、いや喘息で低酸素に慣れているせいか耐性が強かったようです。高山に登ると私のように精神的に発揚する人間と逆にへばってしまう人がいるようです。

ある研究によれば、坐禅中の酸素消費量は20~30%減少すると報じられています。坐禅による精神変調は低酸素状態に脳が反応していると考えることができそうです。

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