春なのに、だるい、眠れない、
やる気がでない!
プチうつ気分解消法

監修:貝谷久宣

キャズ 第428号:P34-37

 今、20代、30代の女性に急激に増えているプチうつ病。一見うつ病には見えず、症状も軽いと思われがちですが、実際は治りにくいのが特徴。治療が遅れることがないように、プチうつ病の正しい知識を身につけましょう。

うつの時間が短いので“プチ”性格の問題ではなく病気です

 プチうつ病は、正式には「非定型うつ」と呼ばれる病気。女性に多く、典型的なうつ病よりも治りにくいのが特徴です。
 いわゆるうつ病は、大うつ病ともいわれ、ほぼ毎日ずっとうつ状態が続きます。それに対し、プチうつ病は夜にだけ症状が出やすいので小うつ病とも。不安が根底にあり、パニック障害や対人恐怖症を併発することもあります。
 プチというのは病気が軽いからではなく、うつの時間が短いということ。適切な治療が大事なことに変わりはありません。
 周囲も自分も、うつだということに気づきにくく、本人だけが苦しんでいるようなプチうつ病は若い女性に増えており、潜在人ロはとても多いと考えられています。
 プチうつ病は性格の問題ではありません。ひとりで悩まず、専門の医師に相談しましょう。


@ 典型的なうつ病とは異なる

ブチうつ病の基礎知識


タ方になるとうつ気分が出てくる、気分の浮き沈みが激しいのが特徴

 昼間は元気なのにタ方になると不安感が強まってくる。よいことがあると気分が昂揚する一方、ちょっとした言葉にキレたり、傷ついて激しく落ち込みやすい。過眠や過食をすることが多い。体が鉛のように重く感じる……といったものが、プチうつ病の代表的な症状。一般に知られるうつ病とはさまざまな点で異なります。
 若い女性の場合、重いうつ病であることは少なく、ほとんどはプチうつ病。よい子タイプの人に多くみられ、思春期の頃から増えてきます。周囲からは気分屋とかなまけもののように思われがちですが、本人もカッーとしたあとや夜間などに自責の念や絶望感にさいなまれたり、つらい思いをしています。
 また、買い物やギャンブル、インターネットなどにハマって抑制が効かなくなる。急にどこか遠くへ行ってしまいたくなる。過食による肥満、パニック障害や不安障害などを引き起こすのも、プチうつ病の一形態。
 一見、軽い症状でも、軽いほどかえってガンコなのがプチうつ病のやっかいなところです。そして、本人や周囲だけでなく、医療機関でもこの病気の重要性をきちんと認識しているところはまだ少ないのが現状です。


A 性格や環境でわかる

病気になりやすいタイブ


几帳面、仕事熱心、八方美人、善良で真面目な人に多い

 プチうつ病になりやすいのは、いわゆるよい子タイプ。小さい頃から手がかからなくて、中高生の頃に学校を時々休んでいたような女性によく見られます。
 環境的な要因としては、共働きの核家族で親に甘える機会が少なかったり、家庭内暴力などでPTSDをもっている場合。父親と母親との関係では、母親から子どもの頃充分な愛情を注がれないと、父親との関係よりも影響が強く出るとみられています。
 また、母親もうつや不安症をもっているというような遺伝的要因も50%くらい関係があります。
 それらの要因をもつ人が、なんらかのストレスがきっかけで発症すると考えられますが、必ずしも原因がはっきりしないこともあり、一概にはいえません。
 プチうつ病の女性は、キレたあとで反射的に「ごめんなさい」とあやまったり、「自分はダメな人間」と落ち込んだり、対人恐怖症やパニック障害をかかえる人もよく見られます。いずれも根底にあるのは、欲求が満たされないことへのストレスや不安感ですが、この病気の人は一般に、抑制力や創造力など高度な能力をつかさどる前頭葉の血流が低下しています。症状はあくまで病気の結果として起こっているものだといえます。


B プチうつ病かも? と思ったら……

知っておきたい治療法


処方薬をきちんと服用し、日々を規則的に過ごすことが大切

 プチうつ病の治療は、薬物療法が中心です。そのさい、自分の病態をきちんと理解してくれる病院や医師を選ぶことが大切です。
 病院では、症状に応じて感情調整薬、抗不安薬、鎮静剤、抗うつ剤などが処方されるので、指示にしたがって服用してください。調子がいいからと勝手に飲むのをやめたりしないことです。現在は効きのよい薬がいろいろ開発されています。
 治療期間は人それぞれですが、2〜3年かかることもあります。薬物療法のほかには、認知行動療法も有効です。これは、人間関係をよくし感情をコントロールするためのトレーニング。たとえば「こんなことを言ったら相手を傷つけるのでは?」と考えやすい人の場合は、自己主張ができるようになるような練習をします。
 病院の治療以外でプチうつ病を改善するには、前頭葉の機能を高める瞑想がよいといわれるほか、香りを当てる香道は、集中力がつくだけでなくお香そのものに鎮静作用があるので大きな効果が期待できます。
 日常生活では、昼夜逆転しないよう規則正しく過ごし、昼間は太陽に当たること。そして、簡単なことでも具体的な目的をもって一日を過ごすことが大切です。


心療内科体験記

心療内科ってどんなところ?
ちょっと気になるあなたに代わって、
赤坂クリニックを受診してみました。


一般診療は保険適用、カウンセリングは実費

 初診受付をしたあと、問診票に記入します。内容は、名前や連絡先、現在の病状などを書く用紙が1ぺージ、「気分が沈んでいますか?」などのうつ状態自己評価票が3ぺージ、そして行動が認識できる質問シートの東京大学式エゴログラム、と盛りだくさん。ゆっくり考えながら記入できるので、自分の症状をきちんと伝えられます。
 その際、パニック障害などの具体的な自覚症状を書くと、さらにそれぞれの症状に応じた別の問診票にも記入することになります。いずれも記入に20〜30分かかります。
 次に診察室へ。先生は問診票に書かれた内容をチェックしたうえで、主に家庭環境や現在の生活、クリニックを受診しようと思った契機について質問をされます。
 最後に採血をして体の病気をチェック。処方箋が出て初診はおしまいです。初診料は3割負担、先生の予約料、採血など検査料も含め合計で約8000円。その後の通院は、最初のうちは1〜2週間に1回、症状に応じて間隔があいていきます。症状によっては毎週通院を求められることもあります。