社会不安障害
静かに急増する『SAD』ってなんだ?

ただのあがり症かと侮っていたら、知らないうちにオレらも立派な病気!? 最近、なにかと新聞広告やらで目につくコレって、恋愛や仕事にも大影響なんだと〜!?

もしかしたらオレも… 単なる性格の問題じゃない!?

 親愛なる週プレ読者諸君!! チミたちは社会不安障害 (Social Anxiety Disorder.以下、SAD)という病名を知ってるか? なぬ、知らない!? 日本国内だけでも300万人以上
*の患者がいるといわれてるのにぃぃぃぃ!!! ま、週プレもよく知らないんだけど。てワケで、東京クリニックの伊澤純院長、やさしく教えてくりにっく!!

 「SADとはプレッシャーのかかる状況に置かれたり、そんな状況を想像しただけで不安な気持ちになり、赤面したり汗をかくなど身体症状が現れ、さらには次第にそうした場面を避けるようになるなど日常生活にまで支障をきたしてしまう状態を指します」

 難しい? なら、代表的な例として有名私立大学に通うSAD患者Nクン(21歳)のケースで説明してみるッス。

 Nクンは子供の頃から人前で話すことにあまり抵抗はなかった。しかし、高校2年の時、吹奏楽部のコンサートマスターになり、全校生徒を前にした演奏会の際に曲目紹介をすることに。だが本番でナゼか緊張で頭が真っ白になり、ガタガタ震えてなにもしゃべれなくなる。そのことをヒドく恥ずかしく思ったNクンは、以降、人前でしゃべれなくなった…。

 “授業中にみんなの前で発表するとムチャクチャ緊張し、学校に行くのが嫌になった”とか“結婚式のスピーチで極度にプレッシャーを感じてしまいドタキャンした”なんてパターンもあり、多くの場合はキッカケがあって発症するんだと。けど、ただの恥ずかしがりとSADの違いって…? 前出の伊澤院長はこう説明する。

 「あくまで本人が困っているか否か。困っているならSADで、そこまででなければただの恥ずかしがりです」

 う〜ん、なんか曖昧ですね。どーも明確に分けることは難しい病気みたい。それゆえ、「性格の問題」と気づかず治療しない人が多いんだって。しっかし、SADは性格のせいなんかではなく、「脳内にあるセロトニンなどの神経伝達物質のバランスが崩れてしまうことで発症すると考えられている」(伊澤院長)、れっきとした病気。しかも放置しているとトンデモないことに!?

彼女がいないのもSADのせいだった!?

 SADやパニック障害の権威で、医学博士の貝谷久宣先生にその怖さを語ってもらったぞ。どぞっ!!

 「この病気は自然に治らないんです。それどころか、うつ病やアルコール中毒、またはパニック障害など、より重篤な他の精神障害を併発する可能性があり、まさに“心の病の入口”と言える。ひきこもりや二ートといった人間の何割かもSADの可能性がある」

 3月17日付の毎日新聞夕刊でも記事で「親が『うちの子は働かない』と心配して連れて来る子の半数はSAD」(山田和夫・東洋英和女学院大教授)なんてコメントを掲載、二ートとSADの関係性を強調してたしなあ。それに心の病を引き起こす連鎖も怖い。週プレもちよっとあがり症のきらいがあるから…。

 「心配なら、この社会不安障害評価尺度(下の表)を使って調べてみるといいですよ」(貝谷先生)

 コレですね。とりあえず軽〜くチェックしてみますかね…。

 「その前に聞きたいことあるんだけど。キミ、彼女いる?」(貝谷氏)

 彼女!? いないッスよ!! 女の子とまともにしゃべれないんすから!! なんで今、そんなどーでもいいコトを…(ドキドキしながら、チェック開始)。

 え〜っと、1の「多くの人の前で話す」はかなり緊張するから高度で3点と。時々、逃げるのは2点かな。あと、人前に出るとケッコー赤面するから2点と…全部を総合すると52点か。ん? オレ、軽いSADじやぁぁぁぁん!! ど、ど、どーしたらイイんすか!?

 「ふふ、やっぱりね。キミみたいに異性とうまく付き合えなくて、どうしても恋人ができない人もSADの疑いがあるんですよ。いわゆる異性恐怖というヤツだね。でも安心して。今はSSRIというよく効く薬なんかもあるから。女のコと絶対に付き合えないと言っていた男のコだって、明るくなって彼女ができたりもしたんだ」(貝谷氏)

 うお――!! 彼女っすか〜!! 想像しただけで、あ、汗がタラ〜…。

 「とにかくSADは放っておくのが一番良くない。その状態が続いて、うつ病になったら重症ですからね。だから、これを読んでちょっとでも思い当たるなら病院に行くことをオススメします。はっきり言ってこの病気を治せば180度人生が変わりますよ」(貝谷氏)

 もちろん、内気な人がすべてSADだというワケではないが、その可能性は十分にある。彼女がいないそこのチミも悩む前に病院に行ってみては!?

* アメリカの学会が94年に発表したSADの生涯有病率3〜13%という値に基づき、日本の総人口1.27億人より試算された数字

プレイボーイ 第41巻13月号 P60-61, 2006