社員の中にこんな症状の人はいませんか?

最近増えている


『プチうつ病』の症状&対策読本

医療法人 和楽会 貝谷久宣

経理WOMAN 2006年12月号 p78-82

 最近、女性たちの間で「プチうつ病」が増えています。プチうつ病とは、うつ病にくらべて単に症状が軽いというわけでなく、うつになる時間が短いものをいいます。一応、日常生活はこなせるため、周りも自分自身も気付きにくく、一度プチうつ病になってしまうとなかなか治りにくいのが特徴です。そして、そのまま放っておくとパニック障害などを引き起こしてしまう恐れもある、怖い病気なのです。

 そこでここでは、プチうつ病の基礎知識とその予防について解説していきます。

 そもそもうつ病とは、慢性的に抑うつ気分が続く病気のことです。大うつ病ともいわれ、「ほとんど1日中、ほとんど毎日2週間以上続く抑うつ気分」という状態が医学的な診断条件となっています。

 一方、プチうつ病は抑うつ状態が毎日ずっと続くわけでなく、1日のうちのある時間帯、たとえば夕方から夜にかけてだけであるとか、週に1〜2日だけであるとか、一定の時間だけ不安になるというものです。この状態が本格的に発展すると、いわゆる非定型うつ病と呼ばれるやっかいな病気になるのです。

 プチうつ病の精神的な特徴としては、気分の浮沈みが激しくなることが挙げられます。楽しいできごとに反応して気分が明るくなるのなら良いのですが、気分が落ち込むことの方が多く、突然わけもなく涙がぽろぽろ出たり、寂しくなったり、自己嫌悪に陥ったり、他人がうらやましくなったりもします。これを気分反応性というのですが、感情の起伏が激しくなるのです。

 些細なことで突然怒り出す場合もあります。カーっとなってキレるという状態です。これはアンガーアタックと呼ばれ、この症状が出た後、ほとんどの人は自己嫌悪に苛まれて、さらに落ち込んでしまうのです。

 また、他人の言葉に過剰反応してしまうこともあります。たとえば、職場の人などに「今日、〜を間違えたよね」などと軽く指摘されるだけで、はっきりと拒絶されたわけでなくても、ひどく落ち込んでしまったりするのです。これを拒絶過敏性といい、落ち込んだり、怒ったり、引きこもったりなどの社会的障害を引き起こすきっかけとなります。

 精神的な症状のほかに、身体的にもいくつか症状が表われます。一つ目は、過食です。夜になると甘いものが欲しくなる人が多く、1ヵ月に2〜3キロ太ってしまう人も少なくありません。そして、太ったことに対しても落ち込んでしまい、悪循環に陥ります。

 二つ目は、過眠です。医学的には「昼寝も含めて1日10時間以上の睡眠を週に3日以上とる場合」を指しますが、どれだけ寝てもまだ眠い状態が続き、気分が憂うつになっていきます。

 さらに、決定的な非定型うつ病の身体的症状として、鉛様麻痺が挙げられます。手足に鉛を付けたように体が重くなり、全身が倦怠感に包まれるのです。

 しかし、このような症状は見られるものの、日常生活をこなせる場合がほとんどなので、プチうつ病にかかっている大部分の人は、自分が気分屋なだけだと思い込んでいて、病気だとは気付いていないケースがほとんどです。周囲の人たちからも気付かれにくいので、なかなか医療機関を訪れることはありません。

 ですが、このプチうつ病を放っておくと、非定型うつ病を引き起こし、後々やっかいなことになってしまいます。

 さて、ここまでプチうつ病についての基礎知識について説明してきましたが、日頃の自分を振り返ってみて、意外と思い当たる部分も少なくないのではないでしょうか。

 次にプチうつ病のチェックシートがありますので、さっそくチェックしてみましょう。合計で40点以下なら正常、60点以上だとプチうつ病の恐れがあります。もし自分がプチうつ病かも知れないと思ったら、早めに専門家に診てもらいましょう。



 そもそも、プチうつ病にかかりやすい人にはどのようなタイプが多いのでしょうか。

 ひと言でいうと、小さい頃に“よい子”だった人が多いように思います。ここでいうよい子とは、手間が掛からず、しっかりした子のことをいいます。

 また、環境的には、親にしっかり抱きしめられてかわいがられて育っていない人が多いようです。これを動物的愛情欠乏症というのですが、情よりも理屈で接され、育てられた人に多く見受けられます。さらに、3人姉妹の真ん中や、兄弟に障害者やぜんそくなどの慢性病を持った人がいて、親の愛が片方に傾いている場合も同様です。

 性格的には、人の顔色をうかがったり世間体を気にしたり、気を使い過ぎるタイプです。また、自己主張するのが下手な人にも多く見受けられる傾向があります。


 プチうつ病の予防と対策として、まずは自己主張を上手にできるように練習することが重要です。日頃から自分の気持ちをきちんと伝えて、考えを表明できるようにしましょう。

 ポイントは、相手の気持ちを壊さないで自分の気持ちを伝えるということです。言葉のいい回しやタイミングなど難しいですが、それを上手に伝えるようなスキル、そして生きる知恵を身に付けることが大切です。

 比較的軽度のプチうつ病の場合は、友達だったり仲間だったり、良き相談相手を見付けて、自分を理解してくれる人に話を聞いてもらい、助言してもらいましょう。周囲から気に掛けてもらうと感じることで快方へ向かうことも少なくありません。また、自分の趣味に打ち込むのも効果的です。

 それでもつらかったり、だるいと思ったら、医療機関に足を運ぶようにしてください。その際は、カウンセリングだけではなくて、専門家の先生に診てもらうことが重要です。

 もし、自分ではなく身の周りにプチうつ病の人がいる場合、自分の家族であれば「やさしく、厳しく」接する、つまり言葉はやさしく態度は厳しく接することが大切です。

 会社の人などの場合は、「温かく、やさしく」これに尽きます。その人のことを理解してあげる姿勢を見せ、「がんばって」と励ますようにしてください。ここが通常のうつ病と違うところです。

 そして最後に、「人生はあなた1人じゃない」ということを忘れないでください。

 プチうつ病は、きちんと治療すれば元気になります。1人で悩まずに、家族や友達、そして専門家に相談しましょう。