閉じる

初診予約

心療内科・神経科 赤坂クリニック

Web予約

電話予約

03-5575-8198

横浜クリニック

Web予約

電話予約

045-317-5953

なごやメンタルクリニック

Web予約

電話予約

052-453-5251

※必ずご本人様よりお電話ください。

※受付時間をご確認の上、お電話ください。

※初診の方は、こちらをお読みください。

※発達障害専門外来の予約は、赤坂クリニックの電話のみの受付となります。

再診予約

心療内科・神経科 赤坂クリニック

Web予約

横浜クリニック

Web予約

なごやメンタルクリニック

Web予約

和楽会オンライン心理相談室

Web予約

※最終来院日から半年以上経っている場合は、お電話でご予約ください。

※発達障害専門外来の予約は、赤坂クリニックの電話のみの受付となります。

コロナ禍の不安症臨床ーわれら、かく闘えり(その2)ー(ケセラセラvol.104)

医療法人和楽会 心療内科・神経科 赤坂クリニック 院長 坂元薫

今回は、前回に引き続いて、診療の現場で私が見てきたコロナ禍がもたらしたメンタルヘルスへの影響、特に不安症(パニック症、社交不安症)の臨床はどのような影響を受けたかについてお話して行きたいと思います。
コロナ禍で、不安症患者に限らず多くの人が不安に陥ったことは言うまでもありません。また不安症の方に限らず通院されている患者さんの多くは、ロックダウンの不安、恐怖を口にし、通院不能となることの不安を口々に語られましたが、当然のことでしょう。長期処方を求める声も増えるようになりました。
当科は、超都心部に位置するため通院されている方で近在の方はごく少数であり、その大半は電車などの公共交通機関により通院されていて、そうした公共交通機関の利用での感染の危険を懸念する方の中には通院を自家用車に切り替える方もおられました。またやや遠方からの通院者、特に他府県在住者や高齢者や持病がある人を中心に電話診療を希望する方が急増することとなったわけです。
健康維持や治療のための通院は決して不要不急の外出ではないのですが、やや過剰に外出自粛をされてしまった方も電話診療を希望されることとなりました。2020年4月、5月の筆者への約2000回の受診のうち約300回はそうした電話による再診でした。ただ個人的に聞き及んだ他施設の電話再診実施の実態に比べれば、当科では電話再診によらず通院を継続した方々の比率がかなり高かったことに驚くべきであったのかもしれません。なお2021年1月からの2回目の緊急事態宣言の際には、こうした電話診療を希望される方は1回目に比べると随分と少なくなった印象があります。

実際の通院にせよ電話再診にせよ、不安症のうちパニック症や社交不安症患者でCOVID -19感染への不安が契機となってその病状が悪化したと思われる人はほとんどいなかったのが印象的でした。
あるパニック症と双極II型障害が併発した30代の団体職員の男性患者さんは、「新型コロナウイルスが怖くて怖くて仕方がない」とフェイスシールドとゴーグル、ビニール手袋を装着しての受診でしたが、感染恐怖によりパニック症が悪化したり双極性障害が悪化することはありませんでした。
COVID -19感染への不安が契機となって、不潔恐怖や洗浄強迫を悪化させる強迫症OCD例が増加することは容易に予想されるところです。実際、強迫的な手洗いの回数が若干増えたOCD例を数名経験しましたが、通院患者の中に占めるOCD例の比率があまりに低いため筆者には、COVID -19感染拡大状況がOCDの病状に与える影響の全体像を語ることはできません。

Matsunagaら(1)は、緊急事態宣言下の4月にOCD専門外来を受診した60例の寛解OCD患者ならびに部分寛解OCD患者の症状変化について調査を行っています。
それによると外出自粛により元来の症状の軽度悪化を認めた症例が散見されるものの、COVID -19感染に関連した汚染、洗浄系の症状が新たに出現したり、悪化・重症化したと思われる症例は10%に満たないことと、主体症状が確認から汚染へと変遷した症例は見られなかったことなどが報告されています。

COVID -19感染症拡大は感染症罹患への不安をもたらした以外に、環境への多大な変化をもたらしました。不要不急の外出自粛や休業・休校要請などがメンタルヘルス全般に与えた影響も憂慮されるところですが、不安症患者の病状の影響はどのようなものであったでしょうか。
2020年4月に発出された第1回目の緊急事態宣言下では「接触8割減」が施策の主方針となり、働き方改革などにより緩徐に進行していたテレワークが一気に浸透し、それまでの満員電車が嘘のように解消され、テレワーク実施企業では人の姿はまばらとなりました。筆者の元を訪れるパニック症の人々は、口々に交通機関を利用する際の予期不安や広場恐怖の緩和を喜び、また上司や同僚に会う頻度や対面会議も激減したことで対人緊張の緩和を喜ぶ社交不安症の方が圧倒的に多かったのが強く印象に残りました。
また不安症の専業主婦は、テレワークで終日自宅に夫がいることで病状を悪化させるケースはほとんど見当たりませんでした。

図1のように過去5年以内に初めてうつ病と診断され1ヵ月以上通院した成人464名を対象にしたWEB調査(インテージヘルスケア社、2020年9月25日~10月1日)では、その7%がむしろストレスが減ったと回答しています。その理由として「外出する必要がなくなったため(66%)」、「人と会う機会が減ったため(66%)」「一人でいられる時間が増えたため(56%)」、「通勤がない、または通勤することが少なくなったため(53%)」、「対面でのコミュニケーションが減ったため(50%)」などとなっています。
これはうつ病の既往のある方々を対象として調査ですが、このようにストレスが減ったことで社交不安症の方は一時的にせよ病状が軽快した方が少なくなかったことが理解できます。

2020年5月下旬に第1回目の緊急事態宣言が解除となり、徐々に外出制限が緩和されテレワーク実施企業が減少し、元来の出勤に戻りつつあるところでもそれらの不安症の人々で大きく病状を悪化させるケースはほとんど見られなかったように思います。

次回は、コロナ禍でストレスが増したと感じている人々のメンタルヘルスをめぐる問題についても検討して行きたいと思います。

文献
(1) Matsunaga H,et al:Psychiatry and clinical neuroscience 2020, 74;565

ブログ記事一覧