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痛みの声を聴け 後篇

 三例目は、生命科学者柳沢佳子の原因不明の痛みである。

それは四十歳で子宮摘出術を受けた数週間後から現れる。めまい、頭痛、吐き気、腰痛が同時に襲い、この症状はその後繰り返し起こった。いろいろな医療機関をたずねるが原因は判らない。この場合も、痛みは彼女が創っているかのように言う医師がいる。彼女は痛みやつらさを短歌に詠み、「詠うことは生きることであった。詠わずにはいられなかった」と述べている。

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なす術の なき苦しみを 洗うごと 桜は吹雪く 白きメシアよ

苦しみに 在り果つもまた 一瞬の 遊びならず 雪の音聴く

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 いのちの声が聴こえてくるようだ、という自身が歌人でもある著者の感想がある。

生きかわり 死にかわりつつ わが内に 積む星屑に いのち華やぐ

苦しさの 中にとびこんだら 苦しさが 消えて生きる ことだけが残った

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 遺伝の研究者である彼女は、宇宙のすべてと同じく、自分も星の子であり、しかも四十億年近いいのちの連続の一瞬を生きているのをはっきり自覚している。生きる苦しみを無条件に受け入れたとき、苦しみは浄化されるのだ。

 他にも胸を打つ苦痛の例が挙げられているが、著者の痛みについての洞察が比類ないのは以下に述べる点にある。

 ホスピスの創始者シシリー・サンダースは、がん患者の経験する複雑な苦痛を理解するため、身体的苦痛、精神的苦痛、社会的苦痛、さらに霊的苦痛が全人的苦痛を構成するのだとし、患者を援助するためには総合的、全人的アプローチが必要になることを説いた。

 

 著者は、緩和医療の教科書に図示された四元化された、要素別痛みの集合にすぎないような概念化に異を唱える。

痛みは身体と社会の壁を貫く。身体的痛みはそのまま霊的痛みにまで達する。身体が痛みに貫かれると精神も社会も貫かれ、霊も貫かれる。痛みが全人的要素に分別されるのではなく、全人的要素を痛みが統合するのである。痛みの本質は痛みが身体と精神と霊を全人化することにある。

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 麻酔科医として数多くの苦痛と死を見守り、痛みに対峙してきた著者は多くの表現者による昇華された痛みを観た。そこには、痛みを透明化する不思議な力があるのを知った。そして彼もまた歌を詠むことによりその想いを吐露している。

麻痺の手に 残る力で ゆび言葉 わが掌に さよならの文字

草萌ゆる 阿蘇の裾野を 駆け抜ける 風よ外科医は 「いいよ」と言ひぬ

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