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マインドフルネスの臨床効果と脳科学⑯ 慈愛の瞑想再訪(ケセラセラvol.110)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

「第93回 ② すこし思いやりの気持ちが持てるようになりました」の項で慈愛の瞑想のことを書きましたが、令和3年12月の第8回日本マインドフルネス学会で慈愛の瞑想のシンポジウムで講演しましたので、その内容を追加します。


慈愛の瞑想の説明は表に示しました。東京マインドフルネス・センターでは25分の瞑想中、最後の5分間は慈愛の瞑想を行います。

まず初めに、東京マインドフルネス・センターへマインドフルネスに訪問した人達の慈愛の瞑想に対する感想をアンケートでお聞きしたのでその結果について図に示します。46人にアンケートをとらせていただきました。そのうち慈愛の瞑想を行った回数は、20回までが約70%、50回までは約10%、そして50回以上の人が約20%でした(図1)。
初めて慈愛の瞑想をするよう指示されたときの、素直にやる気持ちになった人は約6割で、さすがにマインドフルネスを志す人だと思いました(図2)。
慈愛の瞑想に対する抵抗感はかなり多くの人が持っていましたが、これは初心者が多かったためと、対象を選ぶときの迷いも含まれていると考えられます(図3)。

しかし、多くの人は瞑想が終わる頃には抵抗感はずっと少なくなっているものと考えられます(図4)。抵抗感がなくなった理由として次のような意見が見られました:対人不安が減った;自分に優しい気持ちになれるようになった;一人ではないと感じた;自分を許せるようになった;嫌いな人にも自分と同じように悩みがあるのだと思うようになれた。
慈愛の瞑想で祈る時に戸惑う対象は圧倒的に“嫌いな人”でした(図5)。その理由として挙げられているのは:嫌いな人を思い出すことさえいや;嫌いな人に慈愛を送るのはうそつきのように思う、などでありました。嫌いな人に慈悲の瞑想を送るのを避ける人は、時間とともに減少していくことを筆者は経験しています。3か月もやっていると自然に嫌いだった人に慈愛の瞑想が送れるようになっていきます。これは脳内過程で考えますと、慈愛の心を育てる島皮質の活動性が高まり、怒り中枢である扁桃体の活動性が低下します。しかし、社会生活の場面から考えると、マインドフルネスをするだけで嫌いな人が嫌いではなくなっていくというのはすごいことですね。嫌いな人に祈れないことはごく一般の平凡人に多いですが、自分の幸せを祈れない人は多少とも病理が絡むことが多いです。一般には、古典的なうつ病の人は自分に慈愛の瞑想をすることが困難ですが、うつ病の軽快と共に自分に対する慈愛の瞑想が出来るようになっていきます。慈愛の瞑想はうつ病の特効薬です。
祈りの対象を選ぶときにイメージがはっきり浮かぶのは、やはり自分自身と好きな人でした(図6)。

祈りの対象のイメージがはっきりと出来なかった対象は中立的な人が最も多かったです(図7)。その理由として:嫌いでなければ好きになってしまう;パッと思い浮かぶのは好意的な人ではないかと考え込んだ、などでした。
最も祈りたいと感じた対象は好きな人と自分自身でした(図8)。
このように見てきますと、慈愛の瞑想で祈りを送る人を決めることは、自分の人間関係を改めて考えるよい機会になると考えられました。瞑想により落ち着いた気持ちで自分の日常生活を見つめ、新しい良き人間関係が出来ていく出発点となることが期待されます。

最後に、慈愛の瞑想による自分自身変化があったかどうかを問う質問には半数以上の人があったと答えました(図9)。その内容は:心が落ち着いた;人に憎しみを抱かなくなった;相手の立場を考えられるようになった;自分を受け入れられるようになった;自分を大切にし、長生きしたいと思うようになった;瞑想直後は優しい気持ちになれた、などといったものでした。
多くの人に慈愛の瞑想に対してポジティブな感想を持っていただきました。その内容は:気持ちが穏やかになり、自己肯定感が高まった;自分の周囲を受け入れられるようになった;対人不安が減った:人の幸せを祈る事は、自分の為になる大切な事だと思いました;慈愛の瞑想をする前まで「幸せになりたい」と思いもしなかったが、瞑想をしたことで「自分が幸せになりたい」と思うようになった;慈愛の瞑想で人とのつながりを感じることができ、暖かいきもちになれるので、好きです;豊かな充実した人生の希望が出た、などでした。

さて、慈愛の瞑想の効果の研究をまとめたメタ分析研究を見てみますと、不安に対する効果量は0・42、抑うつに対する効果量は0・62で抑うつに対する効果が上回っていました(Kirby,2017)。慈愛の瞑想の抑うつに対する効果の心理学的機序を調べた研究では、抑うつ気分の軽快は自己批判が減少することによるという結果がでました(Johnson et al., 2018)。また、文献によると、反芻思考の激しい(要するに雑念が多すぎる)うつ病患者は呼吸瞑想が適応で、そのような患者は慈愛の瞑想の効果が薄いので、まず呼吸瞑想をやってから慈愛の瞑想をするとよいと言われています。(Graser & Stangier, 2018)

以上のように、慈愛の瞑想は驚くほどの効果があることを理解していただけたと思います。どうぞ皆さん短い時間でできる瞑想ですから、家でも乗り物の中でもやってください。あなたの人生がどんどん明るくなっていくと思います。

文献
Kirby JN et al., , Behav Ther. 2017, 48(6):778-792
Johnson SB et al., Suicide Life Theat Behav. 2018, 48: 160-168
Graser J & Stangier U, Hav Rev Psychiatry 2018, 26: 201-215
アンケート研究に関して、回答いただいたマインドフルネス受講者を始め、アンケートをまとめていただいた東京マインドフルネスセンターの野田昇太君と本田由美さんをはじめ皆さんに感謝します。

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