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本の紹介「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」第1章「MARCHに合格―AIはライバル」(後半)(ケセラセラvol.112)

医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 岸本智数

1月になり寒さも厳しくなり、先日は10年に一度という寒波が日本列島を襲いましたし、相変わらずの最低最高気温の落差で体調を崩しやすい気候が続いています。
春まであと少し、皆さまどうぞ体調に気を付けてお過ごしください。

さて、前回から引き続いて、数学者の新井紀子氏が著者で東洋経済新報社から出版されている「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の第1章の後半を紹介します。人工知能研究所であるOpenAIが、2022年11月に公開したChatGPTというチャットボットが、今まさに世界中で話題になっています。
私も早速ChatGPTを使ってみましたが、その自然な返答内容に驚きました。ChatGPTのまるで人間が答えているような流暢な言葉遣いは本当にすごいです。今までもGoog le翻訳やDeepL翻訳などいろいろな翻訳AIを使ったことがありましたが、文章として自然で違和感のない返答は目を見張るものがあり、Googleが緊急事態宣言を発するに至ったのもわかります。私も新井氏の本著を読んでいなければ、そのすごさに「AIが人間を越えた」と思ったでしょう。
しかし、どんなに流暢な文章を作り出したとしても、AIが自分で考えて話しているのではないですし、その内容が正しいかどうかは別問題で、実際事実とは異なる内容をあたかも正しいことのように返答することもあります。GhatGPTについてはあまりにも流暢であるがゆえに、その点に十分気を付けて、最終的には人間がファクトチェックなど内容について吟味し訂正する必要が、現時点ではあります。

第1章の後半ではまず、AI進化の歴史について解説されています。世界で最初にAIという言葉が登場したのは、1956年アメリカ東部のダートマスで開催されたワークショップだったそうです。そこから、1950年代後半から1960年代まで第1次AIブームが続きました。推論と探索により問題を解く研究がなされ、複雑な迷路やパズルを解くことに研究者は熱中しましたが、推論と探索では迷路やパズルが解けただけで、病気を診断し治療法を提示したり、社会情勢を分析してヒットしそうな新商品を提案するといった、複雑な現実の問題を解決することはできませんでした。チェスや将棋のルールのある限定された条件下では並外れた計算力で力を発揮できても、条件を簡単には限定できない現実の問題には無力だったのです。1980年代に入り到来した第2次AIブームの時期には、コンピューターに法律や医療などの専門的な知識を学習させ、ある問題に特化したAIを作るというエキスパートシステムが試作されました。
しかし、このシステムはすぐに壁にぶつかりました。法律問題は単に法律や判例だけの知識だけではなく、社会の常識や人間の感情なども含めて総合的に判断しないといけませんし、実臨床では「お腹がシクシク痛む」と訴えても、お腹が胃なのか小腸なのか大腸なのか、内臓以外のものなのか、定義のはっきりしないものには対応できませんでした。また、常識などの文字になっていない知識や専門書など文字になっていない知識は、あらかじめ体系化し言語化してコンピューターに学習させないといけません。こうして第2次AIブームも下火になりました。

1990年代半ばに検索エンジンが登場し、インターネットが爆発的に普及し、ウェブ上に大量のデータが蓄積されました。そこに機械学習というアイデアに注目が集まり、2010年代半ばから現在の第3次AIブームに至っています。
今までは、人間の考えは論理に基づいていると考えられてきましたが、その論法ではなぜ犬と猫を見分けられるのか、イチゴを見たときにイチゴとなぜ思うのか、うまく説明できませんでした。辞書でイチゴの項目を読んでもわかるようにならず、実際にイチゴを見てこれがイチゴだと誰かに教えてもらうということを、AIでもできないかという発想が基だそうです。子供はイチゴを10個くらい見れば、イチゴをイチゴとわかるようになりますが、AIにはこの柔軟性がなく、最低でも万単位、場合によっては億単位のデータが必要です。
AIがイチゴを認識できるようにするためには、イチゴも含まれたさまざまな画像を大量に集め、イチゴが映っている画像にこれがイチゴだよというラベルをつけ、それぞれにイチゴと判断する上でどの程度重要な要素であるかの重みをつける作業を熟練のプログラマーが手作業で行っていました。これがAIにとっての教師データとなります。
この作業を画期的に飛躍させたのがディープラーニングという手法だそうです。十分な量の教師データを準備すると、これまで人間が手作業で試行錯誤していた部分も含めてAIがデータに基づき調整し学習します。音声認識や検索のためのAIも、年代や方言などさまざまな人が話す言葉をオペレーターが復唱することで、教師データが増えていきますし、AIは文章を理解することができないのでキーワードを選択しそのキーワードが多く含まれる記述を探し返答します。こういったことがコールセンターに導入されたAIやインターネットに接続されたAIを通じて行われ、膨大な教師データをもとにAIは学習しているそうです。

長い歴史の中で新しい技術の登場により仕事がなくなることが繰り返されてきました。駅の改札は自動改札に変わり、銀行の窓口もネットバンキングが主流となっています。株取引はAIに取って代わられつつあるそうです。2016年にはローンの与信審査を完全に自動化した銀行も現れました。新井氏が行った日本人の読解力についての調査で、日本の中高生の多くは、英語の単語や世界史の年表、数学の計算などの知識は豊富だけれども、中学校の教科書レベルの文章を正確に理解できないということが分かったそうです。
AIに多くの仕事が取って替わられても、AIが替われない仕事が生まれる可能性はあるものの、意味を理解することが苦手なAIが対処しきれない仕事は、意味を理解することが苦手な人間にとっても苦手である可能性が非常に高いことを意味すると、新井氏は警鐘を鳴らしています。

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