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「うつ」の診断について(ケセラセラvol.81)

医療法人 和楽会 横浜クリニック 院長 海老澤 尚

 

当院にはいわゆる「うつ」の方も多く通院しておられます。仕事や学業・家事に支障が生じた方、休まざるを得なくなった方もおられます。「いわゆる『うつ』」という言い回しをしたのは、日常会話で使われている「うつ」という言葉が、医学的診断名の「うつ病」が指すものと重なってはいますが、同じではないからです。「うつ状態」「抑うつ状態」という言葉も、「現在気分がうつの状態にある」という現象を指しているだけで、「うつ病」と同じではありません。「うつ」「うつ状態」「抑うつ状態」の原因には様々なものがあり、そのうちの代表的なものの一つがうつ病なのです。

「うつ」という、日常的な気分の状態を描写するために使われる言葉をそのまま病名に取り入れたため、疾患の特徴は理解しやすいものの、混乱しやすくなった面もあります。「誰でも落ち込むことくらいある、うつ病は病気ではない、気合で治せ」という誤解(このように考える方は現在では少ないと思いますが)は、誰にでもある日常的な一過性の気分の落ち込みと、うつ病という疾患とを同一視しているために生じるのではないかと思います。確かに境界があいまいな場合もありますが、就労・家事・勉学などの日常・社会生活に長期間支障が出るほどのうつ病と、日常的な気分の落ち込みとは区別されるべきでしょう。


「うつ」「うつ状態」の場合、その原因によって対処法が異なる場合があるので、注意深い診断が重要です。「腹痛」という現象があっても、その原因疾患は炎症・潰瘍・腫瘍・寄生虫・感染症など様々であり、その原因によって治療法が異なるのと同様です。

 

【うつの症状】

「うつ」が出現する疾患で代表的なものには、うつ病、双極性障害などがあります。統合失調症の経過中に生じることもあります。

うつ病の場合も双極性障害の場合も、「うつ」の時には、気分が落ち込んだり、元気な時には関心を持っていた仕事・家事・勉学、スポーツ、読書、テレビ鑑賞、友人付き合いなどを楽しいと思えなくなったり、いつも通りこなせなくなります。疲労を感じる、意欲がなくなる、思考や会話のスピードが落ちる、無口になる、イライラする、物事を決められない、周囲に申し訳ないと思う、自殺を考える、眠れない、食欲がわかない、などの症状も出現します。便秘・下痢、性欲減退、めまい、頭痛・頭重感、体の痛みなど身体の症状を伴うことも少なくありません。気分の落ち込みはあまり自覚しないが、いつも行っている活動に興味を失ったり、倦怠感を感じて「体が重くて動けない」と感じることもあります。

 

【DSM診断基準】

DSM -5(米国精神医学会診断ガイドラインの最新バージョン)ではこれらの症状が2週間以上続いた場合にうつ病と診断するとしています。なぜ2週間「以上」なのかというと、ショックなことや悲しい出来事があった後に気分が落ち込んで活動性が低下し、その後短期間で回復することは誰にでもある普通のことと考えられるからです。

ただし、1週間でも10日間でも3週間でもなく、なぜ「2週間」で線を引くのかという点については、明確な根拠に乏しいようです。1週間では「一時的な気分の落ち込み」も多く含まれてしまうでしょうし、1か月にすると、診断基準を厳格に適用した場合「うつ状態が3週間続いているが、まだうつ病の診断基準に達していないので治療を始められない」ことになりかねないからでしょう。もちろんこのような「頭の固い」DSM診断基準の運用は、作成者たちの本意ではないでしょうが。

DSM診断基準は、どの治療法がより有効性が高いのか、疾患の原因は何なのかなどを調べる研究にも用いられます。ある治療法は「うつ」が2週間続いた被験者に用いられ、別の治療法は「うつ」が4週間続いた被験者に用いられた場合、効果に差があってもどちらの治療法が有効か比較するのは困難になりますので、このような「割り切った線引き」も必要なのです。

 

世界中の診療、研究で用いられる診断基準なのに、大ざっぱに思えませんか?糖尿病での血糖値、高血圧での血圧のように明快な基準はないのでしょうか?残念ながら現在は存在しません。むしろそのようなはっきりした基準がない中で、世界中の精神科医が、同じ病名ならほぼ同様の疾患を想定できるように作られたのがDSMです(精神科領域では、WHOによる国際疾病分類ICDもDSMとほぼ同様の考え方で作成されています)。

ですから、今後うつ病や双極性障害の原因が判明したら、診断基準も変わることでしょう。現在は同じうつ病として診断されている疾患が、異なる疾患に分類されていくかもしれませんし、現在違う病名がついていても共通のメカニズムが明らかになってくる場合もあるでしょう。現在のDSM診断が曖昧でいい加減なものに見えてきますが、少なくとも現在の精神医学の到達点では、日本の、そして世界の精神科医が同じ病名ならほぼ同様の疾患を想定できるようベストを尽くしているのがDSMなのです。従ってDSM基準は重要ですが、万能ではなく、批判もあります。(英国の首相だったチャーチルは「民主主義は最悪の政治形態といえる。今までに試された他の全ての政治形態を除いては」と言ったそうですが、DSMという診断基準も同じようなことが言えるかもしれません。ちょっと言い過ぎかな?)

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