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『嫌われる勇気』の紹介 -その2-(ケセラセラvol.81)

医療法人 和楽会 赤坂クリニック 院長 吉田 栄治

 

前回に引き続き、『嫌われる勇気』という本についてもう少し紹介したいと思います。この本は、過去のトラウマなどの原因によって今の症状があるというフロイト的な「原因論」を否定し、いま現在のこの症状は何らかの目的があって存在しているという「目的論」の立場に立つアドラー心理学について述べられた本でした。アドラー心理学を信奉する哲人と、人生に悩みを抱く青年の対話という形で物語はすすんでいくのでした。

 

アドラー心理学について

アドラーについては、私も若かりし頃、いくつか本を読みまして、なるほど…と感化されるところもありましたが、実際の診療での活用は、なかなかむずかしい面があるなと感じていました。何らかの「目的」があって症状が作り出されているという考え方は、周囲の者からしてみると、ともすれば一種の仮病なのかという発想につながってしまう場合があり、少々危険な一面を含みます。ですから、この本の中でも哲人は、種々の症状は決して仮病ではないということ、本人が感じている不安や恐怖は本物なのだということを強調しています。

アドラーの「目的論」をカウンセリングに応用していこうとする場合には、安易な意味づけは厳に慎みながら、相談者とともに症状の持つ意味というものをしっかりと掘り下げていく、その上で、その症状の持つ「目的」というか「意味」というものにどう対処していくか、というスタンスが必要であろうと思います。
しかし今回、この『嫌われる勇気』を読んで、アドラー心理学をもう一度あらためて見直してみようという気持ちになりました。この本は、大変わかりやすくアドラー心理学の神髄について書かれていると思います。

『嫌われる勇気』の内容については大筋を前回のケセラセラでご紹介しましたので、骨子の部分については、そちらを読んでいただければと思いますが、今回は、その続きということで、なるほど…と、うならされたところを、少しご紹介しておきたいと思います。


怒りの感情

アドラーの「目的論」という立場から、「人は怒りを捏造する」という議論が出てくるのですが、これには少々あっけにとられました。哲人によれば、人は怒りに駆られて怒鳴るのではなく、大声を出すために怒るというのです。一瞬のことではありますが、人は怒りの気持ちがわいて怒鳴るのではなく、大声を出すことによって相手を屈服させ自分の言うことに従わせたいという目的が先にあり、その手段として怒りの感情を捏造するというのです。

哲人は、娘と大声で口論していた母親が、突然電話のベルが鳴って、その電話に出たところ学校の先生だったというような場合、怒りの感情をすぐに引っ込めることができるという例をあげて、怒りとは出し入れ可能な「道具」であると説明します。人は、大声で相手を威圧して、それによって自分の主張を押し通すために、怒りの感情を使うというのです。この本の別の個所では、よく怒る人は相手を屈服させることによって自らの力を証明しようとする「権力争い」を挑んでいるのだとも、説明されます。

 

対人関係の悩み~競争~劣等感

哲人はさらに、すべての悩みは「対人関係の悩み」であると断言し、対人関係の軸に「競争」がある限り、人は人間関係の悩みから逃れられず、不幸から逃れることができないと説きます。なぜなら競争(権力争い)の先には勝者と敗者がいて、人間関係に勝ち負けを意識していると、必然的に生まれてくるのが劣等感で、いつの間にか他者全般のことを、ひいては世界のことを「敵」だと見なすようになるというわけです。そして、競争の恐ろしさは、たとえ勝ち続けていようとも、競争のなかに身を置いている限り、心の安まる暇がないということであると、哲人はさとします。

「権力争い」を続ける限り、勝っても負けても心が安まることはない、そして負けた側は次の段階として「復讐の段階」に突入してしまい、なにかしらの報復行為にいたり、「権力争い」は終わることがないというのです。ですからこの競争(権力争い)の図式から降りることが肝心だと哲人は説きます。人生は他者との競争ではない、だから、誰とも競争することなく、より良い自分を目指して、ただ前を向いて歩いていけばいいのだと、哲人は、勇気づけてくれます。

そして、この競争の図式から降りることができて、自分の対人関係を「競争」の軸で考えなくなったら、まわりの人々は「仲間」と呼べる存在になっていき、いろいろな不安や恐怖から解放されていくだろうと、哲人は説きます。まわりの人々が「仲間」と呼べる存在になれば、もはや怒りの感情で相手を屈服させる必要もなくなるわけです。

今回は、『嫌われる勇気』の中に書かれていた「怒りの感情」~「対人関係の悩み」~「権力争い」といったあたりの内容について、少し言葉を変えて紹介をしました。興味を持たれた方は、実際に本をとって読んでみていただくとよいかと思います。この本からはまだまだご紹介したい言葉がいくつかあり、次回も、もう少しこの本の内容の紹介を続けたいと思います。

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