閉じる

初診予約

心療内科・神経科 赤坂クリニック

Web予約

電話予約

03-5575-8198

横浜クリニック

Web予約

電話予約

045-317-5953

なごやメンタルクリニック

Web予約

電話予約

052-453-5251

※必ずご本人様よりお電話ください。

※受付時間をご確認の上、お電話ください。

※初診の方は、こちらをお読みください。

※発達障害専門外来の予約は、赤坂クリニックの電話のみの受付となります。

再診予約

心療内科・神経科 赤坂クリニック

Web予約

横浜クリニック

Web予約

なごやメンタルクリニック

Web予約

和楽会オンライン心理相談室

Web予約

※最終来院日から半年以上経っている場合は、お電話でご予約ください。

※発達障害専門外来の予約は、赤坂クリニックの電話のみの受付となります。

規格外な夫婦①~強迫性障害の患者さんの奥さんが四コマ漫画を出版しました(ケセラセラvol.84)

医療法人 和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井 宏明

強迫性障害は不潔恐怖だけではない

私は強迫性障害の治療が専門です。このことは私のホームページやOCDの会での講演会、テレビ番組、「図解やさしくわかる強迫性障害」などの一般向け著書である程度知られています。年間に300人程度の強迫性障害の方が新患として受診されます。名古屋市内の方は1/3程度で、他は関東や東北、関西、九州などほぼ日本全国からこられています。受診のきっかけは、おおよそ1/3の方が私の著書を読んで、1/3がネットで検索して、残りがテレビ番組を見てからや、現在受診中のクリニックの医師から紹介されたから、などです。職場など周りの知り合いに勧められてという方はまだ少ないのです。特に不潔恐怖以外の強迫についての知識の普及はまだまだです。

なぜ強迫性障害の知名度は低いのでしょうか?自分や他人を殺傷したり、薬物を乱用したりするような世間を賑わす社会的関心事の原因にならないからかもしれません。強迫性障害の患者さんは家の中ではひどい症状を出しますが、職場など外では隠すことができるからかもしれません。テレビが取り上げるときでも不潔恐怖・手洗い強迫ばかりで、それ以外の強迫の症状は避けられてしまいます。

取材に来たテレビ局のディレクターにもなぜ?と尋ねたことがあります。「確認はじっとしているだけなので、視聴者が飽きてチャンネルを変えてしまう。視聴者が釘付けになり、視聴率を上げられるのはやっぱり手洗いシーンです」という答えでした。なるほどです。何かにこだわって全てを忘れて集中している時間が数時間になった状態や、心の中でする強迫行為が煩わしく、寝込んでしまう「寝逃げ」は日常生活を著しく妨げます。でも、じっと考えているだけ、寝ているだけのテレビ映像を見せられたら、普通の視聴者はすぐに飽きてチャンネルを変えるでしょう。出口や家の中でじっと石のように固まる患者と向き合わなければならない家族はその苦痛を他人に分かってもらう手段がなかなかないのでした。

なごやメンタルクリニックに来られる患者さんに限れば、こだわりや“心の中の儀式”などの強迫症状を持つ患者さんは不潔恐怖の方よりも多いのです。でも、この情報は世間に広まらず、いつも残念に思っていました。

 

患者さんの奥さんが書いた漫画ブログが本になる

そんなことを思っていたとき、2015年の末、今までは違う、まったく新しい形でこの情報が広まることになりました。排泄物などの汚れは気にしないけれど、中途半端さ・不完全さは気になり、自分がすることは何でも完璧にしたいという不完全恐怖と言うべき男性患者さんです。その奥さんがご主人の症状と治療経過を一家の生活を交えながら4コマ漫画で書いたブログが、出版社の目にとまり、書籍化されました。出版社の宝島社のサイトから;

“強迫性障害”を患いながらも社会人として奮闘する夫と、子どもが1歳の頃に育児ノイローゼから“うつ病”になってしまった妻。そんな2人の日常と子育ての様子がユーモラスなイラストで描かれます。とてもつらく苦しい状況のはずなのに、前向きに頑張る2人の姿から、自然と笑顔と勇気をもらえる一冊です。

本の制作に、私も一部かかわらせていただきました。強迫性障害は逆説的な病気です。きちんとやろう、正しくありたいという意図としては全く正しい行為が結果として大迷惑な行動になります。普通の人はしない、やりたくないと思うようなことを敢えて前向きに行う逆説志向が効果的で、それを系統的にまとめたプログラムがエクスポージャーと儀式妨害(ERP)と呼ばれる行動療法の一技法です。本の主人公である“まことくん”の場合、愛する家族を守りたい・業務に忠誠を尽くしたいという真心が、妻子を泣かせたり、休職したりすることに繋がるのでした。そして、まことくんに与えられたERPの課題が、あえて嫌なことを考え・行い、日常動作を中途半端にすることでした。

 

文献

  1. 龍たまこ. 規格外な夫婦~強迫症夫と元うつ病妻の非日常な日常 : 宝島社; 2016
  2. ブログのページ http://ameblo.jp/ryu-tamako2/entry-12051049961.html

 

ブログ記事一覧