病院で受ける治療

とにかく、“つらさ”を少しでも軽くしたい。病院ではどんな治療が受けられるのでしょう。薬のほかに、治療法はある?


  まずは薬でつらい気持ちを落ち着かせます

 うつ治療は、投薬とカウンセリングが2本柱。とはいえ、症状は人によっていろいろで、体質や生活環境によっても治療方針が変わってきます。

 尾久医師は「まずは薬で『今のつらさ』を軽減するのが先決」といいます。

 「うつの薬は種類が多く、効きめや副作用の表れ方も千差万別なので、処方も非常に複雑。多くの薬は、効きめが実感できるようになるまで2週間ぐらいかかる。また、症状が改善しても、再発を防ぐために1年ぐらいは服用を続けるのが基本。『効かないから』『もう良くなったから』と勝手に判断せずに、医師の指示を守ってしっかり服用してほしい」(尾久医師)。

 薬をのんで、気持ちや体調にどんな変化があったか、正直かつできるだけ正確に医師に伝えるのが、治療を受けるコツです。

 ただし、薬でつらい気持ちが抑えられても、ストレスが強い生活環境や、ネガティブに偏りがちな「考え方の癖」が変わらなければ、うつを根本的に解消するのは難しいようです。生活や考え方を変えるのには時間がかかります。「カウンセリングやトレーニングを通じて、あせらずにじっくりと改善していきましょう」と尾久医師は話します。


  心の癖を治すトレーニングも役に立ちます

 
うつになりやすいのは、まじめな優等生タイプや、責任を引き受けがちでがまん強い“いい人”タイブの人だといわれています、そういう性格の人でも、うつになる人とならない人がいるのは、ストレスを受けたときの“心の癖”に違いがあるから。

 例えば、うつ傾向がある人は、友人からの「もう、だらしないんだから」といった軽い批判に対しても、「私なんかダメだ」「嫌われた」と、悲観的にゆがめて受け止めがち。「私が○○しなければ」と、すべてを自分のせいにしがちな傾向もあるようです。

 そんな心の癖を理解し、治していくトレーニングの一つが認知行動療法(認知療法)。生活の中で起こったことを書き留めることで、自分の考え方や感じ方の癖が把握できるようになり、「ほかの考え方もある」ことが実感できるようになります。

 認知行動療法が受けられる医療機関はまだ少ないが、本などを参考に自分で行っても効果が得られるはず。まずは、簡単な3段階(下のコラム参照)のノートづくりから始めてみては」(尾久医師)。

 この認知行動療法は、非定型タイプのうつにも効果が高いそうです。「米国で行われた研究では、約70%の患者に症状の改善が見られたと報告されている。早ければ3カ月ぐらいで、効果が実感できるようになる」(貝谷理事長)。