あがり症の特徴とメカニズム

     原因は何?
     どんな人がなりやすい?
     心の病気との関係は?
     「あがり症」って病気なの?
     どんなメカニズムで起こるの?


  ノルアドレナリンによって交感神経が刺激される

 特に内臓に悪いところもないのに、心臓がバクバクいったり、冷や汗をかいたり…考えてみれば、「あがり」とは不思議な現象です。それにしても、いったい何が原因で、こんな症状が起こるのでしょうか。

 「『あがり』は血液中のノルアドレナリン値が上昇して起こります。これは覚醒や興奮に関係している神経伝達物質で、脳の青班核というところにあるノルアドレナリン神経から分泌されます。このノルアドレナリンは緊張や不安を感じたときに活発に分泌され、自律神経の交感神経を活性化します。そして、交感神経が刺激されると心拍数や体温、血圧が急上昇するため、動悸や発汗、震えなどの症状が起こるのです」(貝谷先生)

 人は誰でも緊張すれば、自律神経のうちの交感神経が優位になります。これは動物が毛を逆立てて臨戦態勢に入ったときのような状態。心臓が高鳴り、顔面は紅潮し、汗をかいて体を硬く緊張させます。つまり、あがり症の人は、交感神経が人より敏感で、このような反応が少々強く出すぎてしまうのでしょう。

 では、こうしたあがり症は、いったい病気なのでしょうか?

 「『あがり』は誰にでも起こる正常反応です。なかには不安や恐怖が強く、日常生活に支障をきたす社会不安障害(対人恐怖症)のようなケースもありますが、これも、“ここまでは正常、ここから先は病気”といった明確な区別はありません」(貝谷先生)

 つまり、あがり症は、正常反応ではあるけれど、そのレベルはさまざま。自分がどのレベルか気になる人は、次のテストで調べてみるといいでしょう。

あなたの緊張に対する耐久レベルがわかる
「あがり症」チェックテスト

  TEST 1

以下の状況に対し、あなたがとる対応に最も近いものを選んでください。

1 多くの人の前でスピーチする
2 目上の人、偉い人と話す
3 見知らぬ人に話しかける
4 他人の視線や注目を浴びる
5 人に叱られる。非難される
6 人前で字や絵を書く
7 他人と飲み食いする
8 公衆トイレで用を足す
9 電話に出る
10 新年会、クラス会、飲み会などの社交的な集まりに出席する
まったく気にしない 0点
苦手だけどまあ大丈夫 2点
なるべくなら避けたい 4点
大の苦手。絶対に避けたい 6点
恐怖感を感じ、
いつも必ず逃げている
8点

 TEST 1 の合計:___ 点

TEST 2

緊張や不安を感じたとき、次のような症状を経験しますか?

1 顔が赤くなる。または青くなる
2 動悸を感じる
3 手足や全身、声が震える
4 手や全身に汗を大量にかく
5 筋肉がこわばる
6 吐き気、腹部不快感をもよおす
7 口が異常に渇く
8 息苦しさを感じる
9 尿が近い、尿が出ない
10 頭が真っ白になる。めまいを感じる
まったくない 0点
少し気になることもある 1点
かなり気にしている 2点
とても強く感じている 3点
耐え難いほど
強く感じている
4点

TEST 2 の合計:___ 点

  TEST 3

日常生活への支障はどの程度ですか?

日常生活に 支障はほとんどない 0点
日常生活に 多少支障がある 10点
日常生活に かなり支障がある 20点
日常生活に たいへん支障がある 30点

TEST 3 :___ 点

TEST 1〜3 の結果を足して合計点数を出してください。
あなたの合計点数:___ 点

判定

30〜50点 軽度の「あがり症」と考えられます。日常生活に支障がないのであれば、そんなに心配することはないでしょう。また、30点未満の人は問題なしです。
51〜100点 中度の「あがり症」である可能性が高いと考えられます。少しでも日常生活に支障があるのであれば、目を背けずに積極的に治療するよう努力しましょう。
100点以上 高度の「あがり症」である可能性大です。日常生活にも大きな支障が出ているはず。ひとりで悩みを抱え込まずに、医療機関に相談するようにしてください。

  突然スピーチを指名されたときよりも、自分の発言の順番を待っているときのほうがあがりやすいのはなぜ?

 たとえば、多くの人の前で順番に自己紹介をすることになったとき、“あと3人で自分の番だ…何を話そうか”いよいよ次だ…エッ、話そうと思っていたことを前の人に言われちゃった…どうしよう、というようなことを、ドキドキしながら考えていることはありませんか?

 このようにスピーチの順番を待っていると、緊張や不安も一層大きくふくらむもの。突然に「○○さん、これについて説明して」と発言を求められたようなときよりも、あがりやすい人が多いようです。

 それもそのはず。「突然発言を求められた」ときの緊張と、「発言の順番を待っている」ときの緊張とでは、脳の中で使われる回路が違うのです。医学的には前者を「無条件恐怖」、後者を「条件恐怖」と呼びます。そして、これらにはそれぞれ別々の「神経回路」が使われ、神経伝達物質のセロトニンも相反する方向に作用することがわかっているのです。

同じ緊張といっても、実はいろいろなタイプがあるのですね。