フクロウblog | ドクター原井コーナー

医療法人和楽会の「フクロウblog」です。治療や講演会などの様々な情報をお届けします。

自分を振り返る3 名古屋での10年間 (ケセラセラ vol.90 秋)


医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井宏明

 

この10年間で印象的なできごとは?

10年間いろいろありました。仕事はもちろんですが、私的なことがたくさんありました。浪人中の息子と1年間、2人で暮らしました。彼の予備校となごやメンタルクリニックの間は300mぐらい、朝に二人分の弁当を作り、一緒に名駅まで通ったのは忘れられない思い出です。九州で家内と暮らす娘が、まだ高校生だった夏、名古屋まで逃亡してきたことがありました。中退しても構わないという娘を九州に送り返したときのことを思い出すと今でも複雑な感情に襲われます。東日本大震災の翌月18日に父が亡くなりました。父が入院していた京都の病院から歩いて5分ぐらいのところに私が通っていた幼稚園がありました。震災があり、父は死の床に就き、懐かしい幼稚園の建物は少子化のために廃墟になっていました。そして、その前に1人で立つ私は満開の桜に囲まれていました。

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自分を振り返る2 岐阜大学での6 年間 (ケセラセラ vol.89 夏)

医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井宏明

 

人生で一番輝かしい時期は?

皆さんの人生を振り返り、一番良かった時期とはいつでしょうか?
青春を謳歌したといえるときは?
当時に戻りたいと思える時期は?

かなりの人が10代後半、大学生のころを考えるのではないでしょうか?私もそうです。医学部の6年間に人生の“お初”がたくさんあります。一人暮らしを始めました。水泳部に入りました。1年の冬に初スキー、3年でファースト・キス、デート、失恋…医学生ですから、死体解剖なども経験します。この中にはスキーのように私が今でも続けているものもあれば、またやりたいと思っているのにまだやらずにいること、1回だけでもう十分というものもあります。ホルマリンの匂いの中での解剖実習はその代表選手です。国家試験もそうですね。
またやりたいと思っているのにまだやらずにいることは何かと聞かれたら、私はバイクと答えるでしょう。初夏の季節、ライダーを道路で見かけるたびにうらやましくなります。

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自分を振り返る1 ミシガン大学時代 (ケセラセラ vol.88 春)

医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井宏明

 

誰でもうつ病になる可能性がある?

うつ病と聞くとどんなことを想像するでしょうか?留学と聞くと?読者の方はそれぞれについていろいろな考えがあるでしょう。しかし、留学中にうつ病というのはどうでしょうか?精神科医にとっては留学中に心を病むという話は比較的よく経験する話です。神戸大学病院や肥前療養所などで勤務している時、外国から日本に来てから不調をきたした方を担当することがありました。「精神的に弱っているときには環境の大きな変化は良くない」というのは誰もが信じる一種の常識でしょう。

私の留学でも環境の激変がありました。言葉はもちろん気候や食事、習慣、何から何までも違います。そして何よりも友人や家族から引き離されます。アナーバーの街の冬の寒さは札幌以上でした。睫毛が凍って開かないというのは生まれて初めての経験でした。入った寮は二人部屋で、これも初めて。大学時代に付き合っていた彼女との別れもありました。

結論から言えば、私は無事に留学を終えて帰国し、神戸大学精神科の研修医になり、それから今まで精神科医の仕事を続けています。2008年1月になごやメンタルクリニックに来てから今までの9年2ヶ月、父の葬儀を除いて一日も休まず働き続けています。昔のことを思い出すときには楽しかったことを思い出します。1年間の留学を終えて日本に戻ったとき、研修医生活のほうがよほどストレスだったとか考えます。

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赤ちゃんを抱っこする (ケセラセラvol.87 冬)

医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井宏明

 

「クリニックの院長はストレスたまりませんか?」

メンタルクリニックの院長の仕事は他人の悩みの話を聞くことから始まります。おそらく誰でも他人の悩みを聞くのはあまり楽しいことではありません。聞き上手を自慢している方でも、朝から夕方まで数十人を相手しなさい、と言われれば「大変!」と思われるようです。私自身、20年間国立病院で働いているときに診ていた患者さんの数は多くても一日に30人ぐらいでした。一日の患者さんの数を知ると、知り合いはもちろん、受診される患者さん当人からも「ストレスたまりませんか?」と聞かれます。9年前、なごやメンタルクリニックに来たばかりの私もそう思っていました。そして、次にくる質問は「先生のストレス解消法は?」です。

結論から言えばなんとかなるものです。名古屋に来てから9年がたちました。強迫症など最初の受診の理由になっていた症状が1/3以下になり、薬の種類も減って抗うつ薬1種類だけか、抗不安薬などと合わせても2、3種類ぐらいになり、薬の調整も不要になった患者さんが増えてきました。こうした患者さんは症状を治すためではなく、現状維持― 再発のリスクを下げるため― にクリニックに来ていただいていることになります。

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Yさんと「幸か不幸か」 (ケセラセラ vol.86 秋)


医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井 宏明

 

今では手洗いや確認、こだわりの患者さんばかり見ている私ですが、最初からそうだったわけではありません。1986年、佐賀県にある国立肥前療養所に就職したとき、私が担当していた患者さんは統合失調症やアルコール依存症、うつ病、てんかんなどでした。その中に忘れられない患者さんが1人います。

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