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- 理事長の治療方針

理事長
貝谷 久宣(かいや ひさのぶ)
1943年 名古屋生まれ。
愛知県立明和高等学校、名古屋市立大学を卒業後、岐阜大学医学部神経精神医学教室に所属し、恩師難波益之教授の指導の下に神経病理学、生物学的精神医学の研究に従事。1972年より2年間、ミュンヘン・マックスプランク精神医学研究所に留学。帰国後講師、助教授を歴任。1991年より2年間自衛隊中央病院神経科部長を務め1993年2月開院。
著書「不安・恐怖症、パニック障害の克服」講談社、1996年。
共著「不安症の時代」日本評論社、1997年。
著書「脳内不安物質」講談社、1997年。
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私は痛みをとることが医療の本質であると思っている。
ミュンヘン大学の当時の精神科主任教授であったクレペリンが基礎を築いたマックス・プランク精神医学研究所は国際的にもよく知られた精神医学研究のメッカの一つである。20年前、私はここで2年間、神経精神医学の基礎となる脳研究をした。
帰国後、いつしか私は、ドイツ精神医学とアメリカ精神医学を比較してながめるようになっていた。ドイツ精神医学は理論が先にたち、どちらかといえばあまり実際的ではないように感じられた。それに比べ、アメリカ精神医学では、患者の苦痛を一刻も早く取り去ることが先決であると考えていると思えた。アメリカ精神医学の根底にはプラグマチズムが流れ、より実際的で、患者本意であり、さらに、経済的効率をも常に考えているようだ。
私の知っている教授の中には、アメリカ精神医学は底が浅いと批評する人もいるが、私はアメリカ式がよいと思っている。彼らは、治療における state of the art という言葉が好きである。これは、辞書をひもといてもなかなか載っていない熟語である。これは、その時点におけるあらゆる知識と最も進んだ設備を動員し、最高の治療をするという意味だと私なりに解釈している。
そして、私自身も、 state of the art の診療をするよう励んでいるつもりである。
私の専門は精神薬理学である。過去30年間の精神医学の画期的な進歩は、向精神薬の発達によるといっても良いであろう。
私は、精神薬理学的知識と臨床経験を基に、眼の前の患者の病状に最も適した薬を処方する事に努力してきた。神経精神科では薬の治療は最も重要な治療法の1つである。だがそれがすべてではない。社会・心理学的治療法も大切だといわれている。
これは、あくまでも科学的にその効果が証明されたものでなければならない。精神分析療法は科学的に証明されていない。行動療法や自律訓練法はその効果がコントロール研究で証明された治療法である。だから、このような考えを持った臨床心理士と私はコオペレートしてきた。
最近、インフォームド・コンセントという言葉をよく聞く。
これは、患者が充分な情報を与えられ、それを理解し、治療方針を納得し、医師と一体となり病気に対処していくことを意味している。こころの病気の治療の場でも、このことはたいへん重要なことだと思われる。患者は治療方針、特に薬について疑問や不安があれば何でも質問すべきである。このような観点から、慢性の病気の多い神経精神科診療では、患者・家族教育がポイントとなることが多い。
そのため、私は病気を理解してもらうためにビデオやパンフレットを作ってきた。患者または家族に、その病気を充分に理解させ、また治療方針を納得させることが、病気をのりきるための大前提だと考えている。
ここに記したのは、平成5年4月なごやメンタルクリニック開院時の患者さんに対するメッセージです。
20年近くたった現在もここに記した通りの気持ちで診療をしている。
開院時こころ秘かに思っていた臨床研究はたくさんの優秀な医師に来て頂いて少しずつ実りつつある。これも皆研究に協力頂いた患者さんのお陰である。
もちろんこれらの研究はすべて治療に結びついていくものと信じている。