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不安のない生活(31)呼吸について(4)(ケセラセラvol.87)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

 

前回は、ヒトが死ぬ時は息を引き取るというが、実は息を吐いて亡くなるのだという話で終わりました。これには後日談がある。マインドフルネス学会の懇親会で藤田一照師にこの話をしたら、それは仏様が息を引き取ってくださるという意味ですとの解説だった。やはり坊さんは言うことが違うなと思った次第だ。

前々回には、坐禅をしている時は酸素消費量が20%前後減少し、これには脳での酸素消費の減少が主に貢献していることを記した。脳の酸素量が減少すると相対的に炭酸ガス濃度が上昇する。延髄の呼吸中枢にある化学受容器は血液中の炭酸ガス濃度が上昇すると呼吸を促進させる方向に作用する。この化学受容器を持つ神経細胞はセロトニンという神経伝達物質を生成するニューロンである。炭酸ガス濃度が上昇するとこのセロトニン神経が活発になることが明らかにされている。その時、延髄にあるセロトニン神経だけでなく縫線核により多くあるセロトニン神経も活発になる。その結果セロトニンが放出されればセロトニンの神経静穏作用や抗うつ作用が現れることになる。前述した富士山のような高い山に登ると気分が清々しくなることや坐禅で静謐な気分になることはこのセロトニンと関係しているようである。

 

呼吸はマインドフルネスと深い関係にある。マインドフルネスで行われる瞑想とはどんな意味があるのであろうか。瞑想という言葉を岩波仏教辞典第2版でみると、“冥想とも書く。冥想は漢語として目を閉じて深く思索するという意味。

…深い精神集中のなかで根源的な真理と一体化することを「冥」の字を用いて表す…

仏教がヨーロッパで研究・実践されるようになると、禅やチベット仏教の実修がヨーガなどとともに、meditation, contemplationとして理解されるようになった。それが邦訳され瞑想と呼ばれるようになった。ヨーロッパにおいてもカトリックやキリスト教神秘主義の伝統では瞑想を重視する。ここから仏教の瞑想も、これらのヨーロッパの伝統と比較され、また、心理学や精神医学の領域に取り入れられたりして、広く普及するようになった。”とあります。ここでは呼吸という言葉は出てきませんでしたが、マインドフルネスに取り入れられているヴィパッサナー瞑想で重要視されるアーナーパーナサティ・スートラ「出息入息に関する気づきの経」は、日本では古くは大安般守意経とよばれ仏陀が行っていた呼吸法として紹介されています(村木弘昌、1979)。江戸期の仏教でこの大安般守意経に気付いて坐禅をしていた僧はほとんどいなかったようです。ただ、臨済宗中興の祖といわれている白隠禅師は自分の禅病(パニック症、ケセラセラVol.62、2010白隠の大往生 参照)を“安那覚・般那覚の二三昧”― 出息入息の二つに心を集中させて安定した精神状態を成す―を修して治したと書かれており、欄外に大安般守意経によると注釈されている。白隠は自分の病気を出息入息に関する気づきの経を参考にして自己治療したと考えられる。この点で白隠は世界で最初にマインドフルネスを医療に供した人である。

ではここでアーナパーナサティ・スートラから呼吸による16の瞑想法を引用してみよう。(身体に関する瞑想法)

1.息を長く吸っている時には、「息を長く吸う」と知り、息を長く吐いているときには、「息を長く吐く」と知る。

2.息を短く吸っているときには、「息を短く吸う」と知り、息を短く吐いている時には、「息を短く吐く」と知る。

3.「全身を感じながら息を吸おう。全身を感じながら息を吐こう」と訓練する。

4.「全身を静めながら息を吸おう。全身を静めながら息を吐こう」と訓練する。(感受に関する瞑想法)

5.「喜悦を感じながら息を吸 おう。喜悦を感じながら息を吐こう」と訓練する。

6.「楽を感じながら息を吸おう。楽を感じながら息を吐こう」と訓練する。

7.「心のプロセスを感じながら息を吸おう。心のプロセスを感じながら息を吐こう」と訓練する。

8.「心のプロセスを静めながら息を吸おう。心のプロセスを静めながら息を吐こう」と訓練する。(心に関する呼吸法)

9.「心を感じながら息を吸おう。心を感じながら息を吐こう」と訓練する。

10.「心を喜ばせながら息を吸おう。心を喜ばせながら息を吐こう」と訓練する。

11.「心を安定させながら息を吸おう。心を安定させながら息を吐こう」と訓練する。

12.「心を解き放ちながら息を吸おう。心を解き放ちながら息を吐こう」と訓練する。(智慧に関する呼吸法)

13.「無常であることに意識を集中させながら息を吸おう。無常であることに意識を集中させながら息を吐こう」と訓練する。

14.「色あせていくことに意識を集中しながら息を吸おう。色あせていくことに意識を集中しながら息を吐こう」と訓練する。

15.「消滅に意識を集中させながら息を吸おう。消滅に意識を集中させながら息を吐こう」と訓練する。

16.「手放すことに意識を集中させながら息を吸おう。手放すことに意識を集中させながら息を吐こう」と訓練する。

 

仏陀はこの呼吸法を90日間続けたという。凡夫にはとても無理であるために、1から10まで呼吸を数え、10になったらまた1に戻るという数息観(臨済宗では“すうそくかん”、曹洞宗では“ずそくかん”と読む)という呼吸法が考案された。坐禅ではこの呼吸法が指導されることが多い。

 

参考書
・ラリー・ローゼンパーク 実践ヴィパッサナー瞑想呼吸による癒し? 井上ウィマラ訳
2001 春秋社 東京
・村木弘昌 釈尊の呼吸法
1979 柏樹社 東京

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