フクロウblog | 睡眠障害について(2) (ケセラセラ vol.87 冬)

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睡眠障害について(2) (ケセラセラ vol.87 冬)

医療法人和楽会 横浜クリニック 院長 海老澤尚

 

2.睡眠時無呼吸症候群

眠っている間に呼吸が止まったり低下する疾患で、気道(空気の通り道)がふさがるのが主な原因です。使い古して弱くなったストローで勢いよくジュースを飲もうとすると、吸い込む勢いでストローがつぶれ、うまく吸えない経験をした方もおられるのではないでしょうか。睡眠時無呼吸症候群の場合は、ストローの役割をする気道が、肥満・睡眠中に気道の形を維持する筋肉の緊張がゆるむ・舌が喉の奥をふさぐ、などで狭くなっています。狭くなった気道を通して空気を吸い込もうとすると、気道の周囲が振動していびきになります。空気を吸い込む勢いで気道が完全にふさがると、いびきも呼吸も止まって無呼吸になり、血液中の酸素濃度が低下することもあります。低酸素状態が続くと苦しいので、無意識に睡眠を浅くして筋肉の緊張を高めたり、姿勢を変えることで、気道が開いていびきと呼吸が再開します。息が詰まったような苦しさや、自分のいびきの音によって目が覚めることもあります。

こうしたことを睡眠中に繰り返すため、深く眠れず、睡眠時間が長い割には日中に強い眠気を感じたり、体がだるくなったり、頭がぼんやりして集中力が低下したりします。夜の頻尿や、目が覚めた時の口の渇き、頭痛などを伴うこともあります。うつなどメンタルの症状を悪化させることもあります。交感神経系が興奮し、睡眠時無呼吸症候群が長期間続くと高血圧や動脈硬化、糖尿病、脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高くなります。

肥満の方に多いのですが、日本人の場合は顔の骨格の特徴のためか、必ずしも肥満がなくても睡眠時無呼吸症候群になる方が少なからずおられます。鼻づまりや顎が小さい場合もリスク因子になります。飲酒や睡眠薬の大部分(ベンゾジアゼピン系など)は、気道の形を維持する筋肉の緊張
をゆるめるので睡眠時無呼吸症候群を悪化させます。

診断には、睡眠中に呼吸が止まったり低下したりしないか、血液中の酸素濃度が低下しないかなどを調べる検査を行います。自宅でレンタルの検査機器を自分で装着する簡易型の検査と、病院に一泊して行う精密検査とがあります。

最も確実な治療効果が得られる治療法はCPAP(持続陽圧呼吸)という方法で、毎晩寝る時にポンプ付きのマスクのような器具を身に付け、弱い圧力をかけた空気を送り込みます。上のストローの例えで言うと、ジュースを吸い込もうとするとストローがつぶれるので、ストローの反対側からポンプでジュースを送り込むようなイメージです。

睡眠時無呼吸症候群が長期間続くと、心・脳血管障害などのリスクが高まりますが、CPAPなどで治療すると、そのリスクが低下することが判っています。CPAP治療が保険適応になるのはある程度重症の場合ですが、CPAPの適応ではない程度でも、マウスピースなどの使用で症状が改善する場合もあります。肥満の方では減量が望ましいのは言うまでもありません。