フクロウblog

医療法人和楽会の「フクロウblog」です。治療や講演会などの様々な情報をお届けします。

病(やまい)と詩(うた)【44】 ー恥ずかしがりやが生まれる歴史ー (ケセラセラ vol.90 秋)

東京大学名誉教授 大井玄

 

8月初め、ヘルシンキでは日中の最高気温は20℃前後。暑さ寒さに弱い私にはセーターが必要だった。
10日余りの短い滞在だったが、認知症高齢者の施設、露店や書店や料理店、美術館、郵便局、バスさらに通行人などとのやり取りから、ある種日本人に似た雰囲気を感じた。
それは、アメリカはもちろん、英、独、仏などの国々では感じなかった優しい、内向で他者を気にする気質といって良いだろう。
日本人の気質は、狭く貧しい地域で他者と平和に生きる歴史を通じて形成された。フィンランドではどうだったのか。

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将棋の話ーその1ー (ケセラセラ vol.90 秋)

医療法人和楽会 心療内科・神経科 赤坂クリニック 院長 吉田栄治

 

藤井四段の活躍

中学生棋士、藤井聡太四段のデビューからの活躍はめざましかったですね。「マンガなら(編集者や読者から)こんなのはありえないだろうと怒られるレベル」だとか「映画の“三月のライオン”どころか“シン・ゴジラ”のレベルです」などいろいろ面白いコメントが聞かれました。29で連勝記録が止まり、さすがにここにきて勝つペースが少し落ちてきて、マスコミの騒ぎようも落ち着いてきたようです。9月18日の時点で直近10局の対戦成績は6勝4敗で少し負け込んで来ていますね(ちなみに今期の勝率については30勝6敗で全棋士中第3位です)。最近の4敗のうちの2敗は、菅井竜也七段(現王位)との王将戦予選決勝と、レーティングで現在実力ナンバーワンの豊島将之八段との棋王戦本線での対局でした。さすがにこの二人の実力者には勝てなかったですね。あとの2敗は加古川青流戦での井出隼平四段と、新人王戦での佐々木大地四段との対局で、同じ四段同士の対局でしたから、藤井四段のファンとしては是非とも藤井くんに勝ってもらいたいところでしたが、この若手二人も強かった。さすがプロでした。

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全般不安症 (ケセラセラ vol.90 秋)

医療法人和楽会 横浜クリニック 院長 海老澤尚

不安症の一種です。日常の様々なことに不安を感じて必要以上に心配するため、時間や気力を消費して生活に差し障りを生じる、「過剰な心配症」ともいえる疾患です。
日常生活のこと(仕事、学校、健康、お金、家族、将来、交友関係、「何か悪いことが起こるのではないか」、など)を広汎にわたって過剰に心配し、不安にとらわれます。心配している事が現実に起きる可能性や、それが起きた場合に受ける影響の大きさに比べて、不釣り合いに強い程度の心配や不安が半年以上続きます。心配の種が一つ解決しても、すぐ他のことが心配になるため、気が休まることがありません。その結果、神経の高ぶり、張りつめたような緊張感、ものごとに集中して取り組むことが困難、怒りっぽさ、イライラ、などを生じます。神経過敏になり、ちょっとしたことにびっくり(驚愕)しやすいこともあります。落ち着かなさ、疲れやすさ、筋肉の緊張や痛み、震え、睡眠障害、吐き気や下痢、発汗、頭痛、過敏性腸症候群などの身体症状を伴うこともあります。自分が適切に判断できたか不安で物事を決められなかったり、きちんと振る舞えたか心配になるため、様々な活動に参加するのを避けたりすることもあります。心配しすぎることを抑えようとしてもうまくいきません。子供の頃から自分の能力に自信がなく、うまく行動できたか過剰に心配したり、周囲から「大丈夫」という保証を過剰に求めることもあります。

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自分を振り返る3 名古屋での10年間 (ケセラセラ vol.90 秋)

医療法人和楽会 なごやメンタルクリニック 院長 原井宏明

 

この10年間で印象的なできごとは?

10年間いろいろありました。仕事はもちろんですが、私的なことがたくさんありました。浪人中の息子と1年間、2人で暮らしました。彼の予備校となごやメンタルクリニックの間は300mぐらい、朝に二人分の弁当を作り、一緒に名駅まで通ったのは忘れられない思い出です。九州で家内と暮らす娘が、まだ高校生だった夏、名古屋まで逃亡してきたことがありました。中退しても構わないという娘を九州に送り返したときのことを思い出すと今でも複雑な感情に襲われます。東日本大震災の翌月18日に父が亡くなりました。父が入院していた京都の病院から歩いて5分ぐらいのところに私が通っていた幼稚園がありました。震災があり、父は死の床に就き、懐かしい幼稚園の建物は少子化のために廃墟になっていました。そして、その前に1人で立つ私は満開の桜に囲まれていました。

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不安のない生活(34) 呼吸について(7) (ケセラセラ vol.90 秋)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

呼吸の仕組みについては今までいろいろ述べてきましたが、ここで呼吸の3つの脳内のセンターについてもう一度おさらいをしておきましょう。

代謝性呼吸は無意識に行っている呼吸をつかさどっています。延髄にある化学受容器が血中の炭酸ガス分圧を感知して呼吸をコントロールします。脳幹部に中枢があります。わたくしたちは意識的に呼吸をゆっくりしたり、息をためることが出来ます。呼吸を自分の意志により左右できるこの呼吸を随意性呼吸と呼んでいます。手や足を意識的に動かすときに指令を出すのと同じ大脳皮質運動野に中枢があります。

最近分かってきたのは、情動性呼吸という呼吸です。不安になったり、興奮すると呼吸が早くなります。このような陰性感情は扁桃体の活動で引き起こされ、その刺激が呼吸にも及ぶことが分かってきました。静かな深い呼吸は扁桃体の活動性を静めることも最近の研究で分かってきました。歌うとき、会話をするときも呼吸は変化します。この時は呼吸を意識する場合もしない場合もありますので、随意呼吸だけでなく自動性の呼吸が行われます。このような呼吸は、代謝性呼吸とは区別して行動性呼吸といわれています。行動性呼吸では3つの呼吸中枢が相互的に働いていると考えることができます。(図1 3つの呼吸中枢)

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