フクロウblog | 大井 玄 先生のコーナー

医療法人和楽会の「フクロウblog」です。治療や講演会などの様々な情報をお届けします。

病(やまい)と詩(うた)【43】 ー墓穴を掘るのか?ドナルド・トランプ大統領ー (ケセラセラ vol.89 夏)

東京大学名誉教授 大井玄

 

トランプ大統領は、もともと不動産屋で、テレビショーの司会者がたまたま大統領になったにすぎない、と嘆くアメリカ人も多い。
たしかに、いまや3000万人ともいわれる彼のツイッターのフォロワーがいなければ、大統領にはならなかっただろう。彼はデジタル時代の申し子である。
前回断ったように医師としての私が興味を持つのは、彼の性格的特徴であって、私の愛する認知症高齢者とおどろくほど共通するところと、まったく異質なところがあるからである。
共通する性格特徴は、嘘だとは思わないで嘘をつくこと、誇り高く、過ちを認めることは絶対にしないこと、さらに不安を容易に怒りに転化させることである。ただトランプ氏が直ちに腹を立てるのは、その性格的未成熟さによる。

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病(やまい)と詩(うた)【42】 ードナルド・トランプという症例ー (ケセラセラ vol.88 春)

東京大学名誉教授 大井 玄

 

ドナルド・トランプ第45代アメリカ大統領は、認知症高齢者の異常精神症状に強い興味を抱く老医にとっては、格好の観察対象である。
なぜなら、認知症高齢者の易怒性と底の割れた「嘘」をついて平然としている点において両者は酷似するからだ。
「もの取られ」のような被害妄想を抱く認知症高齢者には決して逆らってはいけないのは、その介護者の広く知る事実といえよう。もし訂正したりするならば彼は激高し、易怒性、夜間せん妄といった周辺症状が悪化するばかりだからである。九十歳であっても「三十歳」というならそれを受け入れるのだ。
なぜなら「妄想」も「嘘」も彼にとっては真実だからだ。

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病(やまい)と詩(うた)【41】 ーおれおれ詐欺とトランプ大統領ー (ケセラセラ vol.87 冬)

東京大学名誉教授 大井 玄

 

仕事柄、わたしの付き合う人には認知能力のおとろえた人が多い。もちろん、わたしも確かに認知能力がおとろえている。彼らとの違いは、わたしには未だに好奇心が旺盛で、しかもすぐに感心したり、驚いたりするところが残っている点だろう。それを除けば、わたしは文句のない彼らの一員である。
そのせいだろう。おれおれ詐欺の話をきくと義憤に駆られ、また言いようない悲しさを感じる。
おれおれ詐欺の古典的手口を心理的に解析するならば、詐欺師はまず、息子を装い、他者の金を使い込んだというような話をでっちあげ、老母の不安を掻き立てる。窮地にいる「息子」を救うため、老母はため込んだへそくりを指定の口座に振り込み、ほっと安堵の息をつく。

ここで重要なのは、「強い不安」を掻き立てること、と同時に、金を払えば全てうまく行くのだという「希望」を持たせることである。と同時に明らかなことは、老母は疑ったり、疑問を感ずることを中止していることだ。つまり「判断停止」をしており、つよく認知能力の衰えが窺われる。怪しい点は少し考えれば出てくるのだがそれをしない。そこがますますこちらの悲憤を強くするのだ。
認知能力の衰えかかった老母だけの話であるなら、テレビで「おれおれ詐欺に気を付けよう」といったキャンペーンをしたり、地域の警察から電話をして注意を促すという手もあろう。
しかし社会の多くの人が不安を抱いているときはどうだろう。テレビやパソコンや新聞などの通信手段を活用し、不安を掻き立て、それを怒りに変え、特定の目標に向けさせることもできよう。
拙著『痴呆老人は何を見ているか』で記したように、われわれはそれぞれ程度の異なる痴呆である。既に社会に存在する「不安」が掻き立てられ、それが「怒りに」転化させられたとき、怒りを不安の原因と見なされるもの、たとえば、社会のマイノリティーやこれまでの政治体制に向くのは、自然な心理的ダイナミズムであろう。

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病(やまい)と詩(うた)【40】 ー夏の海ー (ケセラセラ vol.86 秋)

東京大学名誉教授 大井 玄

 

先日、水俣から一冊の本が届いた。矢吹紀人著『終わっとらんばい!ミナマタ―看護師・山近峰子が見つめた水俣病』である。水俣協立病院で顔見知りの峰子さんの、私の知らぬ歴史だった。

彼女は1953年、チッソ水俣工場から直線で2キロほど離れたところで生まれたが、物心つく頃には近所で「奇病」の患者が何人もいた。同い年の田中実子ちゃんは、3歳で発症した小児性水俣病患者だった。父親の池田弥平さんは畳職人だったが、1966年の冬の朝56歳で突然倒れ、その後は寝たきり状態になった。母親は近所の農家の畑仕事を手伝い、生活を支えた。

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病(やまい)と詩(うた)【39】 ードナルド・トランプ「大統領」と気候変動ー (ケセラセラ vol.85 夏)

東京大学 名誉教授 大井 玄

 

不動産王ドナルド・トランプは、共和党の大統領候補に名乗りを上げたときから、通常人の度肝を抜くような大胆な発言を繰り返してきた。いわく1100万人の不法移民を逮捕し、強制送還する。いわく、メキシコとの境界に通り抜け不可能な壁を建造し、メキシコに費用を払わせる。いわく、イスラム教徒の入国を禁止する等々。

彼によれば、「ジャージー市(ニューヨーク市の隣にある)の何千人ものイスラム教徒が、9・11事件の際、世界貿易ビルの崩壊を喝采した」のである。しかも、「アメリカの推定300万余人のイスラム教徒を登録し、彼らが抱く信仰を記した特別の身分証明書を携行させることも辞さない」という。ナチスがドイツの政権を獲得したとき、ユダヤ人にダビデの星の印を着けさせたことを思い出させる。

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