フクロウblog | マインドフルネスの臨床効果と脳科学 ⑤ストレスとマインドフルネス(ケセラセラvol.96春)

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マインドフルネスの臨床効果と脳科学 ⑤ストレスとマインドフルネス(ケセラセラvol.96春)

医療法人和楽会 理事長 貝谷久宣

 

ストレスとは一体何?

ストレスとはプレッシャーに対する身体的および心理的な反応です。ストレッサーは内的なもの(例:痛み)もあれば外的なもの(例:超過勤務)もあります。ストレッサーに対する耐性は個人差が非常に大きく、適度なストレスはむしろ健康にとって好ましいのです(図1)。

図1
たとえば、人前で発表する時には適度な緊張感があったほうがパフォーマンスは良くなります。プレッシャーがある一線を越えてしまうと、逆効果になり、パフォーマンスが悪化します。

バーンアウトとは?

長い期間にわたって対処できないストレスにさらされると、健康を害して挫折してしまいます。大切な仕事が楽しくなくなり達成できなくなったときにバーンアウトが起こります。活力は涸れ果て、熱心は不熱心になり、役立てなくなります。表1にバーンアウト状態を示しておきます。バーンアウトは末期患者を扱う医療現場でしばしばみられます。

図1

レジリエンスとは?

レジリエンスとは逆境から元気に抜け出す能力です。すなわち、折れるのではなく撓しなうだけで、困難に際しても現状保持の適応力をもち、前に進む能力です。レジリエンスを高めるとはポジティブ思考を高めることです。レジリエンスはストレス耐久力でもあります。ストレスが最高潮に達してもバーンアウトすることなく長期にわたって高マインドフルネスの臨床効果と脳科学度のパフォ―マンスを保つことです。必ずしも、一生懸命働いて生産性を上げるということではありません。レジリエンスを高めるにはウェル・ビーイングを改善し、ストレスに強い心を作ることです。レジリエンスは大変なストレスフルな状況を生きるということだけではなく、人間の成熟をももたらすものでなくてはなりません。レジリエンスを高める大変すばらしい方法が最近分かってきました。それはマインドフルネスです。

マインドフルネスとは?

マインドフルネスによりウェル・ビーイングが促進されます。マインドフルネスは瞬間、瞬間に現れる気づきです。その気づきを善悪や好き嫌いの判断無しで、好奇心と優しい気持ちで全面的に受け入れます。これにより賢い反応性が心の深部で養われます。LukenとSammons(2016)は、マインドフルネスが職場のバーンアウトを減らす効果があるかどうかを調査した8研究のうち6研究ではっきりとバーンアウト減少効果があることを示しました。

マインドフルネスはどの様にしてレジリエンスを高めるのか?

マインドフルネスは注意コントロールと、情動調節および内受容感覚を司る脳部位である前帯状回と島皮質の活動性を調節することが分かっています。出動する前の海兵隊員に8週間のマインドフルネス訓練がなされました。マインドフルネス訓練を受けていない群を対照群として、両群の違いが検討されました。両群とも機能性脳画像検査を受けている最中に過呼吸をさせて苦しい状態にし、上記の脳部位の反応を調べました。その結果、右の前帯状回と島皮質の活性は、マインドフルネスを受けない群では著しく上昇したのに対し、マインドフルネスを受けた群では活性の上昇はさほどではありませんでした(図2)。

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この結果、マインドフルネスを受けた群では内受容性の嫌悪刺激に対しての耐性が大きいことが分かりました。要するにマインドフルネスは辛いことに対してもあまり辛いと感じなくする作用があると考えられます。このような作用が、マインドフルネスがレジリエンスを高める要因の一つになっているものと推定されています(Hasse Lら、2016)。