発達障害とは何か?生きづらいのはなぜ?

  • ・どうして他人と同じ事ができないんだろう?
  • ・性格が変なのかなぁ?
  • ・どうもいつもうまくいかない・・・

自分を責めるだけの日々をストップさせ、自分自身を理解し、見つめ直すことによって、自信を取り戻しましょう

境副院長の「大人の発達障害について」

赤坂クリニック 副院長 境 洋二郎 先生

赤坂クリニック 副院長
境 洋二郎(さかい ようじろう)先生

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当院の外来には、うつ病や不安症の患者さんが多く来られますが、うつ病、パニック症、社交不安症と診断される方でも、発達障害の特性を持った方が、しばしばおられます。
双極性障害、適応障害、身体症状症(身体表現性障害)と診断できる方にも、その背景に、発達障害を持つ方がおられます。
発達障害とは、生まれ持った特徴・特性として、いくつかの傾向があり、そのことを踏まえて、生活に活かせると症状や生活の改善に役立つことがあります。

成人になるまで、発達障害と診断されなかった方では、一般にその特性の程度が軽いことや、それを補う能力を持っていること、周囲からサポートが良好であったこと、適性の合った進路を選択された方などが多いのでないかと思われます。
ちょっと個性の強い方、ちょっと変わった方と思われていることはありますが、特に学生時代には大きな問題とならないことは多いようです。
それが、大学・専門学校に進学する、社会人になる、仕事の量が増える、人との交流が必要になる、会社等の中で責任を持つ立場になるなど環境が変わり、困難を抱え、不安・抑うつや身体症状が出現し苦悩され、辛い状態となることがあります。

そういった方では、うつや不安の治療のみでは、病状や社会生活上の困難の改善が難しい場合があります。
お困りの症状に加え、特性を踏まえ、薬物療法や生活のアドバイス、心理社会的な支援等を用いて、生活の安定に役立つように診療を行いたいと考えています。

お問合わせ

心療内科・神経科赤坂クリニック

住所:〒 107-0052 東京都港区赤坂3-9-18 BIC赤坂ビル6F
TEL:03-5575-8198
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大人の発達障害の特徴 ~心当たりありませんか?~

◆自閉スペクトラム症

  • * 人の顔(目を)見て話すのが苦手。
  • * 「相手の気持ちを察する」ことが難しい。
  • * 集団行動が苦手で無理に合わせると苦しくなる。
  • * 雑談では何を話してよいかわからなくなる。
  • * 数名の集団での会話では話についていけなくなる。話に入っていけない。
  • * 音や光、人に触れることに過敏。
  • * 「空気を読む」ということができない。よくわからない。
  • * 周りの人が普通にやっていることが、自分はなぜかできない。

◆注意欠如・多動症(ADHD)

  • * 一つの作業をやっていても他の作業が気になるとそっちを始めてしまい結局全部中途半端になってしまう。
  • * 片づけるのが苦手。
  • * 物音や話し声がするとすぐに集中が切れる、注意がそれる。
  • * ゲームやネットに夢中になるとやめられなくなって気がついたら深夜や朝方になっている。
  • * 「まとめて」「簡潔に」話すのが苦手
  • * メールの文章が長くなる。段落をつけることができない。
  • * 話の要点がわからない、まとめられない。

◆限局性学習症

  • * 計算が苦手で会計のときに戸惑う。
  • * 数字の桁が増えてくるとわからなくなる。
  • * 読むこと、もしくは書くことが苦手。

このような傾向によって「生きづらさ」を感じていませんか?

発達障害の大まかな特徴と分類

広汎性発達障害(PDD) 注意欠陥多動性障害(AD/HD)
特徴 ・社会性の問題
・コミュニケーションの問題
・強いこだわり
・想像力の問題
・感覚のかたより(主に過敏性)
・不注意
・衝動性
・多動(児童で多く,成人では少ない)
発病率 0.6~1.2% 3~10%
周りの人にみられる特徴 ・マイペースで一人で過ごす事を好む
・“間”を読むのが苦手
・比喩表現が苦手
・暗黙の了解がわかりにくい
・記憶力にすぐれている
・純粋
・同時に複数の事柄が進行できない
・一つのことを極める
・忘れ物が多い
・注意散漫なことが多い
・仕事のミスが多い
・計画性に乏しい
・片付けが苦手
・すぐにカッとなる
・思ったことを何でも口にする
・一本気で実直
・頭の回転が速い

自閉スペクトラム症という理解

スペクトラムとは、連続体という意味です。虹色のイメージです。
  • ◆一人の人が複数の発達障害の特性をあわせて持っている場合があります。
  • ◆症状は、はっきりとした境界はなく、重症から軽症までレベルもさまざまで、連続した一つの広い概念です。
    (自閉スペクトラム)。
  • ◆環境や状況によって、特性が出やすかったり、出にくかったり、異なって見えることもあります。
  • ◆年齢とともに診断名が変わることもあります。

身の回りに意外に多いポピュラーな病気です

  • ■一般地域の成人の場合

    自閉スペクトラム症(ASD)の割合
    1.0% : 男性1.8%、女性0.2%

  • ■注意欠如・多動症(ADHD)の割合

    2.5%~3.4% : 男性4.1%、女性2.7%(土田、2012)
    小児期 4.0~12.0%(渡部、2010)

診断はつかないけれど特性は持っている、という人の割合はもっと多いです。

理解するための3つの視点

ここでは、発達障害の中でも自閉スペクトラム症を取り上げます

① 社会性は?

他人と上手く付き合えるかどうか。場の空気や間を文脈に沿って理解し、他人とコミュニケーションが取れるか。

他人との付き合いが苦手な場合が多いです。

例えば・・・、

  • 飲み会やパーティなどで楽しめない、強く緊張する
  • 他人と一緒にいるよりも一人の時間が好き
  • 他人との雑談が苦痛、社交的な会話が苦手で、何を話して良いかと悩む
  • 新しい友達を作ることが難しい
  • 逆に他人との接触を求めて、積極的で距離が近過ぎる場合もある

② コミュニケーションは?

言葉や表情、身振りを使って他人と意思疎通が取れるか。

他人との会話が苦手で、話の進め方がわからない場合が多いです。

例えば・・・、

  • 話をするタイミングがわからない、唐突に話をし始める
  • 他人と話をしているとき、意識していないで他人を怒らせてしまう
  • 冗談を言われても何が面白いのかよくわからない、冗談が通じない
  • 相手の話の言外の意味を理解することが難しい
  • しゃべり方が独とく、いつも標準語や丁寧語で話をする
  • 行間を読めない
  • 相手の気持ちを察したり、想像したりしながら話を進めない

③ 想像力のズレや強いこだわりは?

状況に応じて他人の考えや気持ちを推測することにズレが生じやすいか。
その結果、柔軟な行動が取れず、ものごとに必要以上にこだわる傾向がないか。

想像して行動することが苦手です。臨機応変に対応することが難しく、気持ちの切り替えがうまくいきません。

例えば・・・、

  • 初めてのことや新しいこと、急な予定の変更にすぐ対応できない。
  • 興味があることには没頭し、声をかけても気が付かない。逆に興味のないことは極端に蔑ろにしてしまう。
  • 習慣や規則など、決まったものが自分の中にあり、それを頑なに守る。
  • 全体よりも細かいところに気が付きやすい。
  • 特に意味のない情報(車のナンバー、時刻表の数字など)に注目する、順番や日付などにこだわる
  • 同時に2つ以上のことができない
  • 一旦何かを中断されると、すぐにそれまでやっていたことに戻ることが難しい

<補足>以下は、ADHDの特性です

■不注意

  • 詰めが甘い、ケアレスミスが多い
  • 約束やしなければならない用事を忘れやすい
  • 忘れ物が極端に多い
  • 話を聞いていないように見られる

■衝動性

  • イライラしやすい
  • 自分の言いたいことを一方的に話したり、他人の話の途中で口を出したりしがち
  • 思いつきの勢いでものごとを進めやすく、計画を立てて着実に進めることは苦手。
  • 飽きっぽく見られることが多い

発達障害の対応や治療

ここからは,発達障害全般について取り上げます

発達障害の脳機能について

発達障害の発見に至るまで

学生時代は、

  • 成績優秀であれば、大きな問題となる可能性は低いです。
  • 人付き合いが苦手であれば、趣味が合う友人と付き合ったり、一人で静かに過ごすこともできます。

しかし、社会人になると、

  • 仕事は曖昧で複雑なものが多くなります。
  • 他の人とのやり取りが増え、表情から相手の意をくみ取ったり、社交辞令をしたり、言葉の裏を読んだりすることも必要となります。
  • 高度なコミュニケーション能力や社会性を求められるようになります。
患者さんが受診に至るきっかけは様々です

代表的な発達障害の二次障害

周囲との関わりの中で、現れる問題

  • 抑うつの状態
  • 不適応の状態
  • 心身症の症状
  • 対人恐怖や対人緊張の高まり
  • 自己評価の低下
  • ...など

発達障害とよく似ているその他の病気

特性のいくつかがよく似ていて、区別が難しかったり、発達障害の二次的障害の場合もあります

①不安症

日常生活の様々な不安を抱えているなどが似ています。
例えば、将来に関する不安、周囲との関係や想定外のことが起きた場合の不安、仕事場で周りの人からどう思われているだろうと考えたり、電車の中で何か自分について言われているのではないかと考えるなど

②双極性障害

うつ状態に加え、躁状態が起こる場合があります。躁とうつ を繰り返すことで人間関係や社会的信用、仕事や家庭といった人生の基盤が大きく損なわれます。
治療法や対処法が比較的整っている病気です。薬でコントロールしながら生活を送ることが可能です。

③うつ病

自分の興味のあること以外は楽しめない、なかなかやる気が出ない、表情が乏しい、他人との交わりがないあるいは孤立して過ごすなどが似ています。
周囲や自分でもうつ病だと思えたり、うつと似たような症状や状態が多く出ます。

④パーソナリティ障害

他人と視点や感じ方が違い、自分目線になりやすい、衝動的になるなどが似ています。
小さい頃にいじめを受けたり、大人になってからも人間関係でうまくいかず、社会や他人を恨んだり、適応し難い考えに偏ることがあります。

発達障害の治療

発達障害の特性は、
その人が生まれもった「ものの感じ方・考え方・行動の仕方」などと深く結びついています。

治療とは、
それを根本的に変えることではなく、生活上のうまくいかないところを減らし、より良い生活が送れるよう、方策を見つけたり、工夫できることを目指します。

安定した居場所や役割を見つけることが大切です。 そのためには、なぜうまくいかないかを理解し、どうすれば良くなるか、様々なアプローチで探ることです。

適切なサポートと治療が必要です

的確な診断

  • 情報収集などに時間がかかることもあります。

薬物療法

  • 自分に合う薬が見つかるまでに時間がかかります。
  • 合併症状の対症療法も必要です。

対処法を身につける

  • カウンセリング、スキル・トレーニングなどがあります。
  • 集団や個人でも役に立ちます。

環境調整

  • 周囲にサポートを求めることも必要です。
  • 様々な支援機関を活用することができます。

主な発達障害の治療薬

抗うつ薬

  • 主に神経間のセロトニンなどのモノアミンの濃度を上げます。
  • 抗うつ作用(落ち込みを和らげる)、抗不安作用(不安を和らげる)、こだわりや強迫症状を改善するなどの効果が期待できます。
  • SSRI(ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)、SNRI(サインバルタ、トレドミン、イフェクサー)、NaSSA(リフレックス)など

抗精神病薬

  • 主にドーパミン受容体をブロックし、ドーパミンの作用を弱めます。
  • 興奮・易怒性などの改善にも効果が期待できます。
  • SDA(リスパダール、ロナセン、ルーラン)、MARTA(ジプレキサ、セロクエル)、DSS(エビリファイ)など

気分安定薬

  • 主に双極性障害(躁うつ病)の治療に用いられます。
  • 躁状態(興奮、気分高揚、易怒性)などを改善したり、気分の波を抑える効果が期待できます。感覚過敏に対して用いられることもあります。
  • 気分安定薬(リーマス、デパケン、ラミクタール、テグレトール)など
  • ADHDの代表的な治療薬は、『ストラテラ(アトモキセチン塩酸塩)』『コンサータ(メチルフェニデート塩酸塩)』です。
  • ADHDは、放出されたドーパミン等が過剰に「再取り込み」をされることで、神経伝達に支障が出ていると考えられています。

ストラテラ(非中枢神経刺激薬)

  • 脳の神経には直接作用せず、ノルアドレナリン伝達物質の再取込み口(トランスポーター)の働きを邪魔します。その結果、ドーパミンの量を増やすことができます。
  • 一般薬扱いで、どの医師でも処方ができます。

コンサータ(中枢神経刺激薬)

  • 脳の神経に直接作用し、神経細胞にあるトランスポーターの働きを抑え、ドーパミンなどの再取り込みを直接防ぎます。
  • 日本では、認定を受けた医師しか処方ができない薬です。

服薬の注意点

  • 薬には、即効性があるものや、服薬を開始した2週間後くらいから徐々に効果が出て、8週間くらいで安定した効果が得られるものもあります。
  • ご自分の判断で、服薬をやめたり、量を調整したりしないで下さい。
  • 他の診療科、病院を受診するときは、お薬を服用中であることを必ず伝えて下さい。
  • 服薬中の車の運転、飲酒は止めて下さい。
  • 女性の場合、服薬中の妊娠・授乳は避けることが望ましいです。あらかじめ医師に相談して下さい。
  • 普段とは違う様子がみられたら、医師に必ず相談して下さい。
  • 紙に書いて伝えることも有効です。

対応策のヒント

性格や特性は人それぞれ

十人十色

自分の特性を理解し、周囲と話し合いを繰り返していくことは、より良い人間関係を築いていくために大切なことです。
自分の良いところや得意なところをいかしていける対応の仕方を工夫していきましょう。

ヒント① 見通しの立つ環境に

『時間と手順の見通し』

  • 想定外のことや慣れない状況が苦手なケースがあります。
  • できる限り、予定や手順に見通しをつけると安心です。落ち着いて仕事ができる場合があります。
  • 日課や流れは、目で見てわかるように、例えば、絵や写真カードで示したり、文字にしたりすることも良いです。
  • 見通しがつかない部分は、「ここは未確定」として理解しておきましょう。
  • 特に活動の「終わり」を明確にしておくと安心することがあります。例えば、「○時まで」「終わりはここまで」のようにしてから始めると良いです。

ヒント② 場所と意味を一致

『簡略化』

  • その場に行けば、活動の内容が分かるようにすると良い場合があります。
  • 例えば、ベットの上は「寝る」場所、この部屋は「食事をする」などのように、場所と活動をできるだけ一対一にしておくと安心です。
  • 場所、時間、やることなどは、区切る、小分けにする、分割することを意識しましょう。気持ちの切り替えにもなります。
  • 職場は責任と権限が不明確で、混乱しやすいものです。指示系統をはっきりと簡略化することでストレスを下げることができます。

ヒント③ 時間を区切る

『短時間労働』

  • 手を抜いたり、融通を利かせて作業をおこなうことが苦手なことが多いです。完璧に取り組みすぎて、かえって疲れてしまうことがあります。
  • 例えば、短めに働くように休憩を小まめにとったり、時間を決めて行うことを意識することで、安定して長く取り組めるようになる場合があります。

ヒント④ こだわりを緩めましょう

『こだわりにこだわり過ぎない』

  • 自分独自のルール、信念を貫こうとし過ぎる場合があります。ルールに縛られることで、気持ちがイライラしたり、落ち込んだり、孤立してしまうこともあります。
  • こだわる良さもありますが、時にはずれたり、乱れたりするものです。ものごとがルール通りに運べないことも理解しておくことが大切です。

ヒント⑤ 感じ方を和らげましょう

『感覚過敏への対策』

  • 五感が鋭敏すぎる場合があります。生活場面は、何かと刺激が多くてストレスになりやすいものです。
  • 例えば、ざわざわしたところで不安になったり、相手の話を聞き取れない、パソコンの画面に疲れやすいです。
  • 相手の声以外の周囲の雑音も耳で拾ってしまう傾向がある場合は、イヤホンで弱い音楽を聞いたり、耳栓などを利用する方法もあります。
  • パソコンや蛍光灯の光が苦手な場合は、専用眼鏡やサングラスを利用すると落ち着くこともあります。
  • 完全に避けることはできないため、徐々に慣れていくようにすることも大切です。

周囲の人と連携体制を築いていきましょう。
ありのままの等身大の自分をみつめて、「今できていること」を評価し、良い面を広げていくようにしましょう。

<参考文献>
・備瀬哲弘 大人の発達障害 マキノ出版、2010
・平岡禎之 うちの火星人5人全員発達障がいの家族を守るための“取扱説明書” 光文社、2014