対人恐怖症



自律神経の不安定さ、過敏さからさまざまな症状があらわれます

 対人恐怖症の人は、とくに「人前で失敗するのではないか」「恥をかくのではないか」「他人からバカにされたり、変な人と思われたらどうしよう」という心配を抱えています。それによって体には、「手足が震える」「息が苦しい」「動悸がする」「大量の汗をかく」などの症状があらわれます。
 これらはみな、自律神経のうち活動時に優位になる「交感神経」が働くことで起こるもの.、恐れを感じて「逃げるか闘うか」というときに起こる反応でもあります。対人恐怖症の人には、自律神経が不安定で過敏な人が多く、こうした症状が出やすい、ということがあります。

神経質で怖がりなどの性格や、育った環境が関係することも

 脳のメカニズム的には、不安にかかわるドーパミンやセロトニンという脳内物質が関係しているとされますが、はっきりとはわかっていません。ただ、赤ちゃんのころから人見知りしやすかった、幼いころ母親と離れる場面でぐずるなど、分離不安が強かった、という体験を持つ人が多くみられます。また神経質で小さなことにこだわったり、潔癖な性格の人、恐怖心を持ちやすい怖がりの人なども、なりやすいといえます。
 それに加え、親が厳しくしかる雰囲気の中で育つとか、幼稚園で友達が先生にしかられるのを見ていたなど、環境の影響もあります。学校で黒板に書くように言われ、手が震えて書けなくなったとか、授業中、突然当てられてあがってしまい、発言できなくなったなど、子どものころの体験が関係することもあります。
 対人恐怖症には、スピーチ時や電話をとる場面など、特定のシーンだけで緊張する「限局性」のものと、さまざまな場面が怖い「全般型(非限局型)」があります。全般型の人の場合は、親も不安や恐怖が強いなど、遺伝的な要素も強いようです。

社会に出て人との接触が多くなると症状が出やすくなります

 なかには中学・高校時代から悩む人もいますが、多くの場合、症状が出てつらくなるのは、社会に出て人との接触が多くなる20〜30代。この年代では、就職して人と接する機会が増えたり、家庭の主婦では子どもが生まれ、母親どうしのおつきあいが生じる時期。それにともなって症状があらわれやすいのです。
 対人恐怖が高じると、自分の不安や緊張を他人に気づかれまいとして、人と会う状況を避けがちになり、職場や学校などの場面で人と上手に接することがむずかしくなります。そのため、社会生活に支障が出ることに。人の顔色を気にして自分を抑え、落ち込んでうつ状態に陥ることもまれではありません。対人恐怖症は、適切な治療を受けることで回復しやすい病気。心配な場合は早めに受診しましょう。


人とどう接していいかわからない人の社交術

「ソーシャルスキル・トレーニング」

ソーシャルスキル(社交術)とは、人と接する方法のこと。適切なソーシャルスキルを学んだり、身につけた方法を改善することで、対人場面での緊張感がやわらぎ、自信が生まれます。それによって人と密接な関係を結べ、おつきあいが楽になるのです。
たとえば………

@ イメージトレーニング
 「友人を持つことはすばらしいことだ」「おしゃべりは楽しい」と言い聞かせ、自分が楽しく人と話している光景を思い浮かべます。これを続けるうちに、交際がおっくうでなくなります。

A ボディランゲージの練習
 リラックスした姿勢ではほほえみ、友好的な雰囲気をつくります。体と顔をまっすぐ相手に向ける。相手が話すときは相手の顔を見、少し身を乗り出してうなづきながら聞く。握手したり、相手の名前を呼んで親しみを表す、などがあります。