対人恐怖症



鏡に向かって表情の練習を

毎日鏡に向かって自分の表情を見て、百面相をしてみましょう。緊張すると、知らず知らずに表情はこわばっています。それで相手も身がまえてしまい、互いに緊張が高まって悪循環に陥ってしまうのです。ニッコリ笑える顔を、鏡を見て毎日練習しましょう。トイレで座ったときに顔が映る場所に鏡を置いたり、洗面所やオフィスの鏡を利用してもOK。

 

まず自分からあいさつを

職場に行ったり、人と出会ったりしたら、まず大きな声で自分からあいさつをしましょう。そうすると相手の気持ちがやわらいで、雰囲気がふっとよくなります。自分からリラックスした印象や雰囲気をつくり出すことができます。

 

リラックスして腹式呼吸

緊張して不安なときには、意識的に体にギュッとカを入れ、フッとカを抜いて脱力感を味わいましょう。力を抜きにくいときは、手、肩など部分に分けて少しずつ脱力させるのも効果的。その後ゆっくりと腹式呼吸を。吐く息を長くするのがポイントです。

 

緊張をやわらげるツボを刺激

緊張する場面では、胸のつかえや不安を鎮める「内関」のツボを刺激するのもおすすめ。手首の内側のシワからひじ側に指3本分離れたところの真ん中に位置するポイントを、反対の親指で押します。まず、気持ちを整える「合谷」(手の甲側の親指と人さし指の間の指のまたで、押して痛むポイント)のツボを押してから行うと、より効果的。

 

アロマテラビーの香りで安心

アロマテラピーで使われる精油の香りには、気持ちを穏やかにしたり、緊張をやわらげる働きがあるとされています。とくにローズの香りには、抗不安作用があることが臨床的に確かめられています、不安なとき、ティッシュに1滴たらして香りをかいだり、お部屋に香りを漂わせて。鎮静作用のあるラベンダーもおすすめ。

 


・・・ 対人恐怖症体験談 ・・・

お茶を出すとき手が震える
 「振戦恐怖」(Aさん・35歳・主婦)
 専業主婦のAさんは、子どもが小学校に入り、PTAの役員を任されました。あるときPTA会長や校長先生などが並ぶ中で、お茶を出すことになりました。緊張してお茶をいれ、いざ出そうとしたとき、手が震えているのを意識したのです。やっとの思いで全員にお茶を出しましたが、それから家での接客時にも、お茶を出す手が震えて肩がしびれ、足もガクガクするようになりました。そのうち友人と行った喫茶店でも、カップを持つ手が震えるのに気づき、友人の誘いも断るようになってしまったのです。友人のすすめでメンタルクリニックに通うようになり、現在は回復しています。

職場で電話が怖くてとれない
 「電話恐怖」(Bさん・24歳。公務員)
 Bさんは社会人2年目に、上司から「新人の面倒をみるように」と言われて以来、おかしくなりました。机の電話が鳴ると、まわりの人が自分に注目しているように思え、「自分の応対は大丈夫か」「おかしなことを言っていないか」と心配でいても立ってもいられません。緊張してのどが詰まり、ひと言ずつ区切ってひと呼吸しないと、言葉が出なくなってしまいました。小さいころ、オバケが怖くて電灯をつけたまま寝るような怖がりのところがありましたが、その後は何事もなく過ごしていたのです。すっかり自信を失い、心療内科を受診。話を聞いてもらい、抗不安薬をのみはじめたところ、気分が落ち着き、電話に対する緊張感も取れて、元気に仕事を続けています。

人前で話すのがプレッシャー
 「スピーチ恐怖」(Cさん・32歳・高校教師)
 ある教員の研修会で突然指名され、自分の経験を話すことになったCさん。生徒の前で話すことには慣れていましたが、大人たちの前ですっかり動転し、何を話したのかわからなくなってしまったのです。その後、研究発表など人前で話す機会が続き、そのたびに念入りに原稿を用意して臨みますが、その場に出ると頭が真っ白になってしまいます。先日、3カ月後の研究会で発表者になることが決まり、「またあがってしまったらどうしよう」というプレッシャーから、深夜まで眠れない日が続きました。思いあまって神経科クリニックを受診。抗不安薬と発表の前にのむβ遮断薬(参照ページ)のおかげで楽になり、無事に発表もすませました。

周囲の人が注目し、うわさしている
 「視線恐怖」(Dさん・27歳・派遣社員)
 派遣先の上司にミスを指摘されたDさんは、以後、周囲の人が「あの人一人で浮いてるね」「一人だけ暗いね」とうわさしているような気がしてきました。注目されていると思うと緊張して、仕事に集中できません。そのうち電車の中でも、自分の行動を観察されている気がします。母親に相談すると「神経質すぎる」「気にすることない」と言われ、そうかなと思うものの、翌日出勧するとまた同じ気持ちになります。現在は病院で薬物療法とカウンセリングを受け、症状は半分以下に落ち着いています。

体験談は、取材をもとに構成したモデルケースです。